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【92】ウクライナ情勢を学ぶ:内部崩壊か妥協案か。それとも勝利?

最近、ロシア・ウクライナ情勢でニュースが持ち切りですね。核攻撃による第3次世界大戦になるのか、どこかで停戦協定が結ばれるのか。近代史で異例の事態について、世界史・国際関係好きの視点から考えてみます!

●元々は、NATO VS ワルシャワ条約機構
●ウクライナに苦戦しているのはなぜ?
●経済的制裁やばい...プーチンの誤算とは?
●今後、日本が注目すべきは中国⇒台湾?
●プーチンは「戦略」より「執念」

元々は、NATO VS ワルシャワ条約機構

連日ニュースになっているウクライナ情勢ですが、一体なにが起こっているのでしょうか。戦争になってしまった経緯も大事ですが、今後どうなるかも少し加味して考えてみます。各種テレビ番組やメディア報道は勿論、ホリエモンや橋本さん、ひろゆき、成田教授などいろいろな人気Youtuber(?)も様々な意見を発信しています。

まず、どうしてロシアが攻め込んでしまったのか、という点ですが、分かりやすく言えば、北大西洋条約機構(NATO)という、北米およびヨーロッパ諸国による軍事同盟がロシアの近隣諸国まで近づいていて、遂にウクライナというロシアの超お隣さんまで手を伸ばしてきた、というところです。(NATOから誘ったのか、ウクライナのゼレンスキー大統領から寄り始めたのか、という議論はありますが)

そもそもなんでNATOみたいな軍事同盟がロシアをハブいてんの?って話ですが、それは約30年前まではソ連が脅威だったためです。ソ連はNATOに対抗してワルシャワ条約機構も結成しました。いわば、冷戦時の軍事同盟VS軍事同盟なんですね。

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しかし、ソ連が崩壊しワルシャワ条約機構も解散した後、東側諸国までは行かないよ~と約束していたNATOにポーランドやトルコまで加盟していくので、ロシアのプーチン大統領からすれば、

おい、話が違うやんけ、こっちまでくるなよ!

ということで、20年くらい前からずっと激おこぷんぷん丸⭐なわけです。
(メドベージェフも傀儡政権とカウントすると...)

実際に2014年にはクリミア半島を強制併合してみせたり、ロシアは以前から「NATOは約束を破ったぞ!」と叫んでいました。国内向けの反NATO感情醸成や国際社会への訴えかけもあるのでしょう。

ウクライナに苦戦しているのはなぜ?

しかし、ポーランドやウクライナからすれば、クリミアに浸出してきたり、今回問題になっているドネツク共和国(国という表現ですがウクライナ国内の地域)に侵攻してきたりと、武力で来られたら怖いよおお、というのもあるわけですね。特にウクライナは以前までアメリカ、ロシアに次ぐ核保有国だったところ、非核化まで宣言してきた国。いざ攻められてきたら怖いのでNATOに入って集団的自衛権で守ってもらったほうが安心、というのはあったのかもしれません。

そんなこんなで、「ウクライナはおれのもんだ!」というもめごとに至ったわけですが、ウクライナ(市民)は何も悪いことしていないのに、民間人や軍人が殺されているわけですね。悲しいことに一般人が犠牲になるのは戦争では特段珍しいことではないのですが、個人的にはNATOやアメリカの姿勢もちょっと気になっていました。あれだけ加盟の話をしていたのに、いざ戦争が始まると、牽制や制裁だけで、ワイは兵力は送らないよ・ワイが入ると世界大戦になるで、というスタンスだと不幸の目を見るのはウクライナじゃないか、という気持ちもありました。

ただし、ジャベリンとかいう超強力兵器をはじめ、軍事支援を受けていたウクライナが思いのほか反撃して拮抗しています。2日間で攻略されると言われていた首都キエフも、想像以上に制圧が難しく長期化。これはロシアも国際社会も予期していない展開だったに違いありません。

ウクライナはクリミアの一件があってから、徴兵制度や軍事力強化に力を入れていた事実があったのもありますが、そもそもロシア軍のモチベーションが低いのでは、という説もあります。軍事演習だと思ってキエフ侵攻してしまったかもしれないという話まであります。

このあたりから考察できることは、ロシア(プーチン)の読みが浅かったのでは、というのが一つポイントになるかなと。

早くキエフを陥落できると考えていたのは勿論、ロシア軍人へ自分の意思が浸透していなかったのだと思われますよね。そもそもメディアにほとんどプーチンしか出てこないことを考えると、実質プーチン独裁政権なので、この辺の根回しもうまくいってないと考えられるでしょう。

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経済的制裁やばい...プーチンの誤算とは?

