Vintage gardenー本物の体験は記憶に残るー
ヴィンテージと聞けばワインや家具、デニムが思い浮かぶ。それはただ古いだけでなく、一般的に時間を経て味わいが出てきた年代モノを指す。京都の旅先でもそうですが歴史ある神社仏閣を見たとき日常から抜け出した快感を覚える。日々の日常では体験できない味わい深い時間の記憶が新鮮な驚きをあたえてくれます。今やほかでは真似できないヴィンテージは欲してやまず世界中を魅了しています。今回は大阪の生野区にある商店街で築50年以上の店舗をリノベーションし、新しくオープンするcaféに誕生したVintage gardenを記事にしたいと思います。
Vintage gardenとは味わい深い場所、添景物、樹木(植物)を組み合わせたものです。今回は古今東西を駆け巡り、味わい深い素材を求め収集し吟味したうえで、シンプルにモミジとコケ、蹲踞(つくばい)を使用しました。モミジは季節とともに変化します。夏は青く。秋は赤く。冬は空白に。それは季節の流れを感じさせてくれます。コケは“コケのむすまで”と歌われるよう、見る人に悠久の時をあたえてくれます。時代がかった蹲踞は元々、灯篭として使用されていましたが、時とともに役目を終え新しく蹲踞として生まれ変わりました。それは人の果てしない営みを感じさせてくれます。縦1.2m、横2.4mのたったひと坪の庭ですが、深い時間の記憶を集約させたとこしえの森をイメージしました。特に蹲踞にうすく繁茂した苔は蒼い毛氈のよう光り輝く、苔には単純に植物としてではなく、時間、日本、造園のシンボルとしての意味もあります。そしてそれぞれの組み合わせた素材の持つ意味は社会の価値観が込められています。ここでは、そんなとっておきのvintage gardenを披露しています。
なにより初めにこのCaféのオーナーからの熱い思いがありました。オーナーはバリスタ世界大会でも優勝経験がある人物。そのオーナーの知識と経験を伝える唯一無二のバリスタ養成スペースを開講すると聞いた。その教育は土地の風土、歴史、文化をおもてなしに繊細に織り込む。ラテアートをひとつとっても指先まで神経を研ぎ澄まし、美しい所作が求められます。私たちはそれに合わせその季節にしか味わえない最高の瞬間を提供し、お客様に新しい価値あるライフスタイルを体験していただけることを想像しました。
近頃は合理的に判断をくだし、仮想のネット上だけでコトが済んでしまいます。便利になったと言えばそうですが、豊かになったのでしょうか?
このcafeでは希薄になってしまったコミュニケーションもこのスペースでコーヒーを通じて新しいつながりをサポートします。未来永劫変わらない人と人とのコミュニケーションにvintage gardenはひと時の潤いを与えたい。
今回、カフェができるエリアは昭和の時代、歓楽街(花街)として栄えていました。今はその名残も薄れています。また外国人移住者が多く住むエリアで外国人向けスーパーなどが立ち並ぶ多文化の街に変わりつつあります。
よく景気の『気』は気分の気といわれます。みな『気』の方が気になり『景』を忘れがちですが、景は風景の『景』です。もともと風景のもつ意味は「景気」の強いすぐれた場所をさしていました。景気とは、景色のもっているスピリットやエネルギーの塊です。新店舗がコーヒーを軸に人と人とがつながり集いの場になる。また多文化の垣根を超えライフスタイルは多様化し進化して地域社会に貢献していく。ひと坪のランドスケープですが素直に堪能していただき、「わび」や「さび」を感じとれる本当に景気のいい場所を体験してもらえるのが願いです。
【所在地】
大阪市生野区
【施設形態】
商業施設及びワークショップスペース
【マテリアル】
イロハモミジ 2本 ハイゴケ 蹲踞(ガラン)