アスペルガーの恋

光太との出会い①人生で初めての私の恋人

M氏と私は大学時代から同じ授業を受け、様々な思い出を写真と共にSNSで共有していた。だからなんの授業を受けて、どこに旅行に行ったのかもそれなりに思い出話が出来るほどだ。

それなのに顔さえ合わせたことがなかった。
何度か会わない?なんて言われたけれど、それとなく話を逸らしてきた。
もし、私が大学時代、なんてことない普通の女子大生なら会っていたかもしれない。
でも、M氏と私はあまりにも違いすぎた。
何かとマメにチャットしているかもしれないが、会ってしまってこの関係性が壊れてしまうことが嫌だった。
友達の多いM氏にとっての私なんてよく喋るフォロワー程度だったかもしれないが、私にとっては数少ない友達の一人だ。
寧ろ顔を合わせてる人にはこんなに本音を喋っていないだろう。
当時、友人の知らないツイッターアカウントでやり取りしていること自体に不思議な気持ちがあった。
M氏のことを私は秘密の友達みたいに感じていた。
M氏が顔を合わせることになったのはこの失恋話がきっかけだ。
卒業から2年が経とうとしたある日こんな話を切り出したのは私の方だった。
M氏の写真が結婚写真に変わった頃、こんな早く結婚するなんていいなぁと写真をファボって呟いたことが始まりだった。
「結婚願望はあるの?」とM氏は私にメッセージを送ってきた。
「あるよ、でも別れたばっかなんだけど」そう返す私。
「え、そうなの!?」M氏は流石にさらりと話す初めての失恋話に同情の色を見せた。
「職場に出会いなんて全くないし、もう無理っぽい。」と私。
「そんなことないでしょ、まだ若いのに」慰めようがないけれど、なんとなく慰めてきたM氏。
「いや本当に人に会わないし無理」と全否定する私は続けてこう言った。
「先輩に紹介してとか言っても面倒がられるだろうし」
「いや別に面倒じゃないよ」とM氏は言った。
私「じゃあ紹介して欲しいくらいだよ」
M「いいよ?」
私「ほんとに いいの?」
M「どんな子がいいの?」
こんなノリで新宿の料理屋で会うことになったわけだが、
後日紹介できる人決まったー
と本当に連絡がきた時にはドキドキが止まらなかった。
「今桜井さんがどんな人か説明してるとこ」
そんなに簡単にいくもんなのか。
「え、なんて説明してるの?」説明するにもツイッターで話してて一回しか会ったことない人を大切な部活仲間に紹介できるんだろうか? 「同じ大学で同じ学年だった子で経済学部も同じだって。今写真送ったら紹介して欲しいってなってるからライン来るの待ってて」
もう後戻りはできない。
家でラインを待っている時はドキドキがとまらなかった。
初めて彼氏になるかもしれない人
結婚するかもしれない人
今思えば結婚なんて巡り合わせだしただの運なのかもしれないが、出会いの少なかった、いやモテたことのない自分にとってはかなり重く捉えていた。
優しい、集団行動ができる、スピード感、、
その条件(私が出会えない範囲)の人と恋愛ができるのだろうか?
無理に決まってる
きっと何もかもがバレるだろう。
だって私は…
そんなことを考えながら自分のやった大胆すぎる行動に焦っていると
ピロリンとラインがなりドキッとする。
「はじめまして、斎藤 光太です。M君とは高校と大学で部活が一緒でした。」
M氏のフェイスブックから駅伝強豪校の高校出身であることは簡単に調べがついていた。
私が?私が駅伝選手の恋愛対象になるの?
なるわけがないという私の不安はラインという見えないコミニケーションの中で隠れていった。
光太からのラインは次の日も次の日も続いた。
信じられないけど「おはよう」から「おやすみ」までのマメなラインの返事は面倒とも思えなかくて一週間毎日ラインしていた。
私の返したい時に返すと割と時間を置かず帰ってきたし、完全に私に合わせてくれていた。
返さないからと言って相手の反応が変わることはなく、完全に私に合わせてくれていた。
一週間も話すうちに私たちはある程度仲良くなっていた。この間だけであっという間にラインの会話量がナンバーワンになっていたし、2年以上知り合いだったM氏よりもはるかに多くの話を一週間でしていた。
こんなの初めてで不思議でならなかった。
私たちは不思議な出会いから一週間後に会うことになる。
最初から恋愛目的だったこともあり話が早かった。
今ではマッチングアプリやら合コンやら飲み会やらで全然出会うはずもなかった人と会うことが当たり前になっているが、その時の私にとってはこの出会いはかなり大きなものになる。
全く人と関わらないように生きてきた私にとって、初めて恋人らしいことをすることになるとはその時は思わなかった。

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