記事一覧
読書感想文 探偵は絵にならない (森晶磨 著)
殺人はない。犯罪者を追うわけでも、追われるわけでもない。
この本は、スランプのただ中にある画家の青年が、ほんの少しの謎から始まる感傷的な4つの短編を収録している。探偵はいない。きっと、絵にならないから。
濱松蒼は浜松の高校を卒業する直前に、彼女・フオンを連れて画家になるために東京に出る。フオンはダンサーを目指す。蒼は画壇にデビューして注目される新人になるものの、すぐに落ちぶれる。フオンは少し
読書感想文 ハリー・クバート事件 (ジョエル・ディケール 著)
これはミステリー小説なのだろうか。
たしかに殺人事件が発生し、それにまつわる多くの謎が存在する。マーカス・ゴールドマンは、師匠であるハリー・クバートに殺人の容疑がかかっていると知り、無実を信じて調査を開始する。
でも、この本の中心は謎解きではない。ミステリーファンからすれば、やや掟破りな部分もある。やはり、この本の中心は謎解きではない。
ハリー・クバートは「悪の起源」を代表作とする一流作家
読書感想文 歓喜の島 (ドン・ウィンズロウ 著)
ウォルター・ウィザーズはCIAを辞めた。辞めざるをえなかった。なぜなら、スウェーデンで組織していた諜報網が壊滅したから。なぜなら、情報源(カモ)の半分がソ連に逮捕されたから。
ウォルター・ウィザーズはニューヨークとアン・ブランチャードを愛していた。ニューヨークはウォルターにとって最高の場所だし、アンはウォルターにとって最高の女性だ。CIAを辞めた後、ウォルターはニューヨークに戻り、私立探偵社に