ネットは世界を分断しないそうだけれども、今日もネットは腐りきっている
ニュースはYahooニュースを見ている。とても便利なアプリだ。トイレできばりながら、一服しながら、コーヒーを飲みながら、どこでもニュースが読める。なんとも素晴らしい。新聞（ローカル紙）も取っているけれど、専ら新聞は別の用途でとっていて、情報源のリソースとしてはYahooニュースに頼っている。
毎日、Yahooニュースを眺めて、そしてコメント欄も見るのが習慣だ。最初は目に余るユーザーのコメントは、ちまちまと「このユーザーのコメントを表示しない」などをやっていたが、もう流石にどうでも良くなった。罵詈雑言が並び、無知が偉そうに世界に説教をして、ネトウヨとパヨクが闘争し、ノイジーマイノリティが闊歩する。間違った知識を堂々と披露し、医者でも看護師でもない者が真実かどうかもわからない書き込みの診断をして、薬のアドバイスをして、弁護士でもないものが法律を語って、自己満足に耽美する。不正確な情報を書き込み、妄想を垂れ流し、陰謀論をうたう。噂と真実の区別もつかない、区別をつける手段を知らない、区別をつける意義が理解できない者達が、必死にコメントを書き込み続ける。そう、それこそ、それこそがネットなのだ。
私はかつてネットの誕生が世界を変えると本当に思っていた。この仕組みは、夢も希望も残っていない現実世界に現れた最後の希望だと思っていた。恐ろしいまでの力を秘めた希望だと思った。誰もが自由に世界と繋がり、あらゆる議論が出来る。学生時代は本当にネットの世界に幻想をみていた。そうして、チャットルーム、BBS、巨大掲示板の誕生から崩壊を経て、今はSNSの世界を見ている。私がかつて願っていた幻想は、ここにはもうない。ネットの世界は無責任な罵りと個人的な妬みに覆われた。ここには、もう希望はない。ただ娯楽として楽しむしかないと思うようになった。
今日は、twitterでふとしたアカウントに書き込んであった文章に目がとまった。曰く『自分はこの分野で研究を続けてきて長い。これから今までの研究を5年後までに出版する。もはや第一人者である。なのに上から目線で偉そうにアドバイスをしてくる老害がうざい。私のアカウントにコンタクトをとってくるなら、最低でも私の知識を超えてくるべきだし、知識クレクレ厨は消えろ』みないなことが書いてあった。そんな奴は研究者でもなんでもない。砂上の楼閣に閉じこもって、世界と断絶して、自分ひとりの研究世界でナンバーワンを叫べば良い。それが出来てこそのtwitterだ。良かったよな、twitterがあって！そう思いながら、今日もネットは世界への憎悪に溢れているし、自分の心のどこかにある増悪を引き出してくれると実感する。
そんな素晴らしく平和な午後の時間帯に、下記の記事をみつけて、すごいカルチャーショックを受けた。
私は過去に3人の「重度のツイ廃」学生を見てきた。いや、ツイ廃だけなら他にもいたのだが、その3人は明らかに違っていたのだ。学生は私がアカウントを時々みているなんて当然知らないので、私や同僚教員に対するヘイトをまき散らし、嘘をついて講義やゼミを休む様をリアルタイムで目の当たりにした。そこで見てきたのは、まさに上記の記事に出てくる「選択的接触」と「エコーチェンバー現象」だ。都合の良い者達だけをはべて、都合の良い意見のみに耳を貸し、裸の王様となる。サンプリング数はたったの3だけれども、その3人のリアル（研究室）での振る舞いが、あまりにも押し並べたように、あまりにもそっくりで、再現性が高かった。当然ながら卒業後は一切コンタクトを拒絶するので、twitterの世界で裸の王様を続けている事以外は、リアルがどうなっているのか不明である。
このような若い裸の王様達が、私の目の前の小さな世界でさえ3人もいたのに、世界は分断しないそうだ。ネットには誰がみても、増悪が垂れ流され、嘘が蔓延して真実を覆い隠し、無責任さに個人的主観が絡み合った「自由」が正義として振りかざされる。なのに、一般的な若い人達は分断されないと研究結果は示している。衝撃的だ。私のみた3人は、まさにノイジーマイノリティということになるのだろうか。だとすると、ノイジーマイノリティの垂れ流す、嘘も、偽りの正義も、陰謀論も、全てが世界のために役立っているということになるのだろうか？もう一度、ネットの期待をしてもいいのだろうか？
でも、その時、ふと思ったのである。あの若い裸の王様達は、どこに行き着くのだろう？リアルで何かを成せればそれで良い。でもリアルは、なかなかにしんどい世界だ。攻殻機動隊の「貴腐老人」という言葉を思い出す。分断はされず平穏と中道が保たれてはいるのだろうけれど、じり貧で何もかもが崩壊寸前の日本のちょっと先の未来で、今を生きる若い裸の王様達がどうなるのか。「選択的接触」と「エコーチェンバー現象」を横臥した人間の末路はどうなるのか？ そこに、ソリッドステートを作る「傀儡廻」は現れるのだろうか？ そんなことを思いながら、今夜も罵詈雑言のネットの世界を巡回する。あの若い裸の王様達がリアル世界で何も掴めなかった時、ネット世界の行き先で救いがあればいいのにと思う。
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