民間から公務員に転職する人が知っておくべきこととは?相乗効果を生むために経験者たちは語る
2020年末に公開し、1年以上継続してお読みいただいているnote記事があり、まずこちらをご紹介します。
みなさん、こんにちは。「公務員のための新しい広報の教科書」「中小企業・個人事業主のための新しい広報の教科書」著者の西垣内渉です。こちらの記事は、複雑化高度化する住民ニーズに向き合うためにいわゆるプロパー(生え抜き)の公務員が公務員同士でサークルや勉強会を組織して良い事例の横展開を図っているメリットと、公務員内で閉じていることの問題点に言及したものです。
こちらでも触れているように、これからはますます民間企業の専門性や実行力・突破力とルールメーカーであり地域のマネジメントを行っている行政がレベルの高い連携を進めていく必要があると思います。そのひとつとして、個人レベルでは"人材の官民連携"たる民間から公務員への転職という方法があります。
これにはさまざまな形が模索されており、デジタル庁が積極的に初期メンバーを民間から募集したことは記憶に新しいですが、それ以外にも東京都は「デジタルシフト推進担当課長」を公募したり、
茨城県では校長を民間から募集しているなど、
とにかくいろいろな事例が出てきています。
私も民間公募により2017年から3年間、大阪府四條畷市役所でマーケティング監という部長級のポストをいただき、広報・シティプロモーション・官民連携=公民連携を中心に市政の推進を手伝わせていただきました。
その前は在阪テレビ局という企業にいて、身近にも公務員が少なかったため大変不勉強なまま入庁・転職したことは、成果も生みつつ壁にぶち当たる要因だったように思います。民間人材の給与も住民からの税金によってまかなわれるわけですから、これから民間企業より公務員になっていく人がスムースに転職して大活躍してくれることがその地域の、ひいては国全体のメリットになるわけです。そうなれるよう、私や私と同じように民→官と転職を遂げた人々の声を共有するので、参考にしてもらえたらと思います。
私は数少ない例外で恵まれていたかもしれない
誰もが転職してすぐは、仕事や職場を知るインプットに取り組む必要があります。私も入庁前に市の総合計画・総合戦略をはじめ、あらゆる分野の計画資料等を送ってもらい、無知ながらも読み込んだ記憶があります。もちろん、職場自体だけでなく職場が置かれている環境や業界を学ぶ必要もあり、その際にはインターネットが役立つものです。
そのインプット作業、そして自らの知見を生かした業務への取り組みには、周囲の理解があるかないかがその後に大きく影響するように思います。私の場合は、その時に近くにいた同じ部長級の同僚が自分の存在を面白がってくれて、一緒に何かをしなくてはならないという意思を共有して仕事を進めることができたので、入庁後4ヶ月で市公式LINEアカウントを立ち上げ、そこに全国初のサービスを付加したためテレビ等各種メディアに取り上げてもらうことができました。
こちらのブログに書いた通り、LINEで道路の不具合を知らせることができるようにするためには、道路の管理者たる建設課の理解を得なくてはなりません。建設課の皆さんへも当初はこちらの説明が足りずすんなり納得したわけではなかったと記憶していますが、彼らの危惧や心配事を減らすコミュニケーションに努め、結果的に協働できたように思います。
このように、私は3年間でさまざまな部課と連携して情報発信に官民連携にと取り組んでいきましたが、同じように民間から公務員になった人の話を聞くと、そううまくいっていないということもあるようです。その問題点を以下に具体的に記します。
入庁職員と既存職員の相互理解が早期にできるか
せっかく民間企業で専門的な知見を蓄え、それを公務員として住民サービスのために発揮しようとしても活用されないというのがいちばんの損害です。なぜそんな事例が起きてくるのか、いくつかの要因を挙げ、その解決策を提言してみたいと思います。
既存職員が「なぜこの人が加入したか」を理解していない
市長直轄で新たなポストが作られるのも、既存の部課に民間企業出身者が加わるのも、根源的な理由は「何か課題解決するのにその人の力が必要」だということは明らかです。しかし、そのポストを作った組織のトップやマンパワーを必要としたマネージャー級の職員以外は、意外にそのことも理解できず、どう受け入れてよいかわからなくなっている事例があるそうです。なぜ入ってきたか理解できていない職員にとっては、新たに入ってきた人とどう振る舞えば良いかもわからず、コミュニケーションが疎遠になり、力を発揮してもらう機会が遠のいてしまうということになります。
この課題を解決するには、迎える側も入庁する側もお互いに努力する必要があるように思います。既存職員(特に管理職)は、新入職員の職歴などを課員に共有してもう一段具体的に新しい人を活かすシミュレーションをする必要があります。特に、入庁後にレクチャーや研修をする職員は上司に採用の意図などをしっかり確認しておくと良いでしょう。
新しい環境に飛び込む立場の人にとっては、関わる全員が自分の役割を理解しているわけではないという前提に立ち、自分には何ができるかを日々のコミュニケーションを通じてプレゼンテーションしていくことで、強みを知ってもらい活躍しやすくなると思います。
入庁職員が公務員として働き方・公共のシステムを理解していない
民間企業と公共機関では、様々な点でルールや仕事の進め方が異なります。あくまで一部ですが列挙すると、
1️⃣予算単年度主義
会計年度ごとに予算を編成し、当年度の支出(歳出)は当年度の収入(歳入)で賄うべきであるとする考え方で、前年度の議会(多くは新年度直前の3月)で承認された当初予算をベースに、翌年度からはそれを使いながら住民サービスや政策を進めていくのです。
2️⃣議会制度
地方自治において条例の制定や改廃、予算の立案などはすべて議決や議会の承認が必要となります。通年議会といって随時開会しやすい制度の自治体もありますが、基本的には年に4回の定例会と各種委員会に向けて議案を構築し、議員からの質問に答弁という形で応える仕事があります。重要な事項はこのプロセスにかける必要があるため、それが行政の仕事のスピードを遅らせているという側面もあります。一方で、議会の承認を得た内容については役所内でも全力で実現に向かって進むので、そのきっかけとして利用する部分もあるのではないかと考えます。
(私見ですが株式会社における株主総会に近いものがあると思っています。一般的な株主総会よりはその取扱範囲も広く権限も大きいと言えますが)
上記のように、民間とは違うシステムやスケジュールの中で、例えば年度途中に加入・入庁しても新たに予算を使うような企画は提案できないなど、思った通りに仕事を進めることができないと感じる場面が出てくるように思います。逆に言えば、その年度で予算がついているのに進捗が鈍い事業について、自らの知見でそれを推進し成功させれば一躍ヒーローになることができるでしょう。
これから入庁する人は圧倒的インプット!迎える人は濃密なコミュニケーション!
まとめるとこういうことになると思います。
つまり、これから転職して公共の仕事をする人は、入ってからでもインプットをとにかく続け、内部の状況と外部環境をしっかり把握することで自分の強みを発揮するタイミングをうかがうことが肝要です。
転職する人を迎える既存職員の皆さんは、新しい戦力を戦力にできるよう、なぜその人が加わるかを上司等に聞き、新しい人を活かすためのコミュニケーションを活発に行うべきです。
今後も、私の民間→公務員→民間というキャリアチェンジの経験がこれから転職する人やそれを迎え入れる人にとってのひとつの参考になるよう、深堀りして共有していきたいと思います。人材の官民連携がより促進されて住民サービスが向上する役所が増えていき、地域が国が活性化していけば幸いです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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