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所轄の警察署に行ってきました

前後編予定の、後編です。前編は こちら


さて、どうしたもんか

「美術刀剣として登録したい=この槍を登録審査会に出したい」
というのが目標となりました。

合口短刀拵 三角槍(刃長 14.5cm)

刀剣類を登録審査会に出すにはいくつかの必要書類があるのですが、
その中に「発見届」というのがあります。
家の蔵から出てきたとか、祖父の遺品の中にあったとか、そんな流れで
「新たに存在が発覚した刀剣類」については警察に連絡を入れ、
「発見届」という書類を書いて、発見の経緯を報告しなければなりません。

ただ、うちの槍に関しては発見ではありません。購入です。
ヤフオクで「登録証 不要サイズ」と書かれていた 14.5cmの槍です。
これ、発見届って出せるのか?
そもそも、発見届も登録も不要とされている。
でも、それでも美術刀剣登録したい。その為に発見届が欲しい。

あれこれ考えても分からないものは分からないし、
同様のケースに関するネット上の情報も見つけられなかったので、
色々悩んだ末に、警察署にお電話して相談することにしました。
 

警察署へのお電話

落札した槍が手元に届いたのが10月24日。
所轄の警察署にお電話したのが10月27日。
つまり 3日ほど、どうしようかなと悩んでいました。

全部上手く進んで美術刀剣として登録できたとして、
販売や譲渡した際に、新しい所有者が所有者変更届を提出する必要が
出てくるので、なんなら不自由度が増しているとも言える。
想定した最悪のパターンは、警察に相談して「持ってきて」と言われ、
その場で没収されてしまうケースです。可能性はゼロではない。
そんな不安を抱えながら、それでも、と決意してのお電話でした。

警察署に電話して、今回の電話の趣旨説明。
生活安全課 保安係に繋いでいただき「発見届を書きたい」と伝えところ、
14.5cmの槍で購入した物なら発見届は不要、と言われました。
うーん、やっぱり無理なのか、と思いつつも言葉を探していたら、
「一応、違法な物品でないかの確認をするから現物を持ってきてください」
との事。あー、まぁ、話聞いただけでOKとは言えないですよね。
最初に氏名、住所、電話番号は聞かれて、お伝えしています。
今になって「やっぱり結構です」とは言えない流れ。
という事で週明けの平日、所轄警察署に槍を持って行く事になりました。

よくネット上の話で見かけるのは、
「発見届を出そうと警察に行ったら、
 『この刀には価値がないから破棄した方がいい』と言われた」
みたいな話です。
こういう流れになった時の為に、理論武装はして行った方がいいかな、
と思い、色々調べました。
警察と戦いたい訳ではなく、自分の大切な槍を守るために。

その中で、令和2年12月28日に警察庁から各道府県警察本部長 宛に出された
「銃砲刀剣類発見届 取扱要領の送付について」という通達を見つけました。
そしてその文中に、下記のような記述がありました。一部抜粋。

3 実施上の留意事項
  (1) 善良な発見届出人の利便を十分考慮し、手続について丁寧に
     教示する等、適切な対応に努めること。
  (3) 提示を受けた銃砲刀剣類については貴重な美術品である場合も
     あることを念頭に置き、慎重に取り扱うこと。
     なお、刃渡り、目くぎ穴又は銘文の確認のためにこしらえを
     外すことが困難な場合、無理にこしらえを外そうとしないこと。
  (5) 必要やむを得ない場合のほか、銃砲刀剣類を警察署において
     一時預かりすることはしないこと。

警察庁 生活安全局 銃砲刀剣類発見届取扱要領の送付について(通達)

正直、これを見つけたので、不安はほぼ無くなりました。
一応、お守り代わりに、このPDFを印刷してバッグに入れましたが。
 

所轄警察署 生活安全課 保安係

10月31日、14時 ―― 指定された日時に、警察署へ行きました。
受付で保安係と担当者のお名前を伝え、1階の奥へ。
生活安全課の一角にパーテーションで区切られた机があって、
そこに厚手の毛布を折りたたんだ、ふかふかの台を用意してくれてました。
「こちらで、どうぞ」との事。

