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卵巣予備能と女性の年齢が重要

すべての自治体ではありませんが、保険適用が始まった後でも、予防的な意味で不妊検査を受けることに対して、助成金を出しているところがあります。

東京都もそうですね。

では、もし、その5万円程度の助成金で何を調べるべきかと問われたら、
何を受けるべきだと答えるでしょうか。

僕は迷わず、

女性の場合はまずはAMH検査、男性は精液検査を受けましょう。

とお答えします。

卵巣の予備能力を測ることで知られる、採血でできてしまうAMH検査ですが、今回新しく出ている論文でも紹介されています。


The number and rate of euploid blastocysts in women undergoing IVF/ICSI cycles are strongly dependent on ovarian reserve and female age.Antonio La Marca et al.Hum Reprod . 2022 Aug 25;deac191.

日本語に訳してみると、
「体外受精や顕微授精の治療を受けている女性の正倍数性胚盤胞の数と割合は、卵巣予備能と女性の年齢に強く依存しています」
というタイトルになります。

女性が妊娠をするためには、正倍数性の胚盤胞が必要です。
それが治療をして得られるかどうかに関わっているのは、AMHと女性の年齢であるとこの著者は主張しているということですね。

詳細を見てみましょう。

この研究では、合計 847 組のカップルが この研究に参加しました。
カップルの主な特徴は

・女性の年齢(歳) 38.48 ± 4.65
・AMH (ng/ml) 2.35 ± 2.27
・女性のBMI (kg/m 2 ) 22.63 ± 3.7
・男性の年齢(歳) 40.82 ± 5.69
・男性のBMI (kg/m 2 ) 25.86 ± 3.15
・正常な形態の精子 (%) 7.54 ± 2.34
・運動精子 (%) 39.79 ± 17.1
・原発性不妊症のカップル (%) 62
・二人目不妊症のカップル (%) 38

というような点が挙げられます。(抜粋)
個人的には、年齢もAMHもBMIも正常な方が多く(アメリカではもっと肥満が多い印象がありましたが・・・)、男性不妊の要素では運動精子率が最新のWHOの基準では42%なので、低いけれど正常形態精子が多いのでセーフなのかなと思うところです。

 PGT-Aを希望した理由の内訳として
・母親の高齢化 (31%)
・反復着床不全 (27%)
・重度の男性因子 (17%)
・および胚に関する情報への希望 (25%)

とのことです。
平均年齢が38歳で母体の高齢化という理由が第一位になるというところは日本と違いがありそうですね。日本では高齢化と主張され始めるのはもう少し遅い印象があります。また、胚に関する情報への希望、というのは日本では難しいところかと思います。

このプログラムに参加した847 人の患者のうち、191 人の患者が移植可能な正倍数体胚盤胞を少なくとも 1 つ持っていました。(25%程度)
としています。

詳細は以下のようになっていますが、読み飛ばしていただいても構いません。

卵巣刺激後、カップルの 94.9% に少なくとも 1 つの成熟卵母細胞がありました。回収された卵母細胞が 4 つ未満の患者として定義される卵巣反応が不良である方の割合は 36.8%。
胚盤胞が得られなかったカップルの割合は 59.9% でした。
347 人の患者から合計 1068 個の胚盤胞が得られ、正倍数性胚盤胞の割合は 33.6% でした。
胚盤胞が少なくとも 1 つある患者のうち、55% に少なくとも 1 つの正倍数体胚がありました。

そして、この方々から得られたデータを機械学習させ、正倍数性の胚盤胞が得られる確率、得られる数との関係が強い要素として導き出されたのが
AMH女性の年齢であったというわけですね。

女性や男性のBMIについては、研究をしていくと実はこの正倍数体との関係性は不明確であると伝えられていますし、精子も大きな影響を与えるに至っていないことが報告されています。(無精子症などの重度の男性不妊は別です)

AMHと女性の年齢がそれぞれどう関係があるのか。
AMHは正倍数体の胚盤胞が得られる確率と得られる個数に対して、正の関係。(AMHが上がるほど確率も個数も増えていく)
女性年齢は負の関係があるとしています。(加齢する程、下がっていく)

この研究では更に予測モデルについて、より専門的に紹介していますが、患者さんに知っておいてほしい情報としてはここまでで良い気がします。

現時点で重要なこととしては、AMHと年齢がとにかく重要であること。
特にAMHは、個人差の大きなものです。

人生設計を考える前に、AMHを知らないと全く違う結果になることも考えられます。

もちろんAMHが1を切っていても、年齢が若ければ妊娠・出産することはできる方も多くいらっしゃいますが、じゃあ2-3人に子どもを得られるかというと必ずしもそうではないと思います。

自分の身体の特性をしっかりと理解し、自分の人生設計を考えましょう。
そのためにも、まずなんの検査から?と聞かれたら僕は、

女性はAMH検査、男性は精液検査」

と何度でも伝えたいと思います。

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