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極私的カルチャー日記〜わたしの本棚①小説・文芸・モチベ系など〜

涼風肌に心地よく、日陰の窓辺での読書がメキメキ進むこの季節。奄美地方はきょう、全国で最も早く梅雨入りしてしまいましたが、気持ち良い晴れの日が続く本州ではまだまだ、コロナ自粛ムードおうちで普段は読まない本を一気読みしよう、と考えている人もいるのではないでしょうか。

ところで、本棚やプレイリストって、なんだか自分の趣味趣向、頭の中がそのまま表れているようで、人に見せるのは恥ずかしいという気持ち、ありませんか。

私もそうではありますが、今回は脳内をさらけてでもおすすめしたい本を、今の自宅の本棚にある中から数冊ピックアップしてご紹介いたします。やや趣向が偏ってしまった気がしますが、今回は第一弾ということで。

<小説>

『恋文』 連城三紀彦(新潮文庫)

都会で暮らす様々な男女の心の機微を描いた短編集で、直木賞受賞作。職場のある上司と初めて飲みに行ったとき薦められました。その人は普段あまり多くを語りませんが、この本を語る口調があまりにも熱を帯びていたのでアマゾンでポチッとしました。昭和の雰囲気漂う中、男女の心の機微を描いた精緻なモノローグへの共感に加え、恋愛小説なのに必ず話に「仕掛け」と「オチ」がある。恋愛小説を読んだ後の心のザワザワに、星新一のショートショートの読後感を加えたような不思議な小説でした。「なんかいろいろと、人生こんなもんなのかなあ」と肩の荷がおりました。個人的には短編の中の「ピエロ」がオススメです。

ちなみに読み終えたあとその上司に感想を言ったら、「ああ、そう。よかったでしょ。君も大人になってくれよ」と一言。


『愛と幻想のファシズム』村上龍(講談社)

1990年代、経済危機を迎えた日本に現れた政治結社「狩猟社」が日本社会を支配していく様子を描いた政治経済小説。小説でありがちな「ある日突然・・・」みたいな感じがなく、本当に徐々に、極めて暴力的に日本を支配していく様子に引き込まれます。上下巻合わせて1000ページを超え、読むのにかなりの想像力と体力を使いますが、ハマったら一気読みです。実家の親の本棚から拝借して読み始めたら、村上龍ワールドに引き込まれてしまい、以来、村上龍を10冊以上、一気読みしてしまいました。『半島を出よ』と『希望の国のエクソダス』もおすすめです。


『マチネの終わりに』平野啓一郎(毎日新聞出版/コルク)

有名なので読んだ方も多いかもしれません。40代にさしかかろうとするクラシックギタリストの男性と、国際ジャーナリストの女性の恋愛を描いた小説。”大人の恋愛小説”という一言で片付けてしまうのはあまりにも陳腐な紹介なのですが、とにかく読んで欲しい。人生って報われない。切ない。でも、とっても美しいー。胸が締め付けられ、途中で本を閉じたくなる瞬間も訪れますが、ぜひ最後まで全力で向き合って欲しい一冊です。


『ボクたちはみんな大人になれなかった』燃え殻(新潮文庫)

20世紀末、時代が大きく変わろうとする大都会東京で、ある男性が経験した当時の恋愛を現代から振り返るというシンプルなプロットの小説。ただ、AV男優の二村ヒトシが書評でひたすらに「エモい」と称賛していたとおり、ただひたすらにエモいです。田舎出身の私は、学生時代を東京で過ごしましたが、結局あまり好きになれませんでした。だって、東京って隣の人の名前もわからないし、人との繋がりが希薄だから。一人暮らしをしていたら、部屋で死んでしまっても誰にも気付かれないんじゃないか、どうせ東京という街では自分は誰にだって替えの利く小さな存在にすぎないのだから・・・という孤独感を感じたことがあります。そんな私が、「東京って意外といい街だったのかもしれない」と思った本です。ドライで、容赦ない東京ですが、それをさっぱりしたよさとして表現しているような気がします。
鹿児島に住んでいたとき、近所のジュンク堂で立ち読みして2時間一気読み。よって、うちの本棚にはありません。社会人で一人暮らしを始めたばかりだった頃、もしかすると過去のものになった東京に、著者のような懐かしさを感じていたのかもしれません。


<文芸・モチベーション・その他>

『短歌ください』穂村弘(ダ・ヴィンチブックス/角川文庫)

本の雑誌『ダ・ヴィンチ』の連載企画を書籍化したもので、読者から投稿された短歌を紹介しつつ、歌人の穂村弘氏が直してみたり、コメントをつけたりしてゆるく短歌を取り上げる本です。鹿児島に住んでいたときに近所のジュンク堂で偶然手に取り、「なんだこれは・・・おもしろい・・・!」と思って買ってしまいました。穂村氏のゆる〜いコメントも和みますし、日常の一瞬はこういう角度から見ると面白いんだなという気付きも与えてくれます。現代短歌、ハマりますよ。


『たった一人の熱狂』見城徹(幻冬舎文庫)

第一章「仕事に熱狂する」。第二章「圧倒的結果を出す」。第三章「起業は甘くない」。勢いのある見出したちが並ぶこちらは、出版大手・幻冬舎の社長の見城徹氏が幻冬舎を立ち上げるまでを自叙伝的に書いたモチベーションブースター本です。昨今の働き方改革の議論とは真逆の内容ですが、モチベーションはぶち上がります。「確かに、就活のときって自分もこういうこと考えていたよな」とか、「最初はああいうことがやりたくてこの会社に入ったんじゃないか」とか、仕事のやりがいや自分の将来について、もう一度原点から考えるチャンスを与えてくれます。
小見出しをもう少し。「理念なんかいらない」「正面突破を忘れるな」「リスクのない転職なんかない」「野心なんか豚に食われろ」「金が全てだ」。どうですか?これだけでも少しやる気になりませんか?笑


『公衆サウナの国フィンランド  街と人をあたためる、古くて新しいサードプレイス』こばやしあやな(学芸出版社)

フィンランド在住の日本人が、サウナの文化や歴史を現地の視点で取材した「ガチのサウナ本」。老舗サウナの管理人から、公衆サウナを再生した団体のインタビューまで、フィンランド の人たちのサウナに対する思いを感じることができます。ややアカデミックな構成になっていますが、その分情報量も多く、なおかつ読みやすいです。私も昨年末のフィンランドサウナ紀行では、これをバイブルに下調べをし、現地にも持って行きました。もう一歩進んだ知識を得たい、と考えているサウナ好きの方はぜひ。


気の向くままに紹介しましたが、どれか一冊でも手に取ってもらえたらうれしいです。次回は「実用書・ノンフィクション編」をご紹介いたします。

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