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春の欠けたココロ as usual


あたしは、ドラマが好き


誰かと会わなくても
手軽に感情を再生できるから


あたしに残った

ありきたりの孤独





いつだって

夜の永さを
君の影は教える


君は初めに言ってくれた

あたしはその言葉を覚えてる

『ねえ。一緒に、帰らない?』

あたしは頷いて
君は少し、口元を緩めた

今までまともに喋ったこと
なかったあたし達は

共感する話題の多さに気付く


ずっと、
夢中で喋ってたね


バイトメンバーの事とか
最近あった事とか
家族の事

好きとか嫌いとか

「・・・なんであたしなの?」
とか


やがて、二人一緒にいる時間は
増えていき


思いついた事を


一つずつ
叶えていく日々



そのまま
季節に抱かれて

君の横で
君と同じ道を歩くと
思ってた



でも君は
急に本を閉じちゃったから
あたしは続きを見れない

あたしの見たかった映画は

たぶん君と手を繋げたはずの
あの日なんだ


物語の終わりなんて
唐突すぎて

急に泣かなきゃいけない俳優のように
準備もクソもなくて

あたしの頭を真っ白にしたまま
置き去りにする

好きなバッドエンドも
許さない

現実なんて
ひどく陳腐で

びっくりするくらい
あっさりしてて

それでも、その名残は

中途半端に繰り返しながら
あたしの頬をなぞって

顔を上げない言い訳にするの


傷口に欲しい薬は

君がたくさん
持っていったせいで
ぜんぜん足りない

・・・バカやろうって君に言えたら

ちょっとは、
楽だったかもしれない


チクタクと針は
同じ音を繰り返すように

夢へ逃げても

二人だった頃の君は
毎晩あたしの心に会いにくる

そして

朝に残ってるのは


ベランダで陽を浴びて
あたしに気付いて顔を向ける

「起きた?」っていう
君のまぼろし



君の季節はいつ終わるのかな?


あたしは、いつになれば
真っ暗な独りの夜を抜けて、
一人になれるんだろう


君と歩いた道

桜達は長い眠りから
目を覚ます


けれど春は、
あたしだけを通り過ぎていく


その風は

他の誰かの笑顔を咲かせにいく

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