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新築と中古マンション、どうして差がついたのか…慢心、環境の違い

今年に入ってから新居(新築マンション)に引っ越し。

引っ越すたびにご挨拶のように理事役員に立候補してきたのですが、今の住まいの理事役員立候補の締め切りはとうの昔に過ぎていたこともあり、おかげさまでのーんびりのほほーんと過ごしていました。

そして、いよいよ竣工から1年経過するタイミングで1期目の通常総会議案書が配られたのですが…そこで目が点に。

このマンション、このままいくと紛争まっしぐらやんけ。


ここがやばいよ新築マンション

① クッソ高い管理費

ここがまず前提。
この項目だけはマンションを買う前から分かり切っていたので諦めの感情しかないのですが、なぜ管理費が高くなるのかは後述します。

なお、私は前に中古でタワーマンションを購入したこともあり、その際に管理費・修繕積立金の見直しやら経費の見直しやら長期修繕計画のアップデートやら、いわゆるマンション管理組合お財布事情改善に理事長として携わりました。
(一部は後任の皆さんで完遂いただいておりますので、私だけが取り組んだわけではありません)

そのため、ベンチマークは必然的に前のおうちとなります。

前のおうち…800世帯overの築1x年タワマン(東京湾岸エリア)
今のおうち…前のおうちより半分+αの戸数の築浅タワマン(郊外)

参考までに維持費(管理費+修繕積立金)の比較を載せておきます。

算出条件:70㎡の住まいで100円単位切り上げ
(濃色は実績値。薄色は計画値です)

1年目の時点では既に10,000円近く維持費の差が…これが管理費の差です。

なお、15年目とか見ると前のおうちと今のおうち(長期修繕計画上の数値)は変わらないように見えますが、

前のおうち:多くの共用施設で将来の修繕費を生み出す構造改革を完了。長期修繕計画は安心の50年設計。
3回分の大規模修繕を見込んでるから、高額な設備の交換だって見込んでます。そう、タワーパーキングだってちゃんと建て替え可能。
というわけで、維持費の値上げリスクは比較的少なめ。
(注:肌感95%のマンションではタワーパーキングの更新費用は見込んでません。これはマジで凄いことなんです)


今のおうち:長期修繕計画は標準的な30年設計。共用施設は壊れたら…どうしましょ。
大規模修繕工事は2回分しか見込んでません。
タワーパーキング? そんなもの壊れたら放置やで。しらんがな。
他、デベ作成案なので長期修繕計画はミニマム設計。
共用施設の備品(ソファ、テーブル、ベッド等)が壊れても買い替え可能な貯蓄なんてありゃしません。
当然、維持費の値上げリスク高めです。
(注:これが分譲直後のフツー。結構ザルなのよ。デベ作成案って)

最後は同じような数値に見えますけど、管理組合の経営力は圧倒的な差がついているんですよ。
(むしろ、今のおうちは成り行きだと管理費上げないと立ち行かなくなるし、長期修繕計画の抜け漏れは多いでしょうから修繕積立金はより多く必要になると思いますので、もっと差がつくと思います)

② 郊外物件なのに湾岸タワマンより高い人件費(…何もかも高い)

結論から言えば、管理会社の経費(管理委託費)が高いんですよ。
べらぼうに高い。

私も無事発狂😇

ちなみに、この話が発覚したのはマンション入居後にはじめて行われた総会(設立総会)のことでした。
ここで、管理委託契約の延長契約がはじめて議案に上がったのですが、委託契約費用の内訳が殆ど書かれていなかったので、
「総会議事録でも良いから、内訳と人件費単価を記載していただきたい」
と要望。

で、出てきたのがコレ。

私の前のお住まいよりコンシェルジュさんの時間単価が3割以上高く、「港区でバイリンガルのコンシェルジュが雇用できる水準」。
で、肝心のコンシェルジュさんの求人情報を見ると東京都最低賃金水準。

