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無条件に受け入れてくれる安心感

『くまのコールテンくん』
作:ドン・フリーマン
訳:まつおか きょうこ
出版社:偕成社

<みどころ>
「はやく、誰かが自分をうちにつれていってくれないかなあ」
大きなデパートのおもちゃ売り場に並んでいるぬいぐるみや人形は、みんなそう思っています。くまのコールテンくんもそう。でも、緑色のズボンをはいた小さなくまのこを買っていこうとする人はなかなかいません。
そんなある日、コールテンくんは自分のボタンが片方とれていることに気がつきます。そして夜になると、デパートの中を探しに出かけるのです。初めてのエスカレーターや家具売り場。大きなベッドに警備員さん……。 結局ボタンは見つからなかったのだけれど、次の日の朝、コールテンくんのところに女の子がまっすぐやってきます。昨日もやってきたあの子です!
好奇心旺盛なくまのコールテン君と、彼を一目で好きになり、自分のおこずかいをはたいて買いに来た女の子との心のふれあいを描く、アメリカ生まれの傑作絵本。
「ぼく、ずっと前から家で暮らしたいなあって思ってたんだ」
コールテンくんの素直な言葉の一つ一つやその表情や行動、どれもがとっても愛らしく、読んでいる誰もが彼の事を好きにならずにはいられなくなります。幸せな出会いって、見ているだけでも嬉しい気持ちになれるんですね。

磯崎園子 絵本ナビ編集長


誰にも幼い頃にはお気に入りのおもちゃがあったと思いますが、私は新生児くらいの大きさの抱き人形が特にお気に入りでした。
寝かすと瞼が閉じ、起こすと開く。
胸のボタンを押すと、いくつかのセリフがスピーカーから流れてくるようになっていました。
スピーカーはしばらくして壊れてしまい、お人形とのおしゃべりはできなくなりましたが、遊ぶ時も夜寝る時も一緒。
服がボロボロになった時は、母が新生児の服を買ってきて着せてくれました。
顔はプラスチックでできていて、手足はソフビ。胴体は布製で中身は綿が詰められていたので、抱き心地が柔らかく抜群でした。
小学生も高学年になると人形遊びからは卒業しましたが、捨てるには忍びなく、結婚する時までは自宅にありました。その後さすがに母が処分したようでしたが、人形供養をしたかどうかは定かではありません💦

この絵本ではリサが、コールテンくんの服のボタンが取れていて欠陥があっても、一目惚れし「この子じゃなくちゃダメ」と、お小遣い全部を使って迎え入れたように、おもちゃと人間との間にも心の交流があるのかもしれません。

私の抱き人形のスピーカーが壊れて、おしゃべりできなくなっても、くまのコールテンくんのボタンが取れていて欠陥品だったとしても、そこには何の問題もありません。
たとえ欠陥があっても「好き」という気持ちが消えることはありません。
むしろ欠点があった方が愛おしく、大切な存在に思えてきます。
それは自分にも欠点があり弱い部分があって、共感できるからかもしれません。

作者は最後にくまのコールテンくんに、こんなセリフを言わせています。

「ともだちって、きっと きみのようなひとのことだね。」
「ぼく、ずっとまえから、ともだちが ほしいなあって、おもってたんだ。」

この絵本は、無条件に自分を受け入れてくれる安心感と、傷ついている相手を思いやる優しさを疑似体験させてくれる、世界中で愛されるロングセラー絵本です。

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