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海のピ【毎週SSxなんのはなしですか】

「先日、私を見に来た人間たちが
船の上でなにやらにぎやかに話をしていてね。
気になってこっそり聞き耳を立ててみたんだ」

「なんでも人間の子供たちには『自由研究』なるものがあるらしく、
そこで海に来たという親子がいたんだ。
だが所詮あてのない探索には徒労がつきものだ」

「双眼鏡で覗こうが水面に顔をうずめて中を見渡そうが、
一向に目当てのものが見つからずに
とうとう子供が泣き出してしまったんだ。
船頭が見かねて無線をつないで陸の同僚に
聞いて回っていたようだが、返答は芳しくないようだった」

「『海の』とついているくらいだから、
海に行けば何かわかるだろうという期待が
悲劇を生むことを人間は忘れている」

「私たちも大分数を減らしてしまった。
今や『海のピ』を知る者は、ほんのごくわずかだ」

「ではクジラさんでも、海のピについては知らないんですね」
「すまんね、力になれなくて」

ここまで話してくれたクジラに私は感謝し、
沖へ去っていくの手を振って見送った。
(410文字)


もし夏休みの宿題に「海のピ」があったらどうしますか?
自由課題で想像力を期待してのものなのでしょうか。
それとも単なる印刷ミスか?
実は先生もよく分かってないかもしれません。

いずれにせよ、まずは一度質問してみましょう。
……なんのはなしですか、これ?

企画概要はこちらから。


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