どんだけ抜いてるんですか…。

参考)都区内(中央区)の場合

参考)近郊/郊外の場合

上はあくまで一例(ただ単に未経験OKで引っこ抜いただけ)ですから、近郊/郊外でももう少し高かったり、もしくは都区内でももう少し安かったりするでしょうが、都区内の方が良い条件が多いのは想像だけでも何となくご理解いただけますよね…。

ここではコンシェルジュさんの単価を取り上げましたが、明細を見ると他の人件費単価も軒並み数割ほど高く、住戸立ち入り系の法定点検なんかも6割以上住戸が多い前のマンションの方が安かったりと、まぁなかなかな感じ。

区分をもって決算書を眺めることで、「新築マンションの管理費が高いのは、管理会社の設定がアカン」と断言できるようになりました。

(コメント)
管理会社に言いたいのは、
・既存マンションが赤字ならコストアップ交渉はちゃんとやれ。
・交渉できない管理組合なんて捨てちまえ。
・新築マンションに寄せすぎんな。

③ 修理代を貯められぬ黒字の駐車場

いやね、経費が高いだけならいいんですよ。最後は絞るだけですから。
(ただ、昔と違い減額交渉がうまく行くかは分かりません。今は管理会社のリプレイスも受託業社が限られておりハードルが高いのでコストダウン材料としにくく、この状況下で足元見るかのようなコストの積み方している管理会社が交渉に応じるかは不透明…)

ただ、それよりもまずいのはコレ。
機械式駐車場は満車稼働なのに、1円たりとも保守・修繕費用に積み立てられてないの。

ここで、マンションの駐車場代がどのように使われているのかをおさらいしましょう。

マンション駐車場運用戦略(①逆境の機械式・タワー型駐車場編)」より
(続き早くかかないと…)

上の図の通り、駐車場使用料は多くの場合、管理費にも繰り入れられていて、日々の管理の財源になっています。
管理費の補助財源になっているわけですね。

とはいえ、駐車場使用料は駐車場の修繕・点検に使われるべき…というのは、駐車場契約者の皆様から見れば疑う余地はないでしょう。
特に機械式駐車場やタワーパーキングは多くの保守・修繕費用が掛かることになりますので、ちゃんと修繕積立金のお財布にも繰入すべきなのです。

が、冒頭の通り、当マンションは1円たりとも駐車場使用料は修繕に備えて貯蓄できていません。
また、試算してみると、「駐車場使用料>駐車場維持・修繕費(長計)」なので、駐車場単体はバッチリ黒字です。
(注:但し、タワーパーキングの更新費用はたぶん入ってない。だから長期修繕計画を信じるのもかなり怪しい)

つまり、管理費側の補助(A)に繰り入れるのが手いっぱいで、修繕(B)に回すことができなくなっちゃっているんです

で、なんでこんなことになっちゃうかというと、マンションに設置されている駐車場の台数が減っちゃったからなんです。

今の新築タワマン。きっと駐車場が足りてない。あったらもっと収入増やせると思うの。
  • 同じ戸数(①)であっても、昨今の車離れのトレンド等もあり、自治体による新築マンションへの駐車場設置条件が緩和され(②)、駐車場設置台数が減少(③)

  • 同じ駐車場代(④)・稼働率(⑤)だと仮定しても、駐車場収入は大きな差となり(⑥)、この例だと1戸あたりに換算すると6,000円くらい減ってしまうことに…(⑦)

今はこれでもいいのかもしれません。今は。
ただ、数年経過して駐車場の点検・修繕費用が増えてきたときに、駐車場非契約者と契約者の間で揉めるのは必至であり、将来的な火種になる可能性が極めて高いと言えます。
だから、駐車場代は早期に積み立てる必要があるのです。

