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とあるデザイナーがDesignOpsを始めて見えた景色

2023年1月31日、「DesignOpsMeets」というイベントに参加しました。

DesignOpsとは「デザイナーがデザイン業務に集中できるよう、デザイン業務以外の仕事を最適化すること」。DPMはこれを推進するための職種です。

デザイン組織を強くする「DesignOps」と「DPM」とは DPMがその役割と6つの取り組みを紹介 より引用

日本国内でも注目され始めているものの、まだ形式知の少ない領域であるDesignOpsに対して、3社のスピーカーの方から実践知をご紹介いただいた、とても楽しく実り多い時間でした。
そして懇親会でいただいたハンバーガーがおいしかった🍔

イベントのようすが気になる方はスピーカーの方が一部資料を公開されているのでぜひご覧ください。

さて、そんな貴重な場に参加させていただき自分なりに感じたことが色々とあったのですが、その中で自分が少しでもコミュニティに還元できるものとして、DesignOpsを始めたときの景色と、その後の景色を書いてみようと思いました。

イベントの中で「組織内でDesignOpsチーム組成の必要性が出てきた際に、DesignOpsを採用したり抜擢したりするためにはどうしたら良いか?」という趣旨の質問がありました。

私は2022年9月にデザイナーからDesignOpsっぽい(※)業務を主務とする組織に異動しています。
異動から約半年経った現在、デザイナーからDesignOpsに異動した当時の景色と現在の景色を書き残すことで、DesignOpsに興味があるがチャレンジを迷っている人や、DesignOpsを採用・抜擢したいマネージャーの方の参考に少しでもなれば幸いです。

※正確には私の業務は多職能を対象としているなどDesignOpsとは少し異なるですが、少しややこしくなるので、本noteではDesignOpsの人として書いていきます。そのため「それDesignOpsじゃないから!」と思う表現があるかもしれませんが、大目にみていただけると嬉しいです…!

始まりの景色:DesignOpsなんてやりたくない!

現在所属しているMIMIGURIには、デザイナーとして転職しました。

前職までにWebデザイナーやデザインチームのマネージャーとしてキャリアを積んだ後、MIMIGURIではSaaSプロダクトやWebサービス等のUIデザイン領域や、理念浸透開発や新規事業開発等に伴うブランドデザイン、コミュニケーションデザイン領域を担当するとともに、クリエイティブ系のチームのサブマネージャーを務めていました。

始まりはもうすぐ下半期が始まろうとしている2022年の夏頃、現在の上長から「横断探究推進室という新設される組織で、広報をしてみないか?」とお声掛けをいただきました。

「広報…?」

「…やりたくない!!!!!!!!!」

それが私の素直な第一印象でした。

勝手ながら広報という職能に対して自分の中ではキラキラしたイメージのバイアスがあり、それはひきこもりコミュ障の自分とはかけ離れた存在に感じていましたし、法人格としての発信を行う怖さも感じていました。

一方で、もともとマネジメントに興味関心の強かった私は今後のキャリアの選択肢としてHR系も考えていたため、広報となるとHRの必修科目ではないか…?という思いと、何よりも誘っていただいた上司の元で成長したい、という思いがありました。

「…やるか…!!」

腹をくくり、私はいざ横断探究推進室という、組織の人材育成、組織開発、知識創造、広報等を担う部署の門を叩き、主に広報と、後に採用の業務を担うようになりました。

始めたての景色:「別の自分にならねば」沼

横断探究推進室に異動後、自分は「広報から組織を賦活する人」の責任を全うしようと、いままでのデザイナーの自分とは別の、DesignOpsとしての自分になろうと努めていました。

それまでのデザイナーとして担当していた業務は可能なものから他のデザイナーに引き継ぎ、また、極力「デザイナーっぽい」振る舞いを避けるようになりました。

DesignOpsとして最初に着手したOKRの設計時は、まだ見ぬ組織の未来にとてもワクワクしていたのを覚えています。
デザイナーの時から「組織を推進したい」という想いがあり、ただ上手く行っておらず葛藤が強かったため、DesignOpsであればそれをよりダイレクトに実践できそうだと感じていました。

