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気まぐれショートショート 聴診器が海苔【ウラ話】

高山商事は元々海苔の養殖から始まった。
創業者の高山喜八朗がとある漁村の民間療法を元に医療用海苔の生産事業で成功し、現在に至る。

喜八朗曰く
「上質ナル海苔ヲ健常人ノ胸ヤ背中ニ当テレバ、サザ波ノ音聞コエタリ」
とのこと。以来、海沿いや僻地の病院に問診用の聴診器海苔の卸売り事業を拡大し続けた。これが見事軌道に乗り、高山商事はちょっとした富豪商店となった。また戦時中の医療物資不足にも陰ながら貢献した。

「食フダケガ海苔ニ非ズ」
これもまた喜八朗の信念であった。

そんな高山商事だが、先日のニュースで海外企業に売却されると報道されていた。事実上の倒産である。

近年では社員の制服を一新したり、大規模なインターン受け入れなど何かと話題性を呼ぶ企業展開を続けていたがそれにも限界が来たらしい。

私の祖父も定年まで高山商事で働いていており、
「海苔売ってた頃が最高に楽しかった」が亡くなるまでの口癖だった。

そんな祖父の言葉を思い出しては、私は時々焼き海苔を胸に当ててみる。

「……でも波の音はしないんだよなぁ」
(440文字)


今回裏のお題を使って、表の話のウラ話的なものを作ってみました。
こうした世界観のリンクを考えてみるのも面白いですね。

表の作品はこちら(めちゃくちゃなストーリーです)

企画概要はこちらから


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