(余談)
ちょっと前までは、
「新築マンションの管理費はなんで高いの?」
という質問をよく頂き、それに対して、
「駐車場設置台数が減っちゃったから、管理費の補助が減ったので高くなったんですよ」
とか言っていたのですが、うちのマンションの現状を見ると、駐車場収入の100%を管理費に繰り入れてもカツカツなので、結局は管理会社の経費(管理委託費)が高いという結論になりそうです。
謹んでお詫び申し上げます。

Q. 新築マンションを買っちゃったんだけど、どうすればよいの?

A. 私も知りたい(真顔)

はい、私も今悩んでいます。

結論としては、
・経費を減らす
・駐車場収入を早く積み立てられるようにする
といったアクションを取るようにするしかないのですが…。

前述のような背景をご存じの住民ってきっと殆どいないんですよ。
だから、真面目な顔で
「このままだとうちのマンションやばいよ! 財務改革じゃ」
とか言っても、
「あの有名デベが手掛けた大きなマンションなんだし、管理会社が何とかしてくれる」
という意識の方が強く働くはずなので、ヤバい人認定されちゃう気がしています。

四面楚歌だと、管理会社相手のコストダウン交渉も「あの人が言ってるだけ」と相手にされず、駐車場修繕費用の貯蓄も「よーわからん」となって、全く進まないんですよ。
まずこの点が一つのハードルになろうかと思います。

近郊・郊外のマンションだと住民の支払い余力という観点もある

かといって、お金がなくなったタイミングで維持費を上げれば良いかと言えばそう簡単には進められないかな、という気がしています。

少し前に投降したポスト(本当につぶやき)なんですが、

これは本心です。
ぶっちゃけ、都区内+αと近郊・郊外のマンション住民の間って、支払い余力が異なると思うんですよね。

とらちゃんさんが分かりやすいポストをしていましたが、
・24.6万円のローン+2.5万円の管理費
・13.7万円のローン+2.8万円の管理費
って、結構印象が異なります。

これが、冒頭の私のグラフの数値に当てはめると、16年後には、
・24.6万円のローン+4.5万円の管理費・積立金
・13.7万円のローン+5.2万円の管理費・積立金
となり、後者だと月々の支出のうち3割弱管理費・積立金というキャッシュアウトになるので、とても大きな負担になってしまいます。

「最終的には5.2万円の維持費になることはわかって買ったんでしょ?」
と思われるかもしれませんが、多くの場合、都合の悪いことは聞き流してしまうもので、値上げのタイミングで覚えている住民はそんなにいないのもこれまた不都合な真実です。
(一応、マンション契約前の重要説明事項で案内はあるのですが、購入当初の維持費は皆さん頑張って試算するんですけど、子供が大きくなったりして生活費が苦しくなりがちな10年目以降とかあんま見てないんですよね…なんでだよぅ…)

だからこそ、少しでも抑えたいのですが…そもそも抑える余地があまりにも少ないのが今の新築マンションなんですよね。

【メモ】「維持費が払えないなら売って出てけよ」は実は都区内+αの理論
これ、私も湾岸タワマンの理事長をやっていた際には内心思っていました。
だって、売れば確実に含み益がありますから手戻りがあるんですもの。

但し、郊外物件だと流動性が極端に落ちるので、この理論を真顔で語ると「コイツ、頭おかC」扱い不可避な印象です。
郊外に来て思いましたが、流動性があるのは都区内+αのみなんすよね。
(一方でこれも不動産が下落相場になるとそうも言ってられなくなるので、管理組合の経営観点で維持費を見直すなら早い方が良いと思います)

結論:少しずつ理解者を増やしていくしかない?

結局のところ、少しずつこの課題感をわかってくれる人を地道に増やしていくしかないんじゃないかと思います。
もう泣いたって構造は変わらないし、駐車場は増えないし、埋蔵金は出てこない。けど住んでいる人はいるんですから知恵を合わせれば…きっと…たぶん。
(もちろん、理解者が増えなければ…)


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