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はじめて切り絵をやった話

切り絵をやった。

これまでの人生で切り絵をやった記憶がないので、たぶん初めてだと思う。でも、そんなことってあるんだろうか。記憶にないだけで、幼稚園とかでやっていそうな気がする。もしそうだとしても20年ぶりくらいだろうか。初めてやった、と言っても許されると思う。

そんな前置きはともかくとして、切り絵をやった。

職業柄、自分で何をつくるか考えて、好きなようにデザインして、工作をしたり、絵を描いたり、そういうこともする。基本的にはやらなければならない業務に追われているので、自分の裁量次第でどうにでもできる業務はどうしても後回しになってしまう。それでも、やらなすぎると味気ない、そういう類のものだ。

今回は、他の業務に余裕ができたわけでは決してないのだが、「そろそろ何かつくらないと」という必要に迫られて、何かをつくることになった。

真っ先に思い付いたのは、「冬の世界」をつくることだった。冬と言えば雪、というあまりにも安直すぎる発想がまず浮かぶ。安直でもいいじゃないか。
というわけで、紙をどうにかして「雪」を表現することに決めた。雪か。雪の結晶ってすごく綺麗だなぁ。降らないから、実物を見て感動した経験があるわけではないのだけど。そうだ、雪の結晶を切り絵でやるのはどうだろう。

それが切り絵である必要はまったくなかった。時間がない中で、わざわざはじめのことをやる必要性は本当にないが、「作業そのものの時間」は、おそらくそれほどでもないだろう、という見立てがあった。早く決めて早く形にする必要がある。いろいろと試行錯誤したりして「考える時間」をかけたくなかった。それに、切り絵なら折り紙があればいい。コストの面でも最良だった。

そんなふうに考えて、今回は切り絵を作ろうと決めた。

好みの図案を見つけ、「なるほど四ツ折りにして切るのだな」と初歩的な部分を確認する作業は昼休みに行った。センスに自信はないものの、切ったり貼ったりして、平面上に世界をつくることが好きで、「こういうものがつくりたい」という気持ちは割とある方だ。「既存のものでばっちり合うものがなければ、ゼロからつくればいいじゃない」、という思いで生きている。今回は、運よく気に入る図案があった。切り絵で雪の結晶をつくる、というのはよくあることらしく、結構見つかった。確かに対称の図形なので、とても切り絵に向いている。

さて、手元にある図案をもとに切り絵をする方法は、3つある。
図案を見ながら書き写すか、トレーシングペーパーで書き写すか、コピーして切りたい紙にホチキスで留め付けるか、だ。まず、雪の結晶のような繊細な模様を写し取る自信がない。そして、トレーシングペーパーは手元にない。消去法で、コピーをすることにした。

そして、大きさだが、元の図案は15cm角の折り紙1枚でつくるようになっている。15cm角の折り紙は、最も一般的でよく見かけるサイズである。つまり、余白を除くと10cmほどの雪の結晶ができあがることになる。ちょっと大きい。六角形の図案でつくったら、クモの巣みたいになりそうだ。そこまでの大きさはいらない。とりあえず、15cm角の折り紙を四等分して、4分の1の大きさでつくることに決めて、図案を縮小してコピーした。

写真がなくて大変恐縮だが、かなり簡単に綺麗につくれた。ちょっと複雑な図案を選んだ気がしたが、見た目よりぜんぜん簡単にできてびっくりしてしまった。しかし、他に必要なパーツと組み合わせるとまだ少し大きく感じた。2つ目は色を変えて、さらにその4分の1で作ってみよう。

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できた。

10切り絵(寄)

これ、たぶん、切り絵を初めてやる人がやる大きさではない。最初、無謀にも普通の大きさのハサミ(17cmくらいのもの)で切り始めたが、すぐにカッターに切り替えた。そして時間にも追われていたので、切っている時間は10分くらい。切り絵を初めてやる人が急いでやる大きさではない。よく見ると粗がすごい。奥に図案のコピーとホチキスで留めたものが写っている。図案のコピーに白い部分が残っているのは、やっていてめくれるのが鬱陶しくて外したからだ。細かすぎるため、少しでもズレたら枝のような部分を切り落としてしまう。ある程度切ったあとは、もうない方がやりやすい。

せっかくがんばったのに写真ではあまり伝わらないので、手元にあった100円硬貨を置いてみた。

10切り絵(寄2)

こうして見ると本当に粗が目立つが、結果として思い描いた通りの雪の結晶ができて、全体としてもきちんと「冬の世界」が出来上がったので、私はとても満足している。

思い付きと勢いだけで初めて切り絵をやってみたが、とても楽しかった。切っている間はものすごく集中するので、浮世の柵(しがらみ)をすべて忘れられたところもたいへん良かった。心を無にするというか、目の前の作業にだけ全神経を集中させるこの感覚、結構好きだ。自分が「細かい作業が好き」である理由を突き詰めて考えたことがなかったが、そういうところにあるのかもしれない。

やったことがないことをやってみるきっかけは、きっといろいろあると思う。そんな時は、深く考えずにとりあえずやってみて、うまくいかなかった時のことはその時に考えるくらいでいいのかもしれない。案ずるより産むが易しとはよく言ったものだと、改めて実感した。とはいえ、もちろん、「とりあえずやってみる」こと自体が難しいことも多いと思う。今回は、必要なものがたまたま手元に揃っていたこともあり、ハードルが低かった。

そんなことを思いながら、「待てよ」と思った。私の頭の中にも、「いつかやってみたい」と思って、大した理由もなく先延ばしにしていることがある。「今は気が乗らない」とか「道具を揃えるのが面倒」とか、やらない理由を付けることは簡単だ。そういったものも、いざやってみたら簡単にできるかもしれないし、道具を揃えるコスト以上の満足感があるかもしれない。というか、「いつかやってみたいと思っていたことをやることができた」という経験だけで、もう充分ではないか、とも思う。

そういったことに少しずつ挑戦していく年にしたいと思う。

(なんだか教訓めいた締め方になってしまった。noteのストックがかなりあるので、少しずつ投稿していく年にもしたいと思う。)

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