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気まぐれショートショート 呪いの臭み

私のバイト先であるレンタルビデオ店の休憩室に、冷蔵庫がある。
休憩時間に飲食する人向けに設置されたものなのだが、ただ一人全く違う使い方をする先輩がいた。

その先輩はいつも、わさびや醤油と言った調味料ばかりを大量にストックするのだ。他の先輩もはじめは気になっていたが、本人に聞いても何も答えてくれず、好きに使っていいと言うので、今やみんなが買ってきた弁当・惣菜の味変役として重宝される始末。

ある時、私が休憩室に入ると先輩がコンロの鍋に調味料と店のDVDを次々突っ込んでいた。

「先輩、何してんすか。壊れちゃうでしょ!」
慌てて止めようとすると、先輩がそれを阻んだ。
「大丈夫だって、これで臭みが取れるから」
「臭み? 何の!?」
「呪いのビデオの臭みだよ!」

そういえば、系列店でホラー映画を借りた客が心霊現象を訴えてきたという話を何度か聞いたことがあった。
しかし、うちの店舗でそういった話は一度も聞かない。

「……そういうものなんすか?」
(410字)


このご時世、配信やらサブスクやら充実したおかげで、レンタルビデオ屋で借りるという機会もめっきりなくなったなぁ、と。
(そもそも私が好きな作品は買い切り派というのもありますが)
最近だとVHSが伝わらない人も出てきて、いよいよレンタルビデオという名前の由来さえ怪しくなるのかちょっと寂しい気持ちがしているおっさんでしたとさ。(呪い全く関係ねぇ)

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