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ノールビンドニングとわたくし

この秋冬はもつぱらノールビンドニングをしてゐる。
ノールビンドニングとは、「針でつなげる (needle binding)」といふやうな意味で、本邦では北欧からきたものと云はれることが多い。
実際のところ、現在世界最古のくつ下と云はれてゐる古代エジプトのくつ下もノールビンドニングの技法でできてゐるといふし、各地で似たやうなことをしてゐたものらしい。
とにかく古い技法であることは疑ひない。

この秋冬は、ノールビンドニングのものだけでも五つ作つた。
クラースブリタヒールのブーティが1.5足。
ベレー帽が2つ。
指なし手袋が1対。
ネックウォーマが1つ。
現在、3つ目のベレー帽を作つてゐる最中だ。

とにかく楽しい。
やめられない。
あみものもタティングレースもさうだが、手の動きが好きなんだと思ふ。
動きとリズムかな。
おなじ手を動かすのでも、刺繍は好きではないし、手縫ひもできれば避けて通りたい方だ。

こんなにはまつてゐるのに、自分のしてゐることにいまひとつ自身が持てずにゐる。
なぜといつて、本を見て覚えたものだからだ。
2017年に『はじめてのノールビンドニング』が出版された。
これを買つて即はじめた。
出版当時、そこかしこで記念のワークショップがあつたりしたけれど、平日開催だつたり即予約がうまつてしまつたりでいづれにも参加できなかつた。
とにかく本を見て黙々とひとりで挑戦したことだつた。

2017年に即はじめられたのには理由がある。
2005年と2014年と、スウェーデンに行く機会があり、その時にノールビンドニングの針を買つて帰つてきてゐたからだ。
2005年は初の北欧行きで、2014年はウメオで開催されたヴェヴメッサ(Vävmässa)に行つた後のことだ。
2005年には北方民族博物館で、何かの骨か角で作つた針を。
2014年にはストックホルムのヘムスロイド(Hemslöjd)で木製の針を。
それぞれ買つて帰つた。

2005年当時から、ノールビンドニングといふものがあることは知つてゐた。
北方民族博物館では初心者向けの手引きのやうな薄い本も一緒に買つた。
買つて帰つてきて、そのままになつてゐた。
そこに『はじめてのノールビンドニング』が発売されたといふわけだ。
だいぶ時間はたつてしまつてゐたけれども。

しかし、そこからが茨の道だつた。
とにかく、作り目ができない。
職場で昼休みに食事のあとのあまつた時間を使つて練習してゐたのだが、とにかくできなかつた。
10cm、ときには5cmくらゐ作つてはみるものの、本に載つてゐるものとはなにか違ふ。
一週間ほど格闘して、週が明けてみたらなんだかできるやうになつてゐた。

思へばタティングレースもさうだつた。
周囲にタティングをしてゐる人はをらず、出版されたばかりの藤重すみの『かわいいタッチングレース』を買つてきてはじめた。
#「タッチングレース」といふのが時代である。

だが、一向にできるやうにならない。
今思へば、「フリップする」のがわからなかつたのだと思ふ。
本で云ふ、「目を移す」といふのがわからなかつた。
それでずつと芯糸が動かないとかなんとかやつてゐて、一週間くらゐたつたときに突然理解した。
芯糸が動くやうになつた。

ノールビンドニングもタティングも、そんなわけで理屈はまつたくわかつてゐない。
とにかく何度も何度もやつてみて、あるとき忽然と正しいやり方がわかつたといふ形だ。
その間、よく飽きなかつたなと思ふし、よく諦めなかつたなとも思ふ。
なにかしら、「なんとかなる」といふ予感があつたのかもしれない。

2017年以降、毎年寒くなるとノールビンドニングの針を取り出してくる。
なにも作らない年もあるが、作り目の復習はする。
作るといつても1つこものを作るくらゐだけれどね。

それがこの秋冬はもう5つ作つた。
あと2つくらゐはなにか作りたいと思つてゐる。

ほんたうはワークショップのやうなものに行ければいいのだが、このご時世だとむつかしいかな。
まあ、本の通りにできてゐなかつたとしても、はるか昔からある技法だし、スティッチの種類も無数にあるといふことだから、おそらくなにかしらのスティッチにはなつてゐるだらうと思つてゐる。

あとは毛糸だな。
『はじめてのノールビンドニング』には単糸で引きちぎれる糸がいいと書いてあるのだが、なかなかさういふ糸がない。
ノールビンドニング向きの毛糸つてどんな毛糸だらう。
自分で紡げば一番いいのかもしれないとは思ひつつ。

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