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腰椎分離症とバイオメカニクス

はじめに

腰椎分離症は日本人の5.9%の頻度で発生すると報告されています。スポーツ選手ではもっと多く、スポーツ選手の10%~30%で発生しているといわれています。スポーツ活動では特に腰椎に負荷がかかることが多く、同じ動きを反復することで分離症が生じます。

特に疲労骨折である腰椎分離症は腰椎の運動負荷が大きく関与しており、腰椎のバイオメカニクスから病態を考えることが重要となります。

腰椎分離症の発生メカニズム

腰椎分離症は、運動によって繰り返される運動負荷により、関節突起間部に生じる疲労骨折です。

分離症発生には疲労の原因となる腰椎運動が問題となります。腰椎運動中に関節突起間部にかかるメカニカルストレスは腰椎が進展した時に最も生じています。回旋運動では対側の関節突起間部(左回旋時の右側)に応力が生じてたとの報告があります。

腰椎の運動の中では伸展運動に加え回旋運動により分離症を生じやすいです。

関節突起間部に応力が集中する部位(腹側。背側)は屈曲以外すべての運動形態で背側より腹側が高く、最大応力が生じるのは伸展時の腹側骨皮質で背側の2倍の応力集中を認めたと報告されています。

腰椎分離症は腹側に張力による骨折が生じ、その後背側へ骨折が進行すると考えられます。

初期の分離症を診断する上では関節突起間部の尾側に注目することが重要

柔軟性が及ぼす影響

最近ではスポーツ障害において脊椎の柔軟性が注目されており、体幹‐骨盤の柔軟性獲得が分離症の再発・予防に重要と考えられています。

腰椎の正常モデルと全ての靭帯伸張性を50%低下させて硬くしたモデル(LS)と50%増加させて柔軟にしたモデル(LR)とすべての靭帯とさらに椎間板の線維輪の伸張性を50%減少させたモデル(LDS)、増加させたモデル(LDR)を比較した研究によると、やわらかい脊椎では小さい力(トルク)で硬い脊椎では大きい力が必要であることが報告されています。また、分離症が好発するL5関節突起間部の応力値は正常モデルに比べ、「LSモデルでは31%、LDSモデルでは52%上昇しており、LRモデルでは13%、LDRモデルでは23%低下した」とされており、硬い脊椎の応力が高く、柔らかい脊椎の応力が低くなっていました。脊椎の柔軟性が低下すると関節への応力が上昇するため、分離症が生じやすくなります。

コルセットによる保存療法

分離症の治療法は病気によって異なります。CTとMRIの所見から分離症は初期、進行期(椎弓根浮腫あり、なし)終末期に分類し治療判断をおこないます。硬性装具を用いた保存療法を行った場合、それぞれの癒合率と平均癒合期間は以下の通りです。

初期:94%・3.2か月
進行期椎弓根浮腫あり:64%・5.4か月
進行期椎弓根浮腫なし:27%・5.7か月
終末期:0%

骨癒合率の高い初期と進行期椎弓根浮腫ありでは保存療法を選択し、進行期椎弓根浮腫なしと終末期の場合は疼痛管理を選択します。

椎弓根に浮腫があるということは、炎症症状の証があることで、最近損傷したものと判断できるから
→慢性期でなれば治る可能性がある

分離症が完成してしまうと回旋可動性は正常時の2倍以上になり、回旋不安定性が引き起こされます。そのため、分離症の保存療法で骨癒合を目指すのであれば伸展運動と回旋運動をしっかりと制限できる硬性体幹装具が適しています。

まとめ

腰椎分離症は正確に病態を把握して、患者に応じた治療が必要となります。保存療法では装具療法が占める役割は大きく、目的に応じて適切な体幹装具を選択することが重要です。

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