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「マンション共用部分、有効活用の考え方と事例紹介」@マンション管理組合サポート展・ミニ講演レポート(2023年)

2023年5月27日に東京ビッグサイトで行われたマンション管理組合サポート展の中で、マンション管理ミニお役立ちセミナーでお話しする機会を頂けました!
今回のnoteでは、その内容を少し加工してアップします。
補足説明はもしかすると当時のニュアンスとは異なるかもしれませんが、気が付けばもう半年以上経過していますからね…平にご容赦を…。

ご参考①:はるぶーさんの告知(スムログ)

ご参考②:タビーさんのレポート(スムログ)

本記載内容は、私の個人的見解であり、私に関係しているマンション管理組合・勤務先等のその他所属する一切の団体の意見・方針を示すものではありません。



自己紹介

私はがすたまと名乗ってXでわちゃわちゃ気ままにポストしているサラリーマンです。
マンション管理なんて住まいを買って理事長やるまでまったく縁がなかったですし、今でも本業ではマンション管理とは程遠い業種・職種で活動しています。

一方で、なんだか知らないうちに2軒のマンションで理事長を担った珍しい経歴を持っています。
今回の公演では、2軒目のマンションで携わった共用部分・共用施設の有効活用について、課題から活用の考え方と事例を紹介させていただきます。


1.共用部分・共用施設とは

共用部分とは何ぞや?

今回の講演のテーマは「②規約共用部分」です。

共用部分(共用施設)を分類

共用部分・共用施設といっても、性質が異なります。
ここでは、「①空間提供型」と「②サービス提供型」と分類しています。
なおそれぞれに問題点があります。
話し出すと長くなるので強引にまとめるのであれば、「新築時は夢があって良いのですが、築年数が経つとボロくなるし金かかるしで、何とかしたいけど難しいよね」って話です。
上記スライドでさらっと記載しておりますが、詳細をお知りになりたい場合は以下のリンクをご確認いただけましたら幸いです。
(連載モノですが、一話完結型なのでサクっと読めると思います)

「①空間提供型」の問題はこちら

「②居住者専用サービス」の問題はこちら

なぜこうなるのか?

では、なぜ先のような問題が発生してしまうかと言いますと、2つの理由があります。

①更新計画がない(主に空間提供型)
「いやいや、修繕積立金で積み立ててるでしょ?」
と思われたそこのアナタ! 残念!
修繕積立金は長期修繕計画に基づいて算出されていますが、その長期修繕計画の項目を見ると建物と設備に関する項目は積まれていても、ソファー類等の什器備品は存在していないのです。
そのため、ソファー等を買い替えようとすると管理費の中から捻出して対応する他ありません。

②管理費に余裕がない(空間提供型・サービス提供型いずれも)
皆さんのマンションって築何年ですか?
最後に管理費を見直した(値上げした)のはいつですか?

「え? 築10年くらい経つけど一回も値上げなんてしてないよ?」
と仰ったそこのアナタ!
たぶん、ヤバいです。

マンション管理を取り巻く状況は、管理組合の財政を主語にした場合、「収入は減り」、「支出は増えている」のです。
もし、あなたのマンションが管理費を一度も見直していないのであれば、
A)収支は悪化しているという事実を見て見ぬふりしている(一番多い)
B)駐車場代等の他の財源を活用して何とか凌いでいる(その分、修繕積立金への繰入額が減りますのでマズい)
C)元々管理費を過剰に徴収していた(これもありそう)
D)埋蔵金が発掘された(これはなさそう)
のどれかだと思いますが、たぶんAかBが起きているんじゃないかな~と勝手に想像して心配になります。

さて、話を戻しますと、そんな管理費に余裕がない状況では当然ソファー等を更新する費用なんて捻出できるわけがなく、サービス提供型の共用施設にも厳しい目が向けられますので…結局総会とかで揉めちゃうわけです。

分譲時は販促ツール、住んだら福利厚生

GU=グレードアップのことです

夢ある共用施設・共用部分。
分譲時が最も綺麗で維持費もかからないのですが、5年・10年と経過すると、利用者も減って、お金もかかるようになります。
そう、分譲時は販促ツール、住んだら福利厚生。
この特性を理解することがとても重要になるのです。


2.有効活用事例

というわけで、築10年もすれば共用部分・共用施設もボロボロになってきます。
そのため、リニューアルやテコ入れを考えたくなりますが、自分のマンション管理組合には十分なお金がないと気づくのもこのあたりです。

とはいえ、ボロボロのままで良いというわけにもいかないのです。
当時、理事長になりたての私が最初に受け取った意見書は、複数の区分所有者連名での改善要求が…そう、対応は待ったなしだったのです。

