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406号室のベランダで #50

〈これまでのあらすじ〉

東京から戻ってきた伊藤唯人と駒井万里を迎えに来た西野ひかる。そんなひかるの元に月島恵梨から電話がかかってきた。花火大会の誘いだったがひかるは逆に恵梨を誘った。恵梨は「お姉ちゃんも一緒に行きたい」「前に行った丘の上で花火を見たい」とお願いをした。その代わりと言ってはなんだがひかるも万里に浴衣を用意してくれないかとお願いした。月島家では恵梨と雛子が盛り上がっていた……

ーーーーーー

ひかるは唯人を連れて、愛姫を迎えに部屋に戻っていた。

「てか、なんで東京なんか行ってん。それも駒井ちゃんと」

「まぁ、小旅行みたいな、聖地巡礼的な……」

「なんか隠してるやろ……まぁ、いいわ」

そんなことを話しているうちに部屋に着いた。

「ただいま」

「おかえり……あ、唯人君!ひさしぶり」

「お久しぶりです。なんか今日はすいません、バタバタしちゃって」

「ううん、こちらこそごめんね。せっかく来てくれたのに」

「いやいや、結果会えたんで大丈夫です。浴衣、お似合いですね」

「そう?ありがとう」

「じゃあ行こか。ちょっと場所変わってん」

「案内頼むぜ、ひかるちゃん」

「唯人どないしてん、テンション」

三人ははやる心を抑えきれずにアパートを出た。


万里は月島家で浴衣を着せてもらっていた。

「……うん、やっぱりこれが似合うよ」

「そ、そうですか?」

「似合ってるよね、恵梨」

「うん。眼鏡外した方がかわいいんじゃない?」

「え、やだよ。恥ずかしい」

「でも、駒井ちゃん外しても見えるんでしょ」

「う、うん。見えるけど……」

「ほら、せっかくだから外しなって」

「雛子さん、どう思いますか」

「外した方がかわいいと思うよ」

「……外します」

「いいね、じゃあそろそろ行こっか」

こちらの三人も時を同じくして待ち合わせ場所に向かった。


先に着いたのはひかる達だった。花火が打ちあがるには少し早かったが、もう日が落ちていて夜景はきれいだった。

「綺麗だね」

「せやろ?月ちゃんに教えてもらってん」

「ねぇ、その月ちゃんと駒井ちゃんのこと教えて。今日の夜は一緒に過ごすんだし」

「同じゼミの子。てか、なんで唯人両方知り合いやねん」

「月ちゃんは何個か授業がかぶってるから、仲いいんだ。駒井ちゃんは……まぁ、月ちゃんに紹介してもらったって感じ?」

「感じ?って言われても僕は知らんねん。名前は月島恵梨と駒井万里」

「え、月島って……」

「西野!」

恵梨たち三人が合流した。

「月ちゃん、と……雛子さん!?」

「え、ひかる君!?と、ひめ!」

「雛子!?」

「久しぶり!帰ってきてたんだ」

「なんで雛子さんがいるの?」

「なんで、って私のお姉ちゃん」

「マジで?」


<続>

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