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逆境の機械式・タワー型駐車場(マンション駐車場運用戦略①)

「管理費の収入側の予算が数百万減ってるじゃないか…」

数年前、管理会社の担当者から次年度の予算案が提示され、内容を理事長として確認していた私の声は…恐らく震えていたのではないかと思います…苦笑

私「…予算が減少した理由は?」
管理会社「それは駐車場の解約が増えているからです」

築年数が経過しているマンションで良く耳にする駐車場の空き問題。
「築浅」というカテゴリーを卒業しつつある私のマンションにおいても、この問題に直面する時がやってきたのでした…!


駐車場の契約台数が減ると、管理費が高くなるってホント?

恐らく、多くのマンション管理組合では、「管理費」に加えて「駐車場使用料」を充てることで、一般会計(管理費口)の予算を編成しているのではないでしょうか。

イメージとしては次のようなイメージで、駐車場使用料の依存度が高ければ高いほど、築年数が経過することで厳しい状況に追い込まれていく財務構造であるものと言えます。

駐車場note1
駐車場使用料と管理費の関係

もし一般会計(管理費口)に駐車場使用料を充当していなくても収支が均衡しているのであれば安定していると言えますが、多くのマンションでは分譲時からの設定で駐車場使用料を繰り入れて収支バランスを整えている傾向があります。
こうすることで、販売時に「管理費」が安くなり、月々の負担を抑えることでマンションを購入しやすくしているわけです。
(恩恵を受けている方がいらっしゃるので、悪く言うのも気は引けますが)管理組合・理事会目線では、例えば「1台でも解約があったら予算案の前提が崩れる」とか、その設定に無理があるとちゅらいんですよね…。
(初めて買ったマンションはそんな設定でした…)

ご自身のマンションがどのような財務体質なのか、また駐車場使用料も財源として充て込んでいるのであれば、駐車場使用料の直近推移は確認しておかないと、私のように困った状態で予算編成を行う羽目になります…トホホ。


通説「機械式・タワー型の駐車場は金食い虫」

さて、「B:駐車場使用料(修繕積立金)」に充当する金額は、駐車場の構造が「自走式」か、「機械式」もしくは「タワー型」かで大きく変わります。

マンション管理においては小見出しのような通説があり、少し検索をかけてみるとやはり同じような内容がワラワラと出てきます。

駐車場は金食い虫

【補足】
この通説は事実だと思います。
例えば、駐車台数1台につき20,000円/月の使用料を徴収し、一方で維持管理(修繕・点検・更新)ができるだけの費用を控除しようとした場合、
・タワー型:13,000円/月(ざっくり)
 ⇒ 一般会計に繰入られるのは、1台につき最大7,000円/月分
・自走式駐車場:5,000円/月(適当…さすがに0円ではないはず)
 ⇒ 一般会計に繰入られるのは、1台につき最大15,000円/月分
となるイメージです。

補足の通り、維持管理や更新等の必要な経費を充当する前提であれば、自走式駐車場であることが望ましいと言えます。


機械式・タワー型の駐車場ってメリットは…?

さて、私と縁があったマンションは、今の住まいはタワー型が大部分を占め、前のマンションも機械式で構成されていたことから、無意識のうちに金食い虫に気に入られていたのかもしれません…/(^o^)\ナンテコッタイ

さすがに金食い虫扱いだけだと面白みに欠けますので、マンションの駐車場で主流となる3タイプ(自走式、機械式、タワー型)の特徴をあらためてまとめ、少しでも良いところがないか探してみることにしました。

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うむ、少しでも良いところを探そうとしてのですが、結果としては芳しくありませんな。
それどころか、「駐車制限」と「ニーズ変化への対応」という点においては、機械式とタワー型はとても辛いことになっています。


お高くとまる軽自動車とメタボ化する普通自動車

お車をお持ちの方はご存じかと思いますが、この10年間で自動車周りの状況が大きく変わりつつあります。

機械式やタワー型の駐車場は、構造上、駐車可能なサイズや重量が決められており、駐車区画によって駐車可能なサイズが2〜3パターン(HR:ハイルーフ、MR:ミドルルーフ、NR:ノーマルルーフ)に分けられています。
また、多くの区画が作れるので、ノーマルルーフが最も多く用意されています。

その中からご自身の車両にあった区画を選択してもらうことになるのですが…近年、この駐車場設定と人気車種の傾向の乖離が大きくなってきているのです…。

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1. 軽自動車
軽自動車は全長(3.4m以下)、全幅(1.48m以下)、そして排気量(660cc以下)が規定されており、収納力を高めるためトール化が進んでいます。
軽自動車の年間売上トップ5を2010年度と2020年度で比較してみると、2010年度の車種であればミドルルーフの区画であれば駐車が出来たのですが、2020年度の売上トップ5ではミドルルーフ区画に駐車可能な車種は1つしか存在せず、ノーマルルーフ区画に至っては駐車可能な車種は存在すらしていません。

一方で、最近郊外の新築マンションを見学しましたが、(機械式駐車場があるのは仕方ないとして)未だにノーマルルーフの区画が6割以上を占めていたのには閉口させられました…。

郊外において車は日常生活の足である可能性が極めて高く、維持費が安い軽自動車は市民権を得やすい環境があるものと考えられます。
それを鑑みると軽自動車売上トップ5の車種が1つも駐車できないノーマルルーフ区画が多数を占めるのはいかがなものかと思う次第です…。

2.普通自動車
普通自動車の大型化もインパクトとしては大きいものがあります。

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ここで出している例は、SUV・ミドルクラスで人気が高い車種「ハリアー」です。
この車種は2020年に第4世代がリリースされましたが、全幅が1,855mmと大型化し、多くの機械式・タワー型駐車場で一般的なサイズ(1,850mm)に収まらなくなりました。

このハリアーで採用されている「TNGA(GA-Kプラットフォーム)」は、同社のミドルクラス車種の基本骨格に位置付けられており、他の主力車種にも展開されています。
つまり、今後トヨタのミドルクラスは多くのマンションに存在する機械式・タワー型駐車場に格納できない可能性が高く理事会に携わる者としては車の買い替えイベントで売買が発生して駐車場稼働率の減少につながるのではないかと危機感を抱いています。

こういうこと2

もちろん、マンションによっては幅広車体に対応した機械式・タワー型駐車場も存在することは知っていますが、そのような配慮が見受けられる駐車場が主流ではない現状を、本当に残念に思う次第です。


マンションの駐車場、どうする?

もちろん、冒頭の課題解決にあたっては、これらの状況を認識した上で打ち手を講じる必要があるわけですが、マンションによって住民感情や駐車場の立ち位置が異なるため、慎重に判断する必要があります。

その内容を「自分のマンションにとって駐車場とは何ぞや?(マンション駐車場運用戦略②)」にまとめましたので、ぜひご覧いただければ幸いです。


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