改善要求のイメージ画像。マジでビビりました。

有効活用のコンセプトを決めよう

当時は管理費側の会計が単年度赤字に転落しており、共用施設を改善させたくても金がないという地獄のような時を迎えていました。
そのため、「いつか金を作ったときに、どうすれば良いかだけは整理しよう(涙)」と考え、有効活用に向けた整理をはじめました。

整理にあたっては3点の考え方で整理することにしました。

①利便性向上:
多くの方が受け入れやすい施策ですが、とにかくうちのマンションにはお金がありません。
そのため、ただ利便性向上だけを考えるというわけにはいかなかったのです。

②収益性改善:
とにかくうちのマンションにはお金がありません。
そのため、壊れた什器を直すのであれば、少しでも収益性を高める視点も必要だったので、この項目を取り入れています。

③管理をやめる
とにかくうちのマンションにはお金がありません。
そのため、利用状況が悪く、コスト改善が図れないのであれば管理をやめるという方策も積極的に検討せざるを得ませんでした。

ちゃんと積立計画があれば避けられた検討
そもそも共用施設の維持に関する考え方を前もって整理できていれば
「金がない。直せない。維持できない」
にはならないので、管理するなら積立計画を立てるなりすればここまで苦労しなくて済んだのになぁ…とかすべてが終わったいま、振り返っております。。。

有効活用にあたっての整理(検討例)

施策案の赤枠はただの利用料見直しですので区別しています。

当時、私が理事長を務めていたマンションでは、多くの共用施設・共用部分を抱えていました。
まずはそれぞれの特性を整理し、次に先の「利便性向上」、「②収益性改善」、「③管理をやめる」に基づき検討を勧めました。

有効活用事例:駐輪場(2段式ラック)

今回の公演ではいくつか事例を紹介しております。

1つ目は駐輪場。
当時は、
・駐輪場の区画の空きが増えた
・マンション内に多く存在していた2段式ラックの故障が相次いだ
・そろそろ修理部品が終わるから更新が必要
という状況で、「埋まっている区画が限られているのに、このままだと駐輪ラックのリプレースを検討しなければならない」という課題感がありました。
もちろん、壊れたら放置して別の空き区画を使う方法もあったのですが、内見時に「故障中」の札がペタペタ貼られまくったら、管理できていない印象を持ちませんか?

というわけで、この課題に対して、
・金がかかる2段式ラックを廃止
・空き区画を平面化&トランクルーム新規設置
・撤去区画の部品を再利用して、故障個所の修理&補修部品保管
という対策を考えたのがこの内容です。

この転換で、概ね駐輪場区画(駐輪場+トランクルーム)の収入で、2段式ラックの2回目以降の更新費用を賄う算段を付けられましたので、当マンションにおける受益者負担計画の第一弾となったのでした。

駐車場を取り巻く状況

続いて目を付けたのは駐車場です。
駐車場利用料はマンション管理組合にとって重要な資金源なのですが、築年数が経過して解約が続いてしまいました。
要するに、駐車場が空きまくったので何とか区画をお金に換えたいというニーズが私の中で高まったのです。

(解約が続いた理由については、別のnoteでまとめてますので、興味があればご確認くださいませ)

有効活用事例:駐車場(外部貸し)

駐車場の活用事例として2点挙げます。
1点目はよくある手法である駐車場の外部貸し・サブリース。

サブリースのメリットは、最低限のフィーが得られつつ、こちらの都合で駐車場区画を取り戻せ、事務手続きは業者まかせという点です。
反面でメリットとしては賃料が相場より安くなる傾向がありますが、これについてはメリットをどう評価するか次第です。
自分たちで管理できるのであれば、仲介業者と契約して直接貸し出しする方法もあろうかと思いますが、私の立場は、
・居住者優先=居住者が使いたい場合は、返還に応じて欲しい
・集客や事務の手間は減らしたい
という方に重きを置いたので、サブリースが有力選択肢でした。

次はカーシェアです。
「カーシェアを取り入れると駐車場の契約が減るから敵」
というのがマンション管理の常識みたいなものですが、うちのマンションの周りはもうボコボコ増えてるので今更感
がありましたので、当時は割り切っちゃいました。

カーシェアについては別note記事にまとめてますので、ご参考に頂ければ幸いです。

最後は全く再現性がない事例を。
・廃墟と化していた旧保育所(キッズルーム)
・利便性は高いものの多くの補助金を拠出していたミニショップ
この2つを入れ替えて、
・旧保育所は外部からも使えるような工事・店舗の誘致を経て収益事業化
・旧ミニショップはキッズルーム化工事を経てリニューアル
という形で、利用状況に合わせた共用施設の用途変更も行いました。