しかし…

もともと広報がやりたいわけではなく異動していたため、広報をWhyとしたOKRを実践していくうちに、だんだんとモチベーションが枯渇してしまっていました。
「別の自分になろう」とデザイナーとしての振る舞いを避けたこともあり、自身のアイデンティティを卑下するようなモードに突入してしまっていたのです。

このときは本当に闇落ち期だったのですが、上長が1on1にて丁寧に耕してくださり、まずは自分のデザイナーとしてのアイデンティティを卑下せず愛することを教えていただきました。
そしてOKRの設計を調整し、私自身のwillとの紐付けを強化することで(具体的にはwillの強い採用業務等に携わることで)実践を進められるようになりました。

変わり始めた景色:少しずつ拡がっていくレンズ(まなざし)

闇落ちから復帰しDesignOpsの実践を進めていく中で、だんだんとそれまでの視点では気が付かなかった、新しい気付きが得られていきました。

DesignOpsの立場になると、多くのステークホルダーと協働しながら「コト」に立ち向かう場面が増えました。組織課題は複雑なものも多く、お互いの景色を交換しながら、誰も正解が分からないところへと進んでいきます。

それを実践するには、かつてマネージャーとしてデザイナーチームをリードしていた頃の自分からのアンラーニングを果たす必要がありました。

前職にて培った私のマネジメントスタイルは非常に「ヒト」に寄った性質のものでしたが、そこで一定の成功体験も持っていました。
ただ、一方で「ヒト」に寄りすぎず「コト」に向かわねば、という知識もありました。

※マネージャーが向かう「ヒト」「モノ」「コト」については下記をご参考ください。

DesignOpsの実践ではイネーブラーとしての振る舞いが必要になるシーンが多くあるかと思います。
始めた当初、自分では「コト」に向かっているつもりでも、実際には「ヒト」と「コト」が複雑に絡み合って剥がすことができない状態で認知しまっており、物事がうまく進まないと他責もしくは自己卑下モードに突入してしまうことが多くありました。

この発達課題に関しては、Head of PMの方に1on1をしていただいている際に、徹底的に「コト」の推進を通して「ヒト(私)」のwillや課題に向き合っていただいたり、実際に同じプロジェクトで都度PMのレビューをいただいたりとご支援いただいたことで、自分の中でもだんだんと「コト」と「ヒト」を分けて考え、「コト」を通して「ヒト」と向き合う感覚が掴めるようになってきました。

そういった、物事への関わり方の変化に伴うレンズ(ものの見方、まなざし)の拡張の他にも、DesignOpsとしてのアイデンティティとデザイナーとしてのアイデンティティの類似性から、もともと「デザイン」にあると思っていた自分のアイデンティティの「軸」が実際はどこにあったのか?も少し見えてきた気がしています…が、この話は長くなるのでまた機会があれば。

現在の景色:自分のアイデンティティを慈しみながらDesignOpsと向き合う

このように、最初は「やりたくない!」と感じ、向き合い方が分からなかったDesignOpsも、実践と省察を繰り返し向き合っていくことで、さまざまな気付きが得られ、現在はDesignOpsをとても楽しんでいます。

もしこれからDesignOpsを始めてみようかと考えている方がいらっしゃれば、先ずは小さく組織を推進する施策を実践してみるのはいかがでしょうか。
それまでと異なるデザインとの関わり方をすることで、新たな気付きがきっとあるのではと思います。

その際には、デザイナーとしての自分のアイデンティティを慈しんだうえで、専門性を拡張していくのが闇落ちしにくいと思うのでオススメです笑

まだまだ日本では実践が始まったばかりのDesignOpsですが、DesignOpsや組織に興味のあるデザイナーさんが1人でも増えたら嬉しいです。

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