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文化的雪かきとしての卒論直しと「ぼーい、ぼーい、ぼーい」

 学生の卒論を毎日なおしている。ザ・文化的雪かき。スマホ+SNS文化圏から生まれつつある新たな作文習慣は着実に根付きつつあるようだ。同じようなことを昨年にも書いたのだが、

今年の担当している学生さん達では

 1)改行後に1文字あけない
 2)文節末や文末に入る括弧と句読点の順番がおかしい
    例)「〜で表した。(平均±標準偏差)従って○△は〜」

までは去年と一緒で当たり前のように登場。で、今年に気づいたのは

 3)謎の空白行が色々な所に挿入されている
 4)色々な所に「・・・」や「…」「・・・」が登場
 5)体言止めを使用しないように、とコメントしても直らないので、どうやら「体言止め」自体が分からない(?)
 6)読点を使ったアクロバットな文章のつなぎ方が頻発する
   例1)○△が○○され、○□が□□され、○×が△△された
   例2)○△した時の、○□した時の、△□した時の、平均値は・・・
   例3)〜○を行い、〜□を行い、〜△を行うことで行った。

 特に「謎の空白行」は何度消しても復活してくる。改行後に1文字下げることも何度指摘しても出来ないのもセットなので、恐らく「読みづらい」という感覚はあるのだろうけど、1文字下げるという作法(文化?)そのものを知らないので、メールやTwitterとかと一緒の感覚で謎の空白行を挿入してくるのかなぁと想像している。今後も登場してトレンド入りするかもしれない。改行後に1文字下げることをしないのは、もはや何年も連続で出現するので、この先もずっと続くのは間違いない。

 それ以外(項目4−6)に関しては、各個人の作文能力だろうと思うのだけど、もしかしたら、また登場するかもしれない。X年前に字下げをしない学生が初めて出現した時も、今のように出現率100%に近くなるとは想像もしなかった。言葉とは移り変わりゆくものなので、私にとって常識的な作文ルールが、時代が変われば当たり前じゃなくなる日が来て、私はめでたく老害になるのだ。その過程を学生さんのレポートや卒論を通じてのぞき見ているのだと思えば、この文化的雪かきも夢がある。

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 言葉が変わるといえば、先日に映画(洋画)を見ていて、長い出稼ぎから返ってきた男が、(出稼ぎ中に妻に浮気をされて)妻自らによる浮気の告白+外にアパートを借りて出て行く、という地獄のような説明を聞いているシーンで、男(旦那)が

 「ボーイ! ボーイ! ボーイッ! ・・・・・・ッボーイ!!!」

 って怒りを込めて叫ぶシーンがあったのだ。この台詞がやけに気になって、調べたのだが、どうやら「ボーイ」は「boy」で、間投詞としても使うらしい。

 言われてみると「Oh, boy!」とか「Oh, man!」てのは確かに良く聞く。日本語に訳すると「おい、おい、おい・・・・・まじかよっ!」って感じだろうか? なるほど、と勉強になったのだが、面白かったのは下記の記事。

 上記の説明によれば、かなり年配の方達の使用する言葉らしい。老人ホームで聞く、と。実際に映画も設定が1960年だった。つまりだ。私がちまちまと「改行後は1文字下げる」と学生に言い続けても、それは、いつかきっと失われた作法となり、改行後に1文字下げる代わりに空白行を入れるのが当たり前の時代が来るのだ。自分が(もしも長生きしてしまって)老人ホームに入った時には、きっと若い人が使用している情報交換ツールに、

 老人ホームで日記を見せてもらうと、改行後に空白行をいれずに、1文字だけ空白を入れて次の段落を書き始めるおじいちゃんおばあちゃんを見かけることが出来ます。

 とか書かれるのだろう。ここに予言しておきたい。



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