こんな19-20世紀のような「侵攻」「侵略」による戦争を仕掛けたロシアに、当然現代の国際秩序は傍観しません。先日も国際連合で非難決議が出たり、西側諸国による送金・決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除で、ロシア経済はかなり壊滅的だといえます。この効果がかなり早く出てきたのも、ひとつプーチンの「誤算」ではなかったのかなと思います。

ロシアの中央銀行は主要政策金利を9.5%から20%に引き上げことも、ルーブルが最安値に下がってドルへの買い替えが進む中、預金流出によって経営破綻する可能性があったからでしょう。

ロシア国民に「ロシアの銀行に預けておいた方が得だよおお~」ってことを伝えたいのだと言えます。

また、本日のニュースでは、クレジットカード大手のVISAとMaster Cardどちらも、ロシアでの業務を停止するとのこと。

これらから言えることは、ロシア国内で不平不満が高まっていくのではないかな、ということです。戦争中に内部から崩れ落ちるのは歴史上珍しくありません。経済的に制裁を受け、戦争も膠着してくると、国内でプーチンへの不満が高まってくるのではないでしょうか。

得意分野の情報統制や粛清、偽情報によって多少はコントロールできても、ソーシャルメディアやYouTubeでの世界的発信があるので、カバーリングにも限界があるでしょう。若者がこのように積極的に「真実」を発信し、そして受信し、偽情報はすぐに見抜かれてしまうという点も、プーチンの盲点だったのかもしれません。

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今後、日本が注目すべきは中国⇒台湾?

そんなこんなで、今後、日本にとって中長期的に気になるのは中国でしょう。昨日のパラリンピック開幕式でも一部字幕が表示されないことなど話題になっていましたが、習近平はプーチンとどのような関わりをつづけていくのでしょうか。

今までは、ロシアの天然ガスはヨーロッパ諸国の4割くらいに利用されていることから、あまり強くロシアに経済制裁を仕掛けられないのではないかという声もありましたが、ここを失うと逆にロシアも大きなダメージになるかもしれません。しかし、今後、買ってくれる国としてあり得るのが、中国です。

中国はSWIFTにも入っていませんし、逆にロシアから安く買っていくこともできるでしょう。こうすると、実は中国が得するという筋書きもあります。そして、今回の中国のウクライナ侵攻を、自分の台湾進出時の「実験」として傍観することもできます。西側諸国がどのように出てくるのか、国際連合はどれほどの力があるのか、アメリカは(核リスクのある)戦争を始めるのか、など、その辺もある意味で模擬試験のように見ることができます。

日本にとっての懸念点はここになるでしょう。
台湾の先には、日本を見据えています。

と、まるで一昔前の国際情勢のような話になってしまいましたが、よく考えてみれば「条約や国際連合によって守られた世界」なんてまだ100年も経っていません。いざ戦争が始まる時は、そんなものはただの紙切れであり、国のトップの発言もお互いに腹の底で何を思っているのかなんて分かりません。

もしかすると、当たり前だと思っている国際秩序は、当たり前ではない、それを思い知る時代に再突入したのかもしれません。

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プーチンは「戦略」より「執念」

現在、プーチンの取る行動は戦略的・政治的というより、もはや「執念」に近いです。もしかすると、戦況の打開策として「戦術核」(規模はさほど大きくない核兵器)を使うという手段も取るかもしれません。

その時、アメリカやヨーロッパ、日本はどのように対応するのでしょうか?

中国は、ロシアの行動と国際社会の反応を見て、どのように自分たちも動くのでしょうか?

個人的には、91年にワルシャワ条約機構が解散したにもかかわらず、残っていたNATOがちょっと攻めすぎたのもあるのかなと思っています。フィンランドのようにEUには入ってるがNATOに入っていない国もあるわけで、そこを切り分けてウクライナあたりはそっとしておいてもよかったのかなと。中国と韓国の間にある北朝鮮じゃないですが「緩衝地帯」とする方針は大国同士のソフトパワーを均衡させるのに大事な役割です。

正論を言えば「ウクライナだって怖いんだから加盟でいいんじゃん」ですが、国際関係というマクロな視点で考えたときに、NATO首脳部がどうカードを切っていくべきだったのか、ここは政治的手腕が問われるところだったかと。(NATOは軍事同盟ですが)

今となってはゼレンスキーがそんな妥協策を受け入れるわけにもいきませんが、元はといえばNATO加盟が端を発しているので、ここを責任もってうまく解決できれば戦争は早く終結するのかもしれません。

正直、何をするかも分からないプーチンなので、戦術核もあり得るんじゃないかなと思ってしまいます。

もっとひどい惨劇が訪れる前に、少しでも早く今の事態が収束すると良いですね。

今後も目が離せないです!!


最後に、好きなアニメの一つである「銀英伝」から引用。

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政治の腐敗とは政治家が賄賂を取ることじゃない、それは政治家個人の腐敗であるに過ぎない。

政治家が賄賂を取っても、それを批判できない状態を政治の腐敗というんだ。

ヤン・ウェンリー(銀河英雄伝説)

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