読書感想「政治学者、PTA会長になる」。正論パンチは、果たして正論なのか?

YouTubeにて、偶然流れてきたチャンネルの本の紹介があまりにも面白くて
本を買って読んでみました。

元々政治学を研究している教授がひょんなことからPTA会長になって
PTAに蔓延る悪法を変えていき、最後には誰もが嫌だと思っていたPTAから本来の子供のために親御さんたちが能動的に活動するようになるという
普通に読み物として面白い本だった。

本のストーリーは動画を見てもらう方がわかりやすいので試聴をおすすめするが

岡田さんが出会った数々の出来事に対して、自分も仕事上の経験から語っていこうと思う。

表題にもしたが、僕は「正論パンチ」があまり好きではない。
なんでもかんでも論理的で、ルールで決まっていて正しければ何をいってもいい
何をしても良いという論法は、個人的に無理があるからだと思っているからだ。

僕の前職には結構な数の正論パンチ論者はいた。
もちろん、彼らは決められたルールに基づき、決められたように仕事をしているのだが、それに逸脱する(明確な会社のルールではなく、こうすべきだと誰もが思うこと)に対して批判する。

その批判を聞いた時に誰もがそうだなと納得できる。ただし批判された側は面白いくない。「私はやっていますし、この会社では⚫︎⚫︎というルールがあって、こうするべきなのですからあなたがやらない意味がわかりません」という感じだ。

彼らは本当に正しいことを責任をもって実行する。真面目なのだ。
でも真面目であるが故に、他人がそれを守らないことが許せなくなる。
不公平だといってしまう。

だが、背景は誰にでもあるので、そもそもの理由を知らずに
表面上のルールで戦えばどうしても不破が起こってしまうのは
仕方のないことだと思う。

この本の著者の場合は、頭ごなしに正しいことをしたわけではなく
それぞれの背景や理由をきちんと理解した上で
誰のメリットにもなっていない、最も取り下げる障害の低いタスクを
辞めることに成功したことだと思う。

この人には現場の意見をきちんと取り上げられるだけの寛容さがあり
また責任を取るという立場をまっとうするだけの実行力のある人だ。

これが会社だとまあ難しい。

僕も前に新しい部署を立ち上げる検討をさせられたことがある。
頭ごなしに上からDX化だ!と言われて行ったものだ。

僕はその時上から言われたことに対してただ実行するしかないので
現場の営業の方ときちんと打ち合わせもせず対応をしてしまった。

結果、やはりうまくいかず瓦解した。
上から言われていたのだから、会社としては「正しいこと」である。
僕は上の言われることに従って、新しい仕組みを落としたが
何もかも営業のスタイルや本質的な悩みから遠ざかっていて
大失敗した。

前いた会社は営業色が強い会社で、目標や改善に上がる数字なども
どの部署も基本的に全てが売り上げに直結するようなものが多かった。

その中で自分もインサイドセールスという、簡単に言えばオフィス内で完結するセールス部門を立ち上げることを上から言われていたのだが

この目標に掲げてしまった数値から間違えを起こした。
簡単に言えば、営業部門と同じ売り上げと評価項目で対応してしまったからである。

自分がその後営業になって、実際に問題を理解してわかったことは

そもそも余計な売り上げが欲しくないこと
むしろ細かすぎる対応が多すぎて、本来の営業業務に集中できていないこと

この2点だ。
営業が営業に集中できない環境は正直多々あると思うし、普通だと思う。

ただインサイドセールスとは、テレアポ以外に、こういった負担を減らす方が明らかに効率が上がると感じた。

その時、僕が勇気を出して本当に困っていることがそういった営業にまつわる付帯業務であり、売り上げを目標にするのではなく彼らがセールスに直結し集中できる環境づくりの方にしていれば、営業部門の人たちは相当協力してくれただろうし
今では前の会社でインサイドセールス部門が発足していたかもしれない。

僕はこういった背景からただ正しいことをぶつけてもどうしようもないことを理解している。
悪いのはルールやそういったことができない環境であって、ただ正しいことをするように強制すれば良いわけではないと思う。

正論をかざす前に、その背景を調べて、それでも誰もがやるべきだと思えば、きっと人はついてくる。
でもただ正論だけでは、人は動かない。誰もが自分の論理を持っているということもあり、たとえ間違っていてもそれを選択した理由があるからだ。

本を読んで思ったことはこんな感じ。
でもとにかく一番ハードルの低い、誰もが参加できるタスクを行う・行わないを一緒に実行することには、非常にチームビルディングとして良いのだと思った。



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