ないものを具現化する(永遠なるものたち感想)

姫乃たまさんのエッセイ「永遠なるものたち」を読んだ。

初めて姫乃たまさんの事を知ったのは4年前(もう4年も前になるのか・・・笑)に行われた週刊SPA!という雑誌のイベント「SPAフェス31」のサウナ好きが集まるトークイベントだった。

その時のお話が聞いていて楽しく、イベントが終わった後にすぐTwitterをフォローした。それからnoteやラジオトーク等を始められていて、ちょこちょこと読んだり聞いたりしていて、「ああ、この方の視点や感性ってすごい素敵だなあ」って思ってた。

そんな姫乃たまさんが初の本格エッセイを出すということでとても楽しみだった。そして出版されてすぐに購入した。

秋葉原で行われるトーク&サイン会でサインをいただいてから読もうと思いしばらく暖めていた。そうして無事にトーク&サイン会に参加して、一気に読んだ。

その感想を少し書いておきたいと思う。


永遠なるものたちって何だろう?

タイトルの「永遠なるものたち」って何だろうって思った。
それは最初の「はじめに」で書かれていた。
それは欠けてしまったものや無いもの、無くなってしまったもの、目には見えないもの等を「永遠なるものたち」と名付けたとのこと。

最初にこれがとても衝撃的だった。
無いものや欠けているもの等は確かにそれは「永遠なるもの」だと思った。
それは変わるようで変わらないもの。自分の感じ方や考え方が変わることがあったとしてもその「無いもの」等は変わることがない。
だから「永遠なるもの」というのは凄くしっくり来た。
そんな姫乃さんの「永遠なるものたち」に関するエッセイはどこかぽっかり空いた穴を埋めるようなエピソードが多かった。

【運命】

その中で特に「007 運命」が凄く好きな話だった。
その話は文字通り「運命」についての話で、姫乃さんが出会った運命と言えるであろう人との濃い4日間の話。(詳しくはぜひ本を買って読んで欲しい)

私にも今思えば、それは運命だったんじゃないかなっていう人との出会いが確かにあった。私の場合はそれが異性であったけど、そこに恋愛感情はなく、愛情というのもしっくりこない。ただ、ただ本当に濃い時間を過ごしたなという人がいた。

その人とは半年くらい一緒に飲み、遊び、ゲラゲラ笑ったりしていたけどぱったり連絡を取らなくなった。連絡を取ろうとも思っていない。
そんな人がいたことすら、このエッセイを読むまで忘れていた。

忘れていたということはきっと自分から欠けてしまっていたんだと思う。欠けてしまった理由はわからない。あの続きをまた体験したいと思っても、きっともう自分が変わってしまっているから同じ体験にはならないと思う。

楽しさ、という点ではきっとまた楽しめると思うけどあの濃さとは違うと思う。自分にとってのあの半年は欠けてしまっていたけれども、思い出して埋まると必要な要素だったなと思えるようになった。

それはまさしくこの先変わることが無い「永遠なるもの」だよなあと、エピソードを読みながら、自分の思い出と照らし合わせて腑に落ちたりしていた。

【あこがれの場所、行けない場所】

それともう一つ。
「003 私の東京」がとてもよかった。

私は東京生まれではなく、社会人になってから東京に住んでいるので『東京』という場所についてそんなに詳しくはない。

大人は「行きたい」と思ったり「行こう」と思ったりしたらどこへでも行くことができるはず。

でも「子供の頃にあこがれた東京」はもうそこにはない。
そんなエピソードですが、これは誰しもが感じたことがあると思う。

子供の頃に限らず、あこがれていた場所等にいざ行ってみても「そこはもうあこがれていた場所ではない」と感じることがたまにある。
それはきっと「行ける場所」になった時点で「憧れ」とはまた違うものに変わってしまったからだと思う。

行けなかった、行けない場所だからことそこは「あこがれた場所」だったんだろう。

じゃああの「あこがれていた場所」は一体どこに消えてしまったんだろう。
そして今もそれはあるんだろうか、もしくはもう存在しないんだろうか。
そんな風に考えることもある。

それはやっぱりもう「無いもの」なんだろうなって思うことができた。
これはきっと「永遠なるものたち」を読まなかったら言語化できなかったと思う。

ただそれは寂しいことじゃなくって、きっとまた「あこがれの場所」は出てくると思う。そうして行けるようになるとまた「無いものになる」。
そうすると永遠なるもののかけらが一つ増える。

そうやって人生は常に永遠なるもののかけらを積み上げていくことなんだと。それはきっと悲しいと感じるかもしれない。でも、悲しいだけじゃないんだなって思わせてもらえた。

終わりに

「無いもの」について書くということはとても難しく、人に分かってもらおうとすることも難しい。でもこの「永遠なるものたち」を読むと、自分の中で形になっていなかったものが形になった気がする。

この1冊に出会えてよかった。
また、読み直そう。

がわ

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