せっけんを巡る冒険④

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バタバタと買い物をして急いで家に戻ると、すでに有梨香は帰ってきていたようで優雅に紅茶を飲んでいた。

「あら、彩香。今日は遅かったわね」
「まあね。隠すことでもないから言うけど、昨日有梨香が言ってた喫茶店まで行ってきたのよ」
「・・・そう」
「あ、美伽ちゃんにもあったわよ。あの子、すごいいい子ね。みーちゃんによろしく言っておいてだって」
「・・・あの子は何度言ってもみーちゃん呼びを止めないのよね」

有梨香は呆れながらもどこか少しうれしそうな顔をしていた。
そんな顔をする有梨香をあまり見たことがなかったので彩香は少し驚いた。

「それで?何か得られることはあったの?石鹸について」
「あーそれね、有梨香にちょっと聞きたいことがあるんだけど先にご飯食べてもいい?慌てて買い物して帰ってきたからお腹空いちゃって」
「ええ、どうぞ。今日は私が簡単なスープを作ったから余っているの食べていいわよ」
「え!有梨香ありがとう!」

彩香は有梨香が作ったスープを暖めなおし、冷凍うどんを解答し、めんつゆでさっと煮込み卵を一つ落とした。

「うん、簡易煮込みうどん。美味しそう」

テーブルまで戻して、パクパクと食べ進める。
その間、有梨香はゆっくりと紅茶を飲んでいた。

一通り食べ終え、さっさと洗い物を終わらた。

「有梨香~話す前に紅茶入れるけど有梨香もまた飲む?」
「話は長くなりそう?」
「うーんまあ簡単に終わる内容ではないわね」
「そう。私のぶんもお願いするわ」
「おっけー」

彩香は手際よく紅茶を入れた。
有梨香との二人暮らしを始めてからすっかり紅茶を入れるのも上手くなった。さっと二人分の紅茶を用意して、テーブルに持っていた。

「さて、どこから話そうかしら」
「・・・私は彩香みたいに石鹸に興味はないから別にどこからでもいいわよ」
「そういわないでよ。なんだかちょっと面白そうな話なんだから」
「それは彩香の基準で、面白いでしょ」
「うーん、そういわれればそうなんだけどちょっとミステリー感もあるから。それに有梨香にも意見を求めたいのよ」
「わかったわ。紅茶も用意してもらったし、長くなってもいいわよ」
「おっけ。じゃあ順番に話していくわね」

彩香は喫茶店で聞いてきた話を有梨香に順番に話した。
途中に質問を挟むことをなく有梨香は話を聞いている。
有梨香は反応がそんなに多くないため、説明していて本当に伝わっているのか不安になることがある。彩香は今まさに不安になっていたが、もうどうしようもないので最後まで話し切ることにした。

15分程度かけてゆっくり話をした。

「・・・っていうことでこの荒波市で作られてるらしいんだけど、そんなの全く思い当たらないのよね」
「彩香が私にも意見を求めた理由が分かったわ」
「さっすが有梨香。察しが良いわね」
「少なくとも今の時点で言えることはそんな石鹸を作っているであろう施設は荒波市にはないわね。ちゃんと認可されている、っていう観点から見てね」

予想していた通り、荒波市にはそんな施設がないという回答を得て彩香は改めて自分の考えを伝えてみることにした。

「ねえ有梨香。私の考えをちょっと話してもいい?」
「ええ、せっかくだから聞きましょう」
「有梨香の意見を聞く前にね、私も多分荒波市に石鹸を作っているような工場はないなって思ったのよ。有梨香程じゃないにしても、私もそれなりに荒波市について詳しいと思っているからね」
「そうね。彩香も十分この地域について詳しいと思うわよ」
「でしょ。まあ有梨香みたいなそんな詳細にはわからないけどね。だから石鹸工場なんてね、絶対にないのよ。それでね、世界石鹸の社員がいるって話がさっきあったでしょ」
「あったわね」
「もしかしたら、その人が個人で作っているんじゃないかって思っているの。個人だとそんなに数は作れないだろうし、情報だけ出回っていて現物が全く出てこないってそれくらいしか考えられないと思うのよね」

彩香の意見を一通り聞いて、有梨香は顎元に手を当てて少し思案した。
この仕草をするときの有梨香は少し回答まで時間がかかる。

「・・・・」
「ま、そんな単純な話じゃないかもしれないけどね」
「・・・そうね。現状だけを鑑みると彩香の意見はあながち間違ってはいないと思うわ。ただ、個人でそんな高クオリティの石鹸を作り出せるものなのかしら」
「石鹸自体はそんなに作ることは難しくないのよ。材料さえあれば素人でも簡単に作れるわ。ただ、世界石鹸っていう聞いたこともない石鹸だから材料とか作り方が分からないから一人で作れるものなのかは疑問ね」
「そうなのね。どちらにしても少し探りを入れて欲しい、ということでいいかしら?」
「話が早くて助かるわ。特に問題は起きていないにしても、把握してない商品ってちょっとグレーでしょ。私が世界石鹸が気になるっていうのもあるけどそれ以上に荒波市的にあまりよくない気がして」
「ええ。近いうちに探りを入れてみるわ。もっとも、あまり期待しないで欲しいけれども」
「わかってるわよ」

二人の話はそれで終わり、お互いに紅茶を飲み切って有梨香はすぐに部屋に戻ろうとした。

「あ、有梨香。先にお風呂入っていい?」
「私はもう入ったから」
「あら、今日は本当に先に動いてるわね」
「私にもそういう日くらいあるわ」

有梨香はそういうと部屋に戻った。

「さーて今日はなんだか疲れたから私もお風呂入ってもう寝よう」

彩香は全身を伸ばしながら風呂場へ向かった。

続く

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