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プロットの立てかた・その4【山奥屋6】

 前回で最小プロットを中プロットに膨らます過程を述べたのだが……重要なことを忘れていた。
 「その1」で書いたままだった「そのために必要なもの(接着剤)」である。
 例から持ってこよう。

例:
[そのために必要なもの(接着剤)]
 悪党、黒幕、魔法の犯罪、魔法の麻薬
 新しい相棒、異世界、国境の街、治安悪い
 捜査班、同僚、上司、裏切り者、情報屋
 新しい相棒が居候する(同居で親しくなる)、主人公の部屋、ペット類
 悪党の組織、悪党も異世界人
 大きな陰謀、魔法的なガジェット

 中プロットを書く際に、これを使うのである。
 すべて使う必要もないし、ここにないことを中プロットに入れてもいいが、最小プロットから膨らますときに、これが役に立つ(忘れてたが、本当に役に立つのだ! 忘れてた……が……)。
 だからなるべくこの「接着剤」はたくさん書いておくといいのだ。

 これが刑事ものでなく恋愛ものなら、たとえば「思わぬ出会い、好きになるきっかけ、夜の公園、パーティ、意外な趣味、恋愛慣れした友人、嫌味な上司、恋敵、夜のコーヒー」など(いま適当に思いついた)になるし、ホラーだったらたとえば「墓場、廃棄された保育所、なぜか作動してるLANカメラ、死んだはずの子供、子守唄、子供を失った母親、夜中の踏切」など(これもいま思いついた)になるだろう。

 しかし……「接着剤」とか「そのために必要なもの」とか、このメモはいまいち名前がピシッとこない。
 自分がプロットを作る時だけに使っていたメモなので、呼び名がないのだ。
 なにかもっといい名前があるといいのだが……。
 「プロットの材料」? 「アイデアメモ」?
 どうもちょっと違う。
 ただのアイデアや好きなものだけではなく「必要なもの」、というのが大事なのだ。プロットを語るときに必要な要素、ネタ、ガジェット。
 その思いつきを書いておくメモ……
 やはり「接着剤」が近い。
 もっと言ってしまうとポリパテが一番近いのだが、モデラーにしか分からないだろうからさておく。

 このポリパテ接着剤メモを助けにして、中プロットを作っていく。
 新しく必要になるものもあるだろう。書いてるうちに、「これは要らないな」と思うものもある。
 それらを取捨選択するのは作者のセンスだ。
 ここで残酷なほどセンスの差が出てしまうこともある。とても苦しく、しんどい作業なので、妥協していい加減にやってしまうこともよくある。
 締め切りが迫っていたり、体調がイマイチだったりして、適当に済ませてしまうこともよくある。
 そうすると、けっきょく後で苦しむことになるのだが。

 ダメなプロットを作ると、ダメな小説をのたのた書くハメになって、士気が落ち、アマチュアだといずれ挫折する。
 プロはそれでも書かねばならないから、いちおう完成はする。だがそんな状態で書いた小説がいい出来なわけもないので、キャリアに大きな傷がつく。

 筆者の経験的に、ダメなプロットで自信作が生まれたことはまずない。
 せいぜい苦しみ抜いて、どうにかギリギリ商品としてアリな内容のもの(お客さんにお金を払ってもらうもの)ができる程度である。それだって「運が良ければ」くらいの確率だ(まあそうした窮地でどうにかしてしまう才能というのもあったりするのだが、それはプロットの話とは関係がない)。

 だからここで頑張るしかない。

 中プロットは全体でペラ一枚くらいの分量になるだろう(だいたい400字×250〜450枚の長編一冊を書くとして)。
 この場合のペラ一枚とは、A4用紙に「普通の大きさの字」でプリントアウトしたくらいの量である。
 もしかしたら、きっちりした定義があるかもしれないが、筆者個人は編集者などとのやり取りで「ペラ一枚」と言ったらこのくらいの量を連想する。

 ちなみに編集者に見せるプロットは、この中プロット、ペラ一枚くらいで良い。ペラ二枚もいってもいいが、二枚目は10行くらいまででやめておいた方がいい。編集者も忙しいから。
(キャラや世界観のメモも2〜3枚。合計で4〜5枚くらいか)

 基本的には、この中プロットさえできれば、執筆に取りかかってもいいとは思う。筆者も時間がない時はそうしている。

 だができれば、この中プロットを元にして、より詳しい「大プロット」を作ると良い。
 もう一回、次回につづく。

(つづく)

 
 


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