見出し画像

ホアキン・フェニックスのジョーカーよりヤバい底辺映画!「屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ」をレビュー

昨年日本でも大きな話題を集めた現代社会に適応できなくなったサイコパスの悲劇を描いた「ジョーカー」に対抗できるドイツ製の映画がとうとう日本にもやってきた!

なんと実在にいた人間をベースにした本作は「ジョーカー」よりもヤバくリアルな底辺人間の狂気と残酷さを描いた、「ジョーカー」以上の怪作になっているのだ。

ドイツ映画といえば20世紀末、超狂った公害まみれのあだ花のような狂った映画を量産し歴史に名を残したことでも有名であることを知っている人もおいのではないだろうか。

「ネクロマンティック」なんかもそうだった、「死の王」なんてのもあった。「新ゾンビ」みたいな意味不明な映画もあった。

そんなドイツ映画も最近ではすっかりおとなしくなってしまい、嘆かわしい限りであったが・・・・。

だが、そんな中本作がやってきたのだ。


うれしいことにドイツ人の血にはあの残酷映画を愛していたDNAが残っていたのだ!!

サイコパスを題材にしたスプラッター映画といえば、殺人のカタルシスを売りにしているが、本作に出てくる殺人鬼フリッツは殺人を楽しんでいるわけではなくまるで衝動を抑えられない病気の発作のように殺人を起こしてしまうという癖がある。

そう、あの殺人鬼映画の傑作「ヘンリー ある連続殺人鬼の記録」にも通じる陰惨な傑作になっているのだ。

しかし、あの映画に出てくるヘンリーがまだアンチヒーロー的なたたずまいが会ったのに対して本作のフリッツは本当に頭が悪くどうしようもなく、自分の衝動を抑えることができないまま死体が増えていくのだ。

そんな彼が死体をどこに隠していたのかというと屋根裏部屋だったそうだ。

いやいや、バレるだろ・・・それは・・・。と思うがなんとドイツの警察は無能揃いなのか。まったく気がつかなかったそうだ。

現実は想像をはるかに超えるというのはまさにこのことだといえるだろう。

さらに本作の最大の特色といえば、なんと出てくる犠牲者がどれも中年すぎたおばあちゃんばかりであり、それも綺麗なおばあちゃんではなくなんともいじけて醜く太って酒におぼれているそんな情けない老婆たちばかりなのだ。

殺す側のフリッツもフリッツで非常に不細工で醜悪ででてくるキャラクター全員が醜悪で見るに耐えられない人間しか出てこないのだ。

おまけにジジイババアしか周囲にいないのでババアに欲情しなければフリッツという男は性欲すらも解消できないほど人生が終わっているのだ。

そんな醜悪なキャラクター同士が殺し合いレイプしたりされたりするのだからもう画面としては汚くてたまったもんではない。

一応作品に花を添える形でドイツ人美少女が出てくるが、それもぶっちゃけ目だった意味はなくストーリーに何の影響も与えることもなく去っていく。

殺人のカタルシスすらなく本作は淡々と殺人鬼の狂った生活を追いかけていく。

ちなみにフリッツが愛用している酒場の登場人物たちもフリッツに負けず劣らずの狂人揃いで元ナチ将校であったが、今は酒場で自分の歪んだ衝動をお満たす相手を探す凶悪なジジイであったり、80歳だというのにまだ性欲に振り着てているジジイなどが登場する。

バーテンダーの主人も中々変人であり、こいつらマジでいそうだな・・と面食らうような奇人変人揃いである。

さらに途中で登場するフリッツの勤務先でなぜか住み込みで働いてる夫婦も夫は無職なのに、会社ビルで妻と生活しているアル中のごく潰しという始末だ。

こんな人間が70年代にはまだドイツでは生きていたのだ、まったく驚きをかくせない。

そこには何の美学も愛情も情緒も哀愁もない、ただただ歪んだ人間の歪んだ欲望がそこにあるだけである。

ホアキン・フェニックスの「ジョーカー」にはある程度あった仁義が本作にはない、むき出しの人類の情念を描いてるまさに必見の作品といっていいだろう。

点数は

75点/100点


映画というのはハリウッド製のわかりやすい娯楽映画ばかりではない、ということを改めて認識させてくれるいい映画だ。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?