体重と不妊や妊娠 -痩せ-
妊活をしている方から
なにか自分でできることはないですか?
というセルフケアに関する質問が多くあります。
様々にできることはありますが、その中の最も大きな一つが
「体重管理」
です。
結論から言えば、体重は肥満も痩せもよくないのですが、
特に日本で多く見られる「痩せ」について紹介します。
痩せの美学
日本やアジアでは未だに痩せの美学はかなり根強く存在していて、
芸能人やモデルさんでも
痩せている=スタイルいい
というような認識も強いように思います。
美しいかどうかは個人の好みなのでさておき、
健康かどうか、という点では世界的に警鐘が鳴らされています。
イタリア、スペイン、アメリカ、イスラエル、フランスなど多くの国々で、
痩せすぎモデルの心身の悪影響が多いことを受けて規制を出しているほどです。
確かに、痩せ、というのは健康に対して悪い側面があり、
同じように妊娠する力に対しても影響を与えることが危惧されています。
痩せ、って
日本肥満学会によれば、BMI([体重(kg)]÷[身長(m)]÷[身長(m)])で18.5未満の方が痩せ、逆に25以上が肥満にあたります。
22がベストと考えられているようで、この状態が最も病気になりにくいとされます。
ちなみに世界的な肥満の定義はBMI30以上で、世界各国、特にアメリカでは肥満が国家的な問題にもなっています。
痩せていることで、PCOSになりやすいことがアジア人の特徴としても挙げられていたり、月経困難症を伴う方も多くいます。
痩せの方に見える特徴
2017年頃のデータなので、少し古いものですが、セミナーでご一緒した
https://www.luvtelli.com/ さんが以前に行ったアンケート結果を今でも鮮明に覚えています。
その内容を大まかに要約すると、
①エネルギー摂取量が少ない(≒食べてない)
②体脂肪率が高い(≒筋肉が少ない)
という特徴が出たというものでした。
仮に摂食障害ということになれば、これは精神的な疾患としてのリスクが極めて高いことで知られています。(他の疾患に比べても自殺による死亡率もとても高い)
また、筋肉が少ないということになると、基礎代謝が低くなります。
そうすると、「冷え」などの慢性疾患につながる可能性も出てきます。
では、筋骨隆々のアスリートのようであれば、BMI低くてもいいのかというとそうでなないのですが、ここでは一般的に食事の量と運動の量がいかに不足しがちなのか、という点にご留意いただければと思います。
補足 食事について
では、食事はどうすればよいか。
①規則正しく食べ、必ず3食摂ること
4-5時間おきに食事をとるように心がけること、また就寝から3時間前には食べ終わっていること。
②バランスのよい栄養
とくにたんぱく質については不足しがちと言われます。
肉、魚、卵、大豆食品など主要なたんぱく源すべてが不足しているとも言われています。簡単に済ませるだけでなく、「主食」をきちんととることも大切です。
最近では気軽にプロテインで補うこともできますが、やはりベストは食事からということです。
③冷え対策は忘れずに
冷えや低体温と関係のある方は、栄養素のみならず体を温めることを忘れてはいけません。
山芋・かぼちゃ・ごぼう・にんにく・にんじんなどがよいとされるほか、
肉よりも魚の方が効果的ともいわれています。
特に魚を多くとっている人は、AMH(卵巣予備能力)が高いという報告もあるほどです。魚を効果的に摂取するようにすることは冷えの面でもたんぱく質も面でもよいとされています。
痩せていることでの出産、子どもへの影響
実はこれまでの様々な研究によって、例えばダイエットによる不規則な食生活、不十分な栄養状態のまま妊娠したりした場合、胎児へ十分な栄養が供給されないということだけでなく、遺伝子の働きを調節するメカニズムにも変化を与え、生活習慣病にかかりやすくなることがわかっているのです。
一般的には、成人病(生活習慣病)胎児期発症起源説、などとも言われます。これはイギリスのディヴィッド・パーカー教授が1980年代に提唱したもので、糖尿病や高血圧症などの70%は胎児期の栄養不足による原因となっているのではないかと言われています。
低出生体重児
2500gを下回って生まれてくる赤ちゃんを低出生体重児と呼びますが、多くの場合、正期産児とほとんど変わらない成長予後となることが確認されているものの、注意欠如多動性障害、学習障害、聴力障害などになりやすくなることが確認されています。
その低出生体重時の比率が、1980年には5.2%、20年後の2000年には8.6%、2006年には9.6%と増加しており、いまでは10人に1人が低出生体重児と言われています。ましてや、双子ちゃんになるとそのリスクはより一層顕著になります。
低出生体重児は、心筋梗塞や心臓病のリスクが高いほか、メタボリックシンドローム、虚血性心疾患、高血圧、糖尿病などの発症リスクが高いとされています。
メタボ?体重少ないのに?
と思われるかもしれませんが、これは皮肉なもので、
少ない低体重で生きていくように形成された体質であるにも関わらず、
栄養素に満ちた現代ではその子にとっては過剰な栄養を供給してしまうことになり、メタボになりやすくなるというメカニズムがあるということのようです。
痩せの母体へのリスク
痩せていることで、早産や切迫早産につながるケースは大変多いことで知られています。帝王切開の確率も通常の2倍高くなるとも言われます。
太りたいのに太れない、という人も非常に多い中で、
太って下さい!
と言いたいわけではありませんが、
無理に痩せようという努力は心身、そして赤ちゃんにとっても良くないということをご理解いただければと思います。