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自動車レースと美容外科、その共通点とは?

医師になり一生の仕事にしようと目指した美容外科、そして子供の頃から大好きな自動車レース。どちらも僕にはかけがえのないものです。まったくつながりがないように見えて、このふたつには共通点があると僕は感じているんです。今回はそのお話をしたいと思います。

レースは単に命知らずのスポーツではない

自動車のレースというと、何となくスピードと根性で突っ走り、「命知らずが強い」みたいなイメージがあるかもしれません。でも実際はその真逆。例えばサーキットのどこでいつ正確にブレーキを踏むか、どのように荷重を移動して車体を制御するか、あるいは高速走行中にハンドル操作のタイミングを瞬時に判断するなど、とても緻密な計算や繊細なテクニックが必要なんです。だから、コーナーを勢いよく直角に曲がるなんて型破りなテクニックは、残念ながら漫画の中の世界だけです (笑)

世界のサーキットは基本的に常設なので、コースは決まっています。その決まったコースを、毎回いかに早く正確に駆け抜けるか。大切なのは、意外かもしれませんがセオリー通りにやることなんです。ブレーキを遅らせたり、ハンドルを急に切ったり、大胆な行動は結局事故になるだけ。正確に止めるべきタイミングで止めて、確実にコースを捉える。それが結果的には一番早いゴールへとつながるんです。

美容外科と形成外科は“サーキット”と“ラリー”の違い?

美容外科は、基本的に病気治療ではないので、手術の内容は決まっています。だからそこから大きく外れた手術をすることはありません。その患者様の状態に合わせ、まず緻密に手術内容をデザインします。そして切る位置を定め、切り始めたらここでいったんブレーキする。ハンドルを正確に操るように処置を続け、確実に止血し最後にアクセルを踏んで、素早くかつ繊細に縫合する。そんな緻密な計算と繊細なテクニックを屈指するのが、美容外科の手術です。
同じ外科でも、形成外科は手術で開けてみたら想定外な事があったり、事故で複雑な傷を負っていたりと、その場その場で状況にあわせて判断することが多いと思います。
レースで言えば、同じサーキットでしのぎを削るのが美容外科なら、形成外科の手術はラリーと言えるかもしれません。砂漠や山の中を走るラリーは、天候も、走る地面の状況も刻一刻と変わります。その場の状況に対し、臨機応変に対応していくのがラリーの醍醐味でもあると思います。

同じ舞台だからこそ、その精度を追求する

サーキットのように美容外科の舞台は毎回同じかもしれませんが、だからこそ重要なのが内容の精度をいかに高めていくかということです。アグレッシブに攻めてとにかく1周でもいいからファステストラップを狙おうとしてはだめなんです。必要なのは毎回の平均ラップを安定させること。毎回どれだけ患者様に負担が少なく、でも確実に結果を導き出せるか。そこを常に突き詰めていくことが、僕が美容外科に惹かれる部分です。

もちろんサーキットでも天候の悪い日があるように、美容外科でも予期せぬことが起きることもあります。でも練習を重ねしっかりとした基本があれば、必ず対処できる。手術に際しても、普段から常にイメージトレーニングをして、手を動かす練習をしていなくては、やっぱり技術は高められないと思っています。

目指すのは正確で確実なゴール

ただレースが手術と大きく違うのが、他の車との駆け引きもあるので、なかなか自分のイメージ通りにはいかないこと。だからおもしろいと言えるんですが(笑)でも、後ろから追われても冷静でいられるかなど、メンタルや集中力がかなり鍛えられるので、それは逆に手術の場面で役立っているかもしれません。

手術とレースを同じ土俵で語ることはできないかもしれません。でも僕にとってかけがえのないこの二つを通し、どちらにも必要と感じているのが正確性、集中力、経験値です。同じ手術の経験を積み重ね、1回1回に集中し、正確で確実なゴールを目指す。そのことをこれからも常に追求していきたいと思っています。

元の記事: https://www.garden-senbi.jp/chairmancolumn/vol-22/

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