【気まぐれショートショート】半笑いのポッキーゲーム

ある日の公園のベンチ、私は大きなため息と共に腰掛ける。

彼女にフラれた。
家デートで彼女の自宅に向かう途中のまさかの事態だった。
白昼夢か何かであってくれと何度も願ったが、彼女のスマホには二度とつながらなかった。

喪失感の中、近くのコンビニで買ったお菓子を一人で広げる。
取り出そうとした1本のポッキーが手からするりと零れ落ちた。
動揺している。

そこに1匹のクロアリが近づいてきた。
思いがけないごちそうに大興奮のようだ。

私はふと「アリでもポッキーゲームってできるんかな」と思った。
ついに現実逃避まで始まったのだ。

するとさらに別の巣穴のやつとおぼしきクロアリがやってくるではないか。
絶好の機会にワクワクしている私。

しかし2匹のアリは案の定というか、両者チョコのついた方にかみついて、「これは自分のだ」と言わんばかりに奪い合いを始めた。

何をやっているんだこいつら。
ポッキーゲームの相手がいない私と
相手がいるのにゲームにならないクロアリ。
何たる皮肉か。
思わず笑みを浮かべてしまった。

(432文字)


現実逃避もたまにはいいか、ということで。
言うまでもありませんが、2匹の争いはアリだから成立するのです。人間でやったら間違いなく「そうはならんやろ」となりますのでご注意ください。

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