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【100の職種プロジェクト】第4回 膠原病×看護師 患者として、患者さんに寄り添う

100の職種プロジェクトは、さまざまな障害や特性を持つ人たちが、どんな職種や業種でどのように働いているのかインタビューし、障害種別・特性と職種・業種をかけ合わせた100通りの働き方を発掘する試みです。さまざまな障害や特性を活かせる、多様な選択肢のある社会を実現すべく、Collableのインターン生が取材を行っています!

第4回は、デイサービスの施設で働いているゆき子(仮名)さんにお話をお伺いしました。

————まずはゆき子さんの障害について教えてください。

20歳の時に、膠原病という国の指定難病になりました。今は50代になるので、もう30何年前ですね。当時は服飾の専門学校に通っていたんですが、発症してからは休学してしばらく入院していました。進行性の病気なのでそれからも徐々に筋力が衰えてきて、今は身体障害の二級です。
本来だったら自分の体を守るための機能が、自分の体を敵とみなして攻撃をしてしまうことを自己免疫疾患というんですが、膠原病はそれに入ります。私の場合は、筋肉と皮膚を自分で攻撃しちゃうんですね。最初は湿疹ができて皮膚科にずっとかかってたんだけど、だんだん筋力が落ちてきて。筋肉に炎症が出て高熱になって、そこでおかしいなと気づきました。それまでは健康で運動も大好きでしたし、自分が病気になるなんて思っていませんでした。でも、これは普通じゃないということで病院にかかって、1ヶ月ぐらいで診断がおりました。膠原病は、グレーゾーンでちゃんとした病名がつかないままという人も多いんです。私の場合は病名がすぐついて治療の方向も決まったので、そういった意味では良かったのかもしれません。
症状としては、強い倦怠感や疲労感があります。例えば洗濯物を干す時も、ずっと腕を上げている状態に耐えられないので休み休みになってしまいます。あとは、筋肉が常に萎縮しているので、しぼり上げられるような痛みがずっとあります。痛み止めなどを飲んでコントロールしているんですが、それでも一日何もできない、っていうようなことも最近は増えてきています。

————発症してからの経歴を簡単に教えていただけますか。

膠原病を発症して入院期間を終えた後、自分がお世話になった分の恩返しをしたい、と思うようになったんです。看護師さんの中には嫌なことを言うような人もいるんですが、優しくて素敵な人たちも沢山いて。自分は患者さんの側に立てる看護師になりたいという思いが大きくなって、准看護学校に入って免許をとりました。看護師として働いた後にしばらくブランクがあって、それから県庁で受付の仕事をしていました。その後、現在は准看護師の資格を利用して、1日4時間、週に1、2回ほどデイサービス施設で働いています。

————准看護師さんは、私たちが普段目にする看護師さんとは異なるのでしょうか。

そうですね。今はほとんどの看護師さんが、高看護師の資格を持っている方だと思います。最近は学校に通って最初から高看護師の資格を取る場合がほとんどだと思うんですが、昔は准看護学校を出て、働きながら高看護師の資格を取るという流れが多かったんです。准看護師と高看護師の間で仕事内容に差はほとんどないんですが、勉強の期間が少ない分、准看護士の方が下として扱われます。高看護師の資格も取りたかったんですが体力がついていかず、諦めるしかありませんでした。

————現在の職場ではどのように働いていらっしゃるんですか。

大体の場合は、9時から13時までの4時間働いています。その時間帯は利用者さんの入浴があって、職員の手が足りなくなってしまうんです。その間に利用者さんと脳トレを一緒にしたり、食事介助をしたりしながらホールの見守りをしています。たまに午後に勤務する時もあります。午後は昼寝をする利用者さんもいるので、午前に比べるとゆったりしていますね。起きている方と一緒にお話をしたり、レクリエーションで体を動かしたりして過ごします。
今の職場は障害のことも理解してくれていて、働き始める時にも、力仕事など無理なことはしなくていい、座ったままでできることをしてくれたらいいと言ってくださったんです。私も補助的な役割として考えてもらいたいということをお伝えしていたんですが、いざ働き始めるとそれだけではいかない。利用者さんがトイレに立ったら支えながらついていったり、呼んでいたらそちらに行ったり。大したことではないんだけど、筋力のない私はその動作が重なるごとにつらくなってしまって。利用者さんの要求に応えたいけれど動けないような時にすごくもどかしさを感じます。

————ちなみに職場まではどのように通勤しているんですか。

職場までは車を運転していて、10分もかからない距離です。それでもハンドルを持ち続けるのが厳しいので、体の間にタオルを丸めて挟んで、腕を支えながら運転しています。

————今のお仕事で、なにか心掛けていることはありますか。

人の命を預かる仕事だという緊張感は常にありますね。持病がある方も多いですし、何か異変がないか、転倒の危険がないかいつも気を配っています。医学も進んでますから、新たに勉強し直したり、周りの人たちに教わったりしながら、利用者さんの変化を見逃さないようにしています。
あとは、自分も患者だからこそわかる、患者さんの気持ちに気づけるように気を配っています。お年寄りの話をじっくり聞いてくれる家族は多くないみたいで、やっぱり利用者のみなさんは寂しいんですよね。私が代わりにそばにいて、丁寧に話を聞いてあげられるように心がけています。

————今後の目標や、やりたいことはありますか。

身体障害者の会に所属しているんですが、そこに何名か若い障害者の方がいらっしゃるので、青年部が新しく作られたんです。来年からその青年部を動かしていこうということで、今は皆で色々意見を出し合っています。
あとは、大学内にある難病相談支援センターの事業の一貫で、難病のケアサポーターの講習を2年弱受けて勉強したんですが、それを活かす機会が欲しいなと思います。実際に病院で難病の患者さんのサポートができればよかったんですが、コロナウイルスの影響もあってそういった機会があまりないんです。治療のために入院する時は、同室の方々のお話を聞いたり、相談先の紹介をしたりするんですが、勉強したことを活かせる場面をもっと増やしていきたいと思っています。

————最後に、学生に伝えたいことはありますか。

若いうちにやりたいこと、興味がわいたことをまずはやってみて欲しい。私はあまりそういったことをやらずにいたんですが、もっとやっておけばよかったな、という後悔があります。
あとは、何か免許になるものを持っていると便利だと思います。准看護師の資格が私を助けたように、資格が役に立って自分を助けてくれることもあると思うので、頑張ってもらえたらと思います。
最後に、難病も障害も決して他人事ではありません。誰の身にでも起こりうることだから、もっと自分事として捉え想像力を働かせて、皆が皆に優しい社会を作っていって欲しいです。


ゆき子さんの人に対する寄り添い方や寛容な姿勢がとても素敵で、短時間のインタビューでもその人柄がよく伝わりました。また、今回の記事では触れていませんが、デイサービス施設へのコロナの影響や、県庁での受付業務についての詳しいお話も聞くことができました。
ご協力いただきありがとうございました!


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この記事を書いた人✍️

記事執筆者のプロフィール。かのん。高度難聴の大学生。趣味は映画鑑賞で、特にインド映画が好きです。

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