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【みんなの就活体験記 ASD・視覚障害の先輩】

新学期が始まりましたね。人によっては、就職活動を意識し始める時期かもしれません。
障害のある学生さんの中には、就活を前に次のような悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

・自分と同じような障害がある先輩の就活体験談がみつからない
・自分が働ける環境があるのかがわからない
・社会人になる準備をするうえで何をしたらよいかわからない

こんな悩みを少しでも解決できるよう、障害がある先輩の就活体験記をお届けしていきます。

今回は、ASDと視覚障害があるゆめさんにお話をお伺いしました。ゆめさんは専門学校を卒業した後、医療系の企業に入社しましたが、とあるトラブルが原因で4日で退社することになりました。現在はオンラインコミュニティを運営しながら、就労移行支援を利用して再就職に向けて動いています。

障害について

かのん:はじめに、ゆめさんの障害について教えてください。

ゆめ:身体では弱視、発達障害はASDがあります。
弱視の方は後天性のもので、最近白杖を持つようになりました。専門学校に入学して数か月の時に、左目に異変が起こりました。網膜剝離が原因だと分かるまで半年かかり、その間に進行してしまいました。就活中はまだ障害として捉えていなくて、配慮を求めたりはしませんでした。
配慮が必要なのは、どちらかというとASDの方ですね。私の場合は、外部の人とのコミュニケーションがうまく取れないことがあります。例えば、私が話しかけられていても、名前を呼ばれない限り、自分が声をかけられていることに気付けなかったり。外の人との関わり、特に初対面のお客さんとの関わりはかなり難しいです。

かのん:ASDの方は、いつ頃発覚したのでしょうか?

ゆめ:自覚は幼稚園の時からありました。他の子と比べて記憶力がずば抜けていて、こんなの誰が覚えてるの、みたいなことまで全部覚えていたんです。あと、集団行動があまりにもできなかった。運動会の行進とかもなかなか周りの子と合いませんでした。得意・不得意の差があまりにも大きいというのもあって、何かおかしいなと思っていました。
小学校から中学校にかけてはずっといじめにあっていて、中学二年生の時に自殺未遂したんです。それがきっかけで、カウンセリングを受けることになりました。そのあと、児童発達を専門にする先生のところにも行くようになって、高校1年生のはじめに診断がつきました。

専門学校生活

かのん:専門学校では何を専門に学んでいましたか。

ゆめ:3年制の専門学校で、診療情報管理士というカルテの管理をする専門職になるための勉強をしていました。
1歳頃からパソコンがずっと好きで、それを活かすことも考えましたが、パソコンだけで生きていくのは難しいと判断しました。医療系にも興味がありましたし、職には困らないだろうと思って医療の道を選びました。中でも診療情報管理士ならパソコンを使いますから、興味があることの掛け合わせですね。

就職活動から社会人生活へ

かのん:就職活動はいつごろ始められましたか?

ゆめ:3年生になってからだったので、卒業学年ですね。3年の8月に、ハローワークに行って相談をし始めました。専門学校経由でも選ぶことはできたんですが、自宅から遠い場所の求人しかなかったので、応募しませんでした。

希望としては、企業から病院に出向する形で働きたいというのがありました。なぜかというと、病院で使う電子カルテって、病院によって型が違うんですよ。標準化されていないのでそれぞれの病院で別のものを使っているんですが、私は色んな電子カルテを触りたかったんです。最終的には通っていた専門学校に先生として戻りたかったので、色んな病院で色んなカルテに触っておきたくて。なので、病院に出向する形の企業を探しました。
それに合うところを自分で何個か絞ってから、ハローワークに行って「どれか求人ありますか」と聞いて出してもらったのが、最初に入社した会社でした。履歴書を送って、面接を2回した後内定を貰いました。
面接対策としては、学校の先生方に面接練習をお願いしていましたね。
他にも何社か候補はありましたが、体力が底をついてしまったので、1社のみで就活を終えました。

ゆりこ:その企業には障害のことを伝えていましたか?

