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羊と鋼の森

何がしたいのか、何をしたらいいのか
好きなものも、嫌いなものも特にない

本書はそんな思いの主人公が高校生の時、調律された学校のピアノの音を聴いて心を打たれ、心身共に故郷の森を抜け出し都会へ赴き「調律師」として生きていく様を描いています。


家に居場所がないような気がしていた主人公の唯一の居場所は近所の森でした。

葉が風に揺れて擦れる音、鳥のさえずり、すべてが土に沈むようなしんと静まり返った空気。そんな森の中で奏でられる様々な音が、主人公の唯一の居場所。

だけど調律されたピアノの音を聴いた時、透明な存在であった主人公が少し色付きます。調律の中に森を見つけたのです。

(ものがたり序盤で目的を見つけられるなんてラッキーな主人公だ・・・と思ったけど、ここからが本番でした)

そこで「好きなもの、何がしたいのか」を序章で見つけることができるのですが、次は調律師として「何がしたいのか、何をしたらいいのか」と悩むことになります。
せっかく好きな森に辿り着いたのに、モヤのかかっていて手探り歩いているような感覚。


「道は険しい。先が長くて、自分が何をがんばればいいのかさえ見えない。最初は、意志。最後も、意志。間にあるのががんばりだったり、努力だったり、がんばりでも努力でもない何かだったりするのか。」

と、主人公の悶々とした心の葛藤をつづっていたり。。

「才能がなくたって生きていけるんだよ。だけど、どこかで信じてるんだ。一万時間を越えても見えなかった何かが、二万時間をかければ見えるかもしれない。早くに見えることよりも、高く大きく見えることのほうが大事なんじゃないか」 

と、調律師の大先輩からは良い言葉をもらえたり・・・

「才能があるから生きていくんじゃない。そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ。あるのかないのかわからない、そんなものにふりまわされるのはごめんだ。もっと確かなものを、この手で探り当てていくしかない。」

と、主人公が自分を奮い立たせてみたり・・・

そんな感じで、ぐるぐると思考が巡ります。
仕事で悶々とする気持ちがすごく共感できて、最後はどうなっちゃうのか、壊れちゃわないか?と、私も主人公に同化して、思わず悶々としてしまいました。(本を読んでる間、ずっとモヤモヤした森の中で地に足がつかず歩いてる感じになってしまったのです、私が)

さて、今日で読み終えて1週間ほどが経過しました。

改めてこの本の魅力を考えてみました。

単刀直入に言うとこの本の1番の魅力、それは主人公に同化して悶々とした森を歩くことではなく、

同じ職場で働く、とても良いオッサン調律師達!

彼らは地に足のついた大人で、凄く良い名言を発するのです。
まるであなたがたって仙人?みたいな名言が多くて、たくさん自分のノートにメモを残すことになりました。

こんなオッサンのような名言を生める人間になりたいな。

読み終えて、改めてこの作品について考えていると
オッサンに行き着いたのでした。。

といいつつ、とても神秘的で憂いのある良作だと思いましたよっ!

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