セミハードケース>スポンジ>滑り止め>クッション>生成り木綿生地>手ぬぐい>短刀

これでもか、と厳重に梱包していたので、手間取りながら槍を出します。
お電話で話を聞いてくれた生活安全課 保安係の方が主担当で、
他2人が付いて、3人に見守られる形で槍を出し、事情を説明。
担当の3人で相談しながら実況見分が続きます。
「短刀っぽいですよね」「中、見せてもらっていいですか?」
というので鞘から抜いて提示。
「あぁ、これは確かに槍か」「ですね」と、撮影タイムに。
位置を変えたり、裏返したり、金尺添えたり。
「柄、外せたりします?」と聞かれたのでもちろん! って勢いで
持参した鹿角の目釘抜を使って、刀身を拵から抜いて提示。
表、裏と見せて、また撮影タイム。

なんとなくコメントしても大丈夫そうな雰囲気だったので、私も、
「地金見ると、きちんと鍛錬されてる玉鋼に見えるんですよね」
「茎(なかご)の錆も、それなりに古い気がしまして」
「刃文も出てるから、登録も行けると思うんです」
みたいな事を言って、これは美術品だよアピールをしました。
間違っても没収してないでね、という祈りを込めて。

基本的に警察の方は槍に直接触らず、「◯◯できますか?」
「△△していただいていいですか?」という姿勢でした。
―― 最後以外は。

「銘も何か入ってますねー」「時代もありそうですね」

事前の電話の時点から、「発見届を出したい」という希望は伝えています。
14.5cmの槍なら不要ですよ、とは言われていたのですが、
登録審査会に出したいので発見届が必要なんです、とも伝えました。
撮影している間にも、色々な所に確認の電話を入れて、
どういう扱いになるか、どういう対応で行くかを検討してもらってる気配。
で、待ってる最中の雑談で、
「この槍以外にも、色々お持ちなんですか?」
って尋ねられました。めっちゃ笑顔で。
突然の不意打ちだったので、微妙な笑顔で「……はい?」みたいな反応。
「いえ、色々お詳しいので他にもお持ちなんだろうな、と」
と言われました。めっちゃ笑顔で。
警察の人、すごい。そういう所から掘り返すんですね……
他にも持ってる旨を伝えたら、自然な流れで
「そちらは登録証は?」
「あります。勿論。無かったら買いませんよー」
と、めっちゃ早口になった。いや、焦る焦る。悪い事してないのに!

で、ひとしきり情報収集と確認、撮影が終わって、
「一旦、待合スペースでお待ちください」と言われまして。
んじゃ片付けを、と思ったら、主担当ではない大柄な方が
「あぁ、すいません。最後に」
と言って、槍に手を近づけて、「カッチン」とぶつかる音が。
え、何事? と思って見たら、
「はい、きちんと付きますね」って笑顔で磁石を握ってました。
―― 警察さん、そういうとこやぞ。
茎(なかご)だし、側面だし、金額的に大した事ない槍だから許すけど、
物が物ならマジで怒られるからな。せめて一声掛けなさいよ……

とりあえず、待合コーナーに移動。待つことしばし。
結果、合法な品物で所持に関しては問題なし、という結論になりました。
ただ、ヤフオクで購入したものであること、刃長が銃刀法に触れない
15cm未満であることから、「発見届」は出せない、とのことでした。
 

進路相談

主担当のKさんはとても優しく色々配慮してくれる方だったので、
気に入った槍を美術刀剣として大切にしていきたい旨をお伝えし、
その為に登録審査に出したいんだけど「発見届が必要」と言われている、
という内容を改めてご相談しました。
「とりあえず警察側としてはこの要件だと発見届は受けられず、
 発見届の代わりに相当する書類や証明もないので、
 一度、教育委員会の登録審査担当に連絡して聞いてみてほしい。
 その中で照会があれば証言するのでこちら(警察署)の保安係に聞いて、
 と伝えてください」という見解でした。

予定とは少し違う形になりましたが、一旦この時点で、
「この槍は所持していても合法」という結論が出ましたので、
一歩前進、と言えます。
法的な所も聞いてみたのですが、ケースバイケースなので、
一概に「これならOK、これならNG」とは言い切れないそうで、
警察としても苦労が多そうなお話でした。

とはいえ、まだ美術刀剣としての登録を諦めた訳ではありません。
保安係のKさんも「照会あれば証言します」と言ってくれているので、
引き続き、銃砲刀剣登録審査会へのエントリーを目指します。
 

……前・後編の予定でしたが、長くなってしまったので今回はここまで。
次回、完結編として、登録審査会へ向かいます。


#刀 #日本刀 #刀剣 #槍 #銃刀法

ヘッダー画像:自撮り写真・「短刀拵 平三角槍」「鹿角の目釘抜」


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