ゆめ:伝えていませんでした。
弱視については、外を歩くのには困りますが、手元用の眼鏡をかければ書類などは十分見えていたので、配慮は要らなかったんです。診療情報管理士っていう仕事の特性上、出歩くことも少ないですし。
発達の面でも、診療情報管理士は患者さんと関わる機会が少ないので、私の苦手な「外部の人との関わり」は発生しません。だから隠しておこうと思いました。

入社直後に退社へ

かのん:入社して4日目で退社したのは、どういった理由があったのでしょうか。

ゆめ:内定を受諾した後、2月頃に会社に諸々の書類を提出しました。給与が入る口座とか、税金、保険証関連の書類です。そのうちの源泉徴収票に障害者控除の項目があったので、「手帳がある」と書いたんです。そしたら、当たり前なんですけど障害を持っているとバレてしまいました。

会社から電話がかかってきて、診療情報管理士では障害者雇用をしていないので、医療事務の職種に変えてほしいと言われたんです。私が長く楽に働き続けられる方が重要だし、配慮をもらえる所の方がいいからと言われて、職種の変更に同意しました。診療情報管理士と医療事務では給与の額面も変わってしまうんですが、そこにも同意しました。

ですが、医療事務という職種になったことによって、逆に配慮が必要な状態になってしまいました。医療事務は患者さんと関わったり、院内を移動することも多い職種なんです。なので、患者さんと関わる業務から外してもらったり、病院内の移動をしなくていいようにしてもらったり。診療情報管理士なら必要なかった配慮が、職種が変わったことによって必要になってしまいました。

問題は入社式の日です。雇用契約書にサインするときに、給与の欄に書いてある金額がおかしいことに気づきました。職種が変わるので額面が下がることは知っていました。ですが、変更後の給与として事前に提示された金額から、更に大幅に下げられていたんです。
でも、私がサインするのを他の新入社員も待っている状態だったので、サインしてしまいました。
翌日ハローワークにそのことを相談したら「こういうふうに聞いてみて」とアドバイスを貰えたので、会社に電話をかけてどういうことか聞きました。そうしたら「試用期間だからこの金額なんだ」と。ですが、ハローワークの求人表には、医療事務でも「試用期間の給与は変わらない」と書いてあったんですよ。どこを信用したらいいのか分からなくなって、4日目に退社しました。

退社後の挑戦

かのん:現在はオンラインコミュニティの運営に挑戦されているとのことですが、そちらはお仕事としてですか?

ゆめ:いえ、今は無料のコミュニティで、収入は得ていません。現在、就労移行支援にお世話になっているので、収入を得ることはできないんです。就職が決まって就労移行支援を卒業したら、収益化しようと考えています。

かのん:就活を再度進めていらっしゃるんですね。

ゆめ:そうです。今は調剤薬局事務に応募しているところです。在宅勤務でサンプルを作ったり、パンフレットの製本やデータ入力をする仕事です。薬の名前や効果、組み合わせについての知識も必要になるので、学んできたことも活かせるんじゃないかと考えています。

かのん:そちらでは何か配慮をお願いしたりしていますか?

ゆめ:「具体的な表現で指示を下さい」とだけお願いしています。
外に出て働くとなると「遠近感がないので物を渡す時にミスをしてしまうかも」とか「名前を呼んでから話しかけてほしい」といったことはお話しする必要があります。でも、在宅ですし、チャットでのコミュニケーションなら誰宛てのメッセージかは分かりますよね。対面の時と比べて必要な配慮は少なくなります。

就活を振り返って

かのん:ご自身の就活を振り返って、やって良かったと思うことはありますか?

ゆめ:ハローワークを選んでいて本当に良かったと思っています。自分だけで進めるタイプの求人サイトだと、こういったトラブルになった時にどうしようもなかったと思います。
あとは、人脈を作ること。ハローワークでも、1人だけでなく色んな人とお話ししたり、学校の面接練習も色んな学科の先生にお願いしたりしました。その結果、相談する相手が多くなったのでとても助かりました。

あと、やっておけばよかったと思うのは、社会人になるための勉強ですね。例えば労働基準法の話とかハラスメントを受けたときにどうしたらいいかなどを知っておけば、今回のような事態にも対応できたのかもしれない、と反省しています。

かのん:逆に、やらなくても良かったなと思うことはありますか?

ゆめ:あまり焦って就活しなくても良かったかも、というのはありますね。周りが就活してるから私もやらないと、と思っていて。でも、その時期は家庭の事情などで精神的に辛い状態が続いていたので、無理せずもう少し休んでから就活してもよかったかもしれないって思いますね。


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この記事を書いたのはかのん。高度難聴の大学生。趣味は映画鑑賞で、特にインド映画が好きです。

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