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ステロイドカバー

ステロイドは聞いたことあるけど、ステロイドカバーってなに。と私が働いてる中で先輩に指摘されて、何をカバーしてんの!と疑問に思ったので、
勉強しようと思い勉強します。レッツスタディ!

コルチゾール(副腎皮質ホルモン)

健常な成人には1日5~10mgのコルチゾール(副腎皮質ホルモン)が分泌されています。
手術などのストレス侵襲が生じた場合、通常量の5~10倍(最大100mg)のコルチゾールが分泌され、身体の恒常性を保とうとします。

ステロイドを長期投与していたり、短期でも多量投与されている患者は、このような身体ストレスに適応するためのステロイドホルモンの分泌が抑制されています。

※コルチゾールとは
副腎皮質ホルモンは、鉱質コルチコイド(ミネラルコルチコイド)と糖質コルチコイド(グルココルチコイド)と男性ホルモン(アンドロゲン)に分類されます。
・鉱質コルチコイド(代表がアルドステロン)
身体において主に、水(NAの再吸収促進)・電解質(Kの排出促進)の調節を担っています。
・糖質コルチコイド(代表がコルチゾール)
糖(血糖値上昇)・タンパク質・脂質の分解促進に関与し、循環維持(カテコールアミン(交感神経刺激)の作用増強や、副腎髄質からのカテコールアミン泌増加)や、抗炎症作用、免疫抑制作用をもち、手術など身体にストレスがかかった状態において分泌が亢進され、身体の恒常性を維持するよう抗ストレスホルモンとしてのはたらきを示します。(これだけ生命維持に関与しているホルモンなので、身体は天才です!加齢による基礎分泌量の低下はほとんど無いのです。)

そして、「ステロイド、ステロイド」と沢山今日は話していますが、コルチゾールを薬にしたものをステロイドと言います。

HPA軸

その作用調節は、「視床下部→下垂体→副腎」により行われており、これをHPA軸によるコルチゾール分泌調節と呼びます。副腎不全の患者では、身体に手術などによるストレス負荷がかかった場合に、このHPA軸による調節機構がうまく機能せずコルチゾール分泌が増加しないため、ステロイドカバーが必要となります。

身体のストレス(寒い・痛い・血糖低下)

視床下部(H):副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン
      (CRH)が促進。

下垂体前葉(P):副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が
        促進。

副腎皮質(A):副腎皮質ホルモンが促進。

身体の恒常性が保たれる。

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したがってステロイドホルモン(コルチゾール)の分泌が抑制されている患者さんは、手術によって身体にストレスがかかった場合に、ステロイドホルモンの不足状態、いわゆる急性副腎不全(副腎クリーゼ )となります。

症状は全身の倦怠感、食欲不振、易疲労感などを前兆とし、その後、嘔吐、下痢、 腹痛などの消化器症状や発熱が現れ、急速に脱水症状、血圧低下、意識障害、呼吸困難な ど命に関わる重篤な症状へと進行します。

術中や術後に原因不明の血圧低下などの病態をきたします。よってコルチゾールの分泌が抑制されている可能性のある患者に対しては、ステロイドホルモンの急性期補充療法(ステロイドカバー)が必要となるのです。

【ステロイドカバーが必要な患者】


1. 現在(術前)1 週間以上、ステロイドを投与されている
2. 術前6 か月以内に4 週間以上ステロイド投与を受けている
3. 術前6 か月以内にコルチゾール1 g 以上あるいは同等以上のステロイド投与を受けている
4. アジソン病の患者、または両側副腎摘出術や下垂体摘出術の既往およびこれらの手術予定の患者
5. ACTH 刺激試験などで副腎機能低下が明らかな患者

【対象例】※coursinらがまとめたステロイドの必要投与量のガイドライン

【軽症】
鼠径ヘルニア修復術、大腸内視鏡検査、軽 度の発熱性疾患、胃腸炎、軽度~中等度の 悪心・嘔吐など
ヒドロコルチゾン 25m 又はメチルプレドニゾ ロン 5mg を当日のみ静脈内投与
【中等症】
開腹胆嚢摘出術、半結腸切除術、重度発熱 疾患、肺炎、重症胃腸炎
ヒドロコルチゾン 50~75mg 又はメチルプレド ニゾロン 10~15mg を当日静脈内投与
1~2 日で通常量まで速やかに減量
【重症】
心・胸部外科手術、膵頭十二指腸切除術、 肝切除術、急性膵炎
ヒドロコルチゾン 100~150mg 又はメチルプ レドニゾロン 20~30mg を当日静脈内投与
翌 1~2 日で通常量まで速やかに減量
【最重症】
敗血症性ショック
ヒドロコルチゾン 50~100mg 6~8 時間毎に 静脈内投与又は持続点滴+フルドロコルチゾン 50μg/day をショックから離脱するまで投与(数 日~1週間以上要することあり) バイタルサイン、血清 Na をみながら漸減。
プレドニゾロン 5mg 以下の投与を受けていた症例では通常量の投与は必要であるが追加の 補充療法の必要はない。プレドニゾロン 5mg 以上の投与を受けていた症例では維持量に加 えて上記の補充が必要である。

【ステロイド投与のリスク】

1.長期間や多量のステロイド投与は、創傷治癒遅延の原因となる
2.抗炎症作用により、感染症状や検査値の異常がとらえにくくなる
3.血糖値が上昇する
4.胃炎や胃十二指腸潰瘍、消化管出血の原因となる
5.鉱質コルチコイド作用により低カリウム血症を生じる

コレが、ステロイドカバーなのですね。
現時点ではステロイドカバーに、対するエビデンスは存在していませんが、急性腎不全になり命に関わる状態に陥るよりも、ステロイドを投与した場合のリスクの方が低いので、じゃあ防げるのなら防いでおこうとステロイドカバーをしているのです。

はぁ、本日はこれで終了です。
ちょっと疲れてしまいましたが、今日もこれで少し知識をつけられたのではないかと思います。

では、
また疑問に思ったことがありましたら更新します!

あああ、日々疑問に思うことばかりよ。

一人前とは何なのでしょう。。。(;´д`)トホホ

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