(今後の予算策定の仕方次第なので断言はできませんが)この事業の完遂をもって、館内に点在するソファー類~共用施設のリニューアルの強力な財源になったのは確定的で、後述する受益者負担コンセプトの象徴となったのでした。


3.考え方・合意形成、コンフリクト

何も手を打たなければ「価値」は落ちていく

このような面倒なことに取り組んだ理由は、少しでも空間を換金したい何も手を打たないことで価値が落ちてしまうことを危惧してのことでした。
外見は立派なマンションでも、中を歩いたらボロボロのソファーが点在していたり、「故障中」とかの張り紙があちらこちらで散見されたら、テンション落ちちゃうじゃないですか。

受益者負担モデル転換へのチャレンジ

とにかくうちのマンションにはお金がありません。
時の理事長の私は、「共用部分・共用施設には金を稼いで貰う。受益者負担だ!」とか叫んでいたとかいないとか。
冗談本音はさておき、この作業を理事会で進めていた時には、並行して管理費の大幅改定作業を行っておりました。
管理費改定を行うことで今回の什器更新はできる見込みが立ってましたが、そのあとにはまた同じように「金がない。つらい」と半泣きする理事長が出かねない状況でしたので、何が何でも共用施設・共用部分には自ら修繕・更新するためのお金を稼いでもらう必要があったのです。

今振り返ると、「このお金がない」という強烈な飢餓感が推進力になったのかなと思ってます。

合意形成

理事会で先の構想をぶち上げた際に、多くの理事役員が「こいつ、何言ってるの?」という表情をしていたくらい、当時の空気感をガチ無視した内容でした。

  • 二段式ラックを撤去→平置化はわかるが、トランクルーム?

  • 駐車場の外部貸し?

  • 共用施設の用途変更? 店舗誘致? 工事?

  • 収益事業? 受益者負担モデル?

とにもかくにも当時の感覚では新機軸のオンパレードです。

特に、駐車場や共用施設用途変更あたりは「空間をお金に換える」という趣旨の内容で、お金を生むためには前提条件として多くの人(外部の方)が使える環境が必要でした。

そのため、
・需要確認のためのアンケート調査
(例…トランクルーム使いたい? この金額ならどう?
   コンビニ、便利? 店舗工事してお金稼ぐ構想とかどう?)
・事前説明会の意見確認
と結構慎重にやりました。

今振り返ってみても、この時に前向きにご協力いただいた当時の理事役員の皆さんや後任の理事長がいらっしゃらなかったら、たぶん何も出来なかったんだろうなと思います。
理事会のメンバーには本当に恵まれていました!

コンフリクト(視点の違い)

ぶっちゃけた話、説明会では結構前向きな意見が多かったんです。
強い反対が恐ろしいくらい出なかったんですよね。
一方で、総会になると一転して反対意見を申したい方が何名かいらっしゃったので、説明会とは別物だなぁと思ったのでした。

数人の声が大きく見えるインターネット

また、匿名掲示板は荒れに荒れたようです。
(私自身は疲れて見るのをやめちゃいました)

とはいえ、私が理事長として見るのは、
・説明会での意見
・アンケートの回答
・総会での意見
・意見書(記名)
だけで、他は受け止めようがありません。

オフィシャルなルートではない意見に対して、対応する理由が全くないのですが、家族には要らぬ迷惑をかけてしまいました。

今でも、
(開店数か月前)「店舗を誘致しても開店時にはもう引っ越して貴方は使えないのに、叩かれてばかり…」
(開店した光景を見て)「結局、多くの方が使ってるじゃない…」
との妻のつぶやきが心に残っています。

まとめ

なんか最後は暗くなってしまいましたが、まとめると上記スライドの通りです。

私の場合は「金がない。何もかもボロボロ。何とかしろとせっつかれる…何とかしないと」が行動の原動力でしたが、時間とお金が許せばもっとゆっくりやりたかったところです。

とはいえ、私が住んでいたマンションは対面でお会いする方の多くの方が人間味溢れる方が多く、
「新築の時のワクワク感を思い出した」
「もっとトランクルーム増やしてー」
「便利になったよねぇ」
といったお声を多くいただけました。
それはそれでとっても救われましたし、やって良かったなと心から思えたのです。

今回の話は共用部分・共用施設の有効活用というテーマでも結構尖った事例でしたが、次に理事として転生したら、今度はゆっくりと腰を据えて取り組みたいな、と思いながら今回の内容を終わります!

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