アスペルガーの恋 〜M氏との出会い②

2015年初夏
「彼氏と別れた…」若い女の失恋話に

「えーそうなん?」とまじめに心配するM氏のアイコンは駅伝仲間と肩を組む色黒青年から結婚式の写真に変わっていた。

あんな差し障りない会話からこんな失恋話をメッセージで直にやりとりをするようになるにはツイッターというタイムリーに距離を縮められるツールユーザーにしては時間がかかり過ぎじゃないかとも思う。

私は人に自分のことを話さない。

極力話さないようにしている。

それは本当の私のことを、本当はそうじゃないと思いたかったからだ。

顔が見えないツイッターだからこんなに人が変わったようにお喋りになれるのだろう。

でも、M氏にさらけ出した「私のこと」も実は私自身ではなく普通のかわいい女子大生やお洒落OLの一コマに過ぎない。

私は人に自分を見せる時、語る時 には相手の想像からはみ出ない普通の女の子の物語を壮大に作り上げなくてはいけない。

いつだっていつだって、逸脱してはいけない。

そしてその物語に辻褄を合わせ、説得力を持たせるためのコンテンツ(例えばツイッターやフェイスブック)なんかを用意しておく必要があった。

べつに自慢する友人などいない。アピールする知り合いもいない。
普通の人と同じ使い方を明らかにしていないツイッターやフェイスブックが存在している。

ただ私が普通であるためを装う為のツールとしてのアイテムでしかない 。

他人に理解される範囲で自分のセンスを飾るのはいちいち拘りがあったりもして面倒くさいのであんり投稿できなかったが、それでも私の作り上げた「普通の人」を演じるには丁度いいアイテムになっていたと思う。

別れただの付き合っただの「当たり前の恋話」ができるほどに成長したのは無口すぎな私にとっては大きな進歩だ。

でも、私にはそもそも別れた彼氏などいないのだ。

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