大貫隆志

一般社団法人ここから未来 代表理事、指導死 親の会共同代表。著書に『指導死』(編著・高…

大貫隆志

一般社団法人ここから未来 代表理事、指導死 親の会共同代表。著書に『指導死』(編著・高文研)、『子どもの人権をまもるために』(共著・晶文社)、『ブラック校則』(共著・東洋館出版社)。

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教員の理不尽な指導をもたらす背景は、懲戒権にある⑤

 前回、過剰な指導とそのペナルティとしての懲戒が、子どもの命を追い詰める現状があり、それを指導死と名付けたと書きました。今回は、そのような危険性のある指導がなぜ行われてしまうのかを見ていきます。 手続きなしに行使できる懲戒権は ブレーキの壊れたクルマ  私は、「事実行為としての懲戒」を教員が自分の判断で行うことが、理不尽な指導を生み出す原因だと考えています。  「事実行為としての懲戒」の範囲があいまいであることについてはすでに述べました。  これは、生徒指導提要(改訂版

    • 教員の理不尽な指導をもたらす背景は、懲戒権にある④

      過剰なまでの指導を行い 守れなければ懲戒を加える  前回に続いて、あるべき姿に子どもを押し込む実例をもう一つ見ていきます。『学校が大変だ!—道徳教科化がやってきた—』 安原昭二・著/金森俊郎・監修、2019年6月に発行された本から紹介します。  こういった生徒指導は全国的に見られます。このエピソードについては、こども庁の創設に向けた国会議員の勉強会の場で、指導死についてレクチャーした際にも取りあげたのですが、議員の皆さんは笑っていました。笑いで済ませてほしくないとも思いま

      • 教員の理不尽な指導をもたらす背景は、懲戒権にある③

        不登校30万人の現実が示す 学校教育に潜むさまざまな課題  教員が個人の判断で子どもに懲戒を加えることができる現行制度は、学校の安全を守る上で一定の効果をもたらしています。そして同時に、見過ごすことのできない弊害をもたらしています。その一つが、いわゆる不登校問題です。  ここからは、不登校の観点から懲戒の問題を見ていきたいと思います。朝日新聞の記事がもとになりますが、少しその話をしていきたいと思います。  問題行動調査は、さまざまな事柄について学校側の認識を問う統計です。

        • 教員の理不尽な指導をもたらす背景は、懲戒権にある②

          「法的な効果が伴う懲戒」と 「事実行為としての懲戒」  学校教育法第11条に、「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない」とあることは前回触れました。この「懲戒」には二種類あります。それが、「法的な効果が伴う懲戒」と「事実行為としての懲戒」です。  「法的な効果が伴う懲戒」は校長が行うものです。退学や停学、訓告などがありますが、退学、停学は高校生が対象、

        教員の理不尽な指導をもたらす背景は、懲戒権にある⑤

          教員の理不尽な指導をもたらす背景は、懲戒権にある①

          ここでは、指導死をはじめとする学校の問題について書いていきます。 まずはじめに、最近関心を持っている懲戒権について書きます。 なぜなら、指導死をはじめとする理不尽指導が行われるのは、学校教育法に定める懲戒権が色濃く影響しているからです。 教員が個人的判断で児童生徒に加える 懲戒は法的に認められている  学校教育法第11条には、「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加え

          教員の理不尽な指導をもたらす背景は、懲戒権にある①