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最新技術で白杖をスマート化!スマート白杖で世界が視える

Collable インターン生のぺーです!

連載「アシテク」では、アシスティブ・テクノロジーを紹介し、皆さんの生活を少しアップデートしたり、新しいアイデアのヒントになる情報をお届けしています!

※アシスティブ・テクノロジーとは
障害による物理的な困りごとなどをサポート、解消してくれるツールやデバイスの総称です。
詳しくは第1回記事に書いてあるので、そちらを読んでみてください👇

さて、今回紹介するのは「スマート白杖」です。
白杖については知っている方も多いと思いますが、スマート白杖とはいったいどのようなものでしょうか。
普通の白杖との違いは?どんな機能がある?とても気になりますね。さっそく見ていきましょう!

白杖について

スマート白杖を紹介する前に、まずは白杖について簡単に説明したいと思います。
日本歩行訓練士会のHPでは以下のように説明されています。

白杖は身体障害者福祉法では『盲人安全つえ』と記されていますが、一般的には白杖(はくじょう)と呼ばれています。白杖の携行については道路交通法第十四条に『目が見えない者(目が見えない者に準ずる者を含む。以下同じ)は、道路を通行するきは、政令で定めるつえを携え、又は政令で定める盲導犬を連れていなければならない。』と定められています。

 日本歩行訓練士会「白杖(盲人安全つえ)について」

白杖を使用している人=全盲であると思われがちですが、全盲の方だけでなくロービジョン(※視力の低い方)や視覚障がいではない方も使用することがあります。

白杖の主な機能は

(1)視覚障害を持っている(目が見えづらい)ことを周囲に知らせる
(2)歩行に必要な路面の情報を収集する
(3)路面上にある障害物や段差などを検知し危険から身を守る

の3つとなっています。

全員が同じ形状の白杖を使用するわけではなく、長さや重さ、形状や素材などたくさんの種類がある中から自分が使いやすいものを選ぶことができます。

直杖や折りたたみ式、スライド式やIDケーンなどさまざまな種類の白杖が描かれているイラスト
白杖にはいろいろな種類があり、真っ直ぐ1本の直杖式、携帯用に収納しやすい折り畳み式、同じくスライド式があります。またシンボルとしての役割に特化した白杖(IDケーン)もあります。
錦城護謨株式会社HPより

白杖の課題

白杖は視覚障害や目が見えづらい方にとって欠かせない道具ですが、外出時における危険や困難は、白杖だけでは克服しきれないことがあります。白杖では下り階段や横断歩道などの認識は難しいとされていて、駅ホームでの転落事故や道路横断中の交通事故などが後を絶ちません。

階段を転落している男性のイラスト。

そうした事故を防ぐため、駅のホームドアや音響式信号機の設置などが進められていますが、設置率の低さなどが課題となっています。

これまでにも、超音波を使って障害物を検知し、音で知らせる電子白杖が開発されてきました。しかし、地面の凹凸など様々なものに反応し続けてしまうことや、横断歩道などの認識ができないという問題があり、より実用的なものにするためにはさらに改良が必要でした。

白杖をついて歩きながら、困った表情をしている女性のイラスト。

そこで、現在研究・開発が進んでいるのがスマート白杖なんです。

スマート白杖紹介

みちしる兵衛

<みちしる兵衛>は、画像認識AIを組み込んだコンピュータを白杖に取り付けることで、線路や横断歩道を認識し、使用者に音声で伝えることで、転落事故や交通事故を防ぐ革新的な白杖となっています。

スマート白杖みちしるべえの図。白杖に取り付けた機械部分の蓋が開いて内部構造が見えるようになっている。
未踏ジュニアより

この白杖では、横断歩道などの認識に画像認識AIを用いることで、私たちが普段認識するのと同じ方法でそれらの障害物などを判別し、まさに「目」の代わりとして白杖を使うことができます。

この<みちしる兵衛>は、なんとひとりの高校生が一からプログラミングを学び、わずか2ヶ月ほどで初期段階を完成させてしまったそうです。

その後、視覚障害当事者の試用・インタビューを通して改良を重ね、未踏ジュニアというプログラムに採択され、現在も継続的に開発が進められています。(開発者の高田さんによる、みちしる兵衛の発表の様子です↓)

このような画像認識AIを用いた横断歩道や線路の判別は、先行事例がなく、日本初の取り組みとして高く評価されています。最先端の技術でありながら、製造コストは2万円以下と低コストに抑えられ、実用化に向けた展望が広がっています。

ソニーの外出時歩行支援プロジェクト

カメラやプレイステーションなどで有名なソニーですが、アクセシビリティに配慮した製品・サービスの開発も行っているのを知っていますか?

「アクセシビリティを必要とするユーザーと一緒に検討するインクルーシブデザインの取り組み」の一環として進められているのが、外出時歩行支援プロジェクトです。

「電柱や塀、道路脇の段差などは必ずしも障害物ではなく、慣れている道では重要な目印」「ナビを使って目的地近くに着いても、建物の入口が見つからないことが多い」といった、視覚障がい者の声から生まれたのがこの外出時歩行支援プロジェクトです。視覚障がい者が一人で安心して目的地に着くことができる技術の追求は、誰にとっても楽しく移動できるインクルーシブな未来へとつながっていきます。

CEATEC 2023出展概要 「外出時歩行支援プロジェクト」

インクルーシブ社会に貢献する研究開発:外出時歩行支援プロジェクト (音声解説版)

このプロジェクトでは、間近にある物体などを検知し音や振動で通知してくれる小型軽量なデバイスが開発されています。このデバイスを白杖に取り付けることで、周囲の状況をより正確に把握しながら、歩行することができます。

ソニーが開発した小型デバイスを付けた薄情の写真。デバイスはおよそ手で握れるぐらいの大きさで白と黒をベースにした色合いとなっている。
デバイスにはセンサーとレーダーが内蔵されており、2種類の情報から周囲の状況を判断し使用者に伝えます。

先日幕張メッセで行われた「CEATEC 2023」で、こちらのデバイスが紹介されていたので私も実際に見に行ってきました!

私がソニーの社員さんによる説明を聞いている写真。ソニー社員さんの左手には小型デバイス付きの白杖が握られている。
ソニーの社員さんが説明してくださいました。

 試しに持ってみましたが、思った以上に軽く、小型のため折り畳み式の白杖に取り付けても気にならないサイズでした!


今まで使われてきた白杖に新たなアイデアや技術を組み合わせることによって、視覚障害のある方や目の見えづらい方がより安全に外出できる未来が近づいてきています。こうした技術は、視覚障害のある方の外出の可能性を広げ、それによってキャリアも広がっていくのではないでしょうか?

0から新しい支援機器を考えることは大変ですが、白杖のように視覚障害のある方の多くが持っている身近なアイテムから、アシスティブ・テクノロジーを考えてみると良いアイデアが出てくるかもしれませんね。

もしご自身や周りの方で、こんな風に工夫したり、何かアイテムを使って困難を解消しているよ!というアイデアがあったらぜひコメントで教えてください😀
それではまた次回の記事でお会いしましょう〜!


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