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ノールビンドニングでブーティを作る その0

この秋冬、ノールビンドニングで最初に作つたのがクラースブリタヒールのブーティだ。
このブーティは『はじめてのノールビンドニング』に掲載されてゐる。

クラースブリタとは人の名前だと本に書かれてゐる。
ノールビンドニングでは長持ちして履き心地のいいくつ下を作ることができないといはれてゐた時期があり、それをなんとかしやうとしてクラースブリタといふ人がクラースブリタヒールといふ作り方を編み出したのだといふ。

このブーティを作りたかつた理由は二つだ。
一つは、ノールビンドニングならではの作り方のブーティであるといふこと。
もう一つは、できあがつたら絶対あたたかいに違ひないといふ確信があつたからだ。
それまでもノールビンドニングでリストウォーマとベレー帽を作つたことがあつた。これが実にあたたかい。
地がふかふかしてゐて、目も密なのだらうと思ふ。
我が家の冬は冷える。
冬はどこでも冷えるだらうが、自宅の自分の居場所はとくに寒い。
このブーティがあつたら、きつとあたたかく過ごすことができるだらう。
さう思つた。

だが、問題があつた。
一つは、ノールビンドニング特有の作り方であるといふことだ。
ノールビンドニングは2017年にはじめたものの、年に一つ何か作ればいい方で、大抵は作り目の練習をするだけで一冬終はるやうな感じだつた。
きちんと形になつたものは、上に書いたとほりリストウォーマとベレー帽だけである。
それに、ノールビンドニングは『はじめてのノールビンドニング』を見て独学で身につけたもので、自分のしてゐることが正しいのかどうか定かではなかつた。これはいまでも定かでない。
ただ、これは本の通りに作ればなんとかなるのではないかといふ気もした。

もう一つは、毛糸をどうするかといふ問題だ。
『はじめてのノールビンドニング』で使用してゐる糸は総じて入手しづらい糸だ。
そこらへんで売られてゐるものではない。
また、ノールビンドニングは引きちぎれること、そして糸端同士を撚りあはせやすいことが必要だといふ。
さういふ糸はないわけぢやないけれど、買つて使つてみないとわからない。
なぜ糸を引きちぎるのか。
ノールビンドニングはあみもののやうに毛糸だまから糸を引き出してする手芸ではない。
糸を引きちぎるのは、針の穴に通して作る技法だからだ。
そして、糸が足りなくなつてきたら糸端と糸端を合はせて撚りをかける。
タティングをしてゐる人なら、シャトルに巻く分だけ糸を糸玉から切つて使ふ、あの感じといへばわかつてもらへると思ふ。

毛糸は、結局パピーのブリティッシュエロイカにした。
好きな糸だし、好きな色があるし、このブーティを作るには極太の毛糸がいいと思つたからだ。
そして、このブーティを作れれば、今後ブリティッシュエロイカをノールビンドニングに使ふことができる。

ところが、ブリティッシュエロイカは、なかなか手では引きちぎることができなかつた。
仕方がないので、切る時にははさみを使ひ、糸端同士をつなぐときはロシアン・ジョインを使つた。
ロシアン・ジョインは糸端を縫ひ込んでループを作り、そこにもう片方の糸端を通してつなぐ方法だ。ループ・ジョインともいふらしい。
ちよつとめんどくさいが、あみものをする時でもこの方法を使ふと完成した際に糸端の始末をする必要がないし、この方法が向いてゐる毛糸や作品もある。

そして、これもまた、ロシアン・ジョインがいけるなら、この先ノールビンドニングに使ふことのできる毛糸の幅が広がる、といふ野心があつた。
とぢ針を使つて糸端を縫ひこむことのできる毛糸なら、いや、糸なら、ノールビンドニングに使ふことができる。

かくして、ブリティッシュエロイカを三玉求めた上からは、あとはもう作るだけだつた。


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