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『ぶたぶたくんのおかいもの』

『ぶたぶたくんのおかいもの』

作:絵 土方久功
出版社:福音館書店

<解説>
子ブタのぶたぶたくんはお母さんから、買い物をたのまれました。ひとりでパン屋さんにいってパンを買い、八百屋さんにいくと、からすのかあこちゃんに会いました。こんどはかあこちゃんといっしょにお菓子屋にいくと、こぐまくんに出会い、帰り道はみんな一緒に近道を通って帰ります。お店屋さんの人もみんなユニークな、愉快な絵本です。

福音館書店HPより


この絵本は本屋で見つけて、私が気に入って購入した絵本でした。
とてもシュールな絵で、物語もリズムがあって愉快です。
登場人物は動物が擬人化されているのですが、どこかノスタルジィを感じる懐かしさがあり、印象に残ります。
主人公のぶたぶたくんのお母さんは、花の髪飾りを付けて紫のワンピーススタイル。
子どもにお使いを頼む主婦といったファッションではなく、もしかしてぶたぶたくんはセレブなの?と思えるほど(笑)

ショッキングなのはぶたぶたくんの本当の名前を誰も知らないという事を、物語の冒頭で読者に知らされます。
名前を付けたお母さんでさえ、ぶたぶたくんの本当の名前を忘れてしまったのですから、絵本でなければ何やら事件の匂いがしてきます。

なにはともあれ、ぶたぶたくんはお母さんに頼まれて、初めてのお使いに出掛けます。
買い物が終わったらお菓子屋さんで好きなキャラメルを買っても良いと、ご褒美もありますから、ぶたぶたくんは張り切って出掛けて行きます。

立ち寄ったパン屋さんと八百屋さんとお菓子屋さんでは、それぞれ個性的な店主がぶたぶたくんたちに対応してくれます。
その店構えも昭和の匂いがする懐かしさです。

八百屋さんでは和田アキ子のような風貌のお姉さんが登場(笑)
某テレビ番組の初めてのお使いのように、幼い子どもの健気さや涙は一切ありません。
それは某テレビ番組では大人目線で、子どもの成長をフォーカスしているのに対し、この絵本は子どもの感性に触発するように、個性的な絵と遊び心に溢れているから。

最後の見開きページでは、ぶたぶたくんが歩いた地図が描かれていて、子どもたちはぶたぶたくんが買い物をしたお店を確認したり、池やヘリコプター、かあこちゃんとこぐまくんの家を見つけて遊びます。

こんな個性的で子どもたちの興味をそそる絵を描いた、作者の土方久功さんが気になりました。
日本のゴーギャンと呼ばれるほどの芸術家で、1924年東京都生まれ。
パラオ諸島やヤップ諸島のサトワヌ島に渡り、原住民と共に生活しながら彫刻の制作と民俗学の研究をし、多くの作品と著書を残しています。
絵本には「おおきなかぬー」「ゆかいなさんぽ」など。
この絵本は1970年発行で、50年近く愛され続けてきている絵本です。
懐かしさと南国の雰囲気を感じたのも、土方久功さんならではの画風で、子どもたちに媚びない風格があり、ロングセラーで愛されている所以だと思います。
一言で表現するなら、エモい
癖の強い、でも何度でも手に取りたくなる中毒性のある絵本だと思います。




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