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【短編】名も知らぬとある同士

名も知らぬ友よ。
私は君の顔も、素性も、声も知らない。
どこで生まれ、何を見て育ち、何を思っていたのかも知らない。

私が君について知るのは、君はすでにこの世にいないということだけだ。
君の本当の名を知る前に、戒名を知ることになってしまった
愚かな私を許しておくれ。

君に一つ聞いてみたかった。
世界は君に優しかったかい。
君はこの世界を愛していたかい。
美しいものにたくさん出会えたのかい。
かけがえのない宝物を見つけられたかい。

名も知らぬ同士よ。
希望を胸に大きな世界を志した君よ。
僕は君の夢を知らない。
君が出会うべき人を知らない。
なんと声をかけてやればいいのか見当もつかない。

僕はいたって健康で不健全だ。
自分という感覚が朧にしか感じない。
もはや自分自身の形さえも怪しくなってきた。
しかし、未だに生にしがみついている。
卑しいことこの上ない屑だ。

だから今は、私が答えを出すまであがき苦しむバカを、
この無様なさまをどうか向こうで見て嘲笑っていてほしい。

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