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「忘れ得ぬあの本」day7「桃尻語訳枕草子」

「枕草子」と「源氏物語」。清少納言と紫式部。古文で勉強する平安女流作家の双璧ですが、源氏物語は長編小説ということもあり、また文法的にも主語がほとんど略されているので、「訳す」ように読み進めてもほとんどパズル。与謝野晶子が訳した「与謝野源氏」や、谷崎潤一郎が訳した「谷崎源氏」など、現代語訳になっても全部読み切るのはそれなりに大変です。

では「枕草子」は? こちらは短文エッセイだし、「春はあけぼの」で始まるリズム感の良い文章は、読んでいてわかったような気になる。でも、「わかりそうでわからない」。ある意味、「訳してもよくわからない」。そこを、「なーるほど、そういうことね!」と氷解させてくれたのが、この桃尻語訳なんです。

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これが出た時、私は、現役の時にこれがあったらなーって心から思ったものです。清少納言を、まあ林真理子さんみたいな人と想定して書かれているんですね。キャリアウーマンの井戸端会議、みたいな感じで語られていきます。私が一番好きなのは、時のイケメンが二人で「青海波」という舞踊を踊って披露する。もう、晴れがましいっていうか、ほんとに素敵に描写されてて、色彩が浮かび上がってくるようでした。

そう。この本、「色」の描写がめちゃくちゃ詳しい。「浅黄色」「萌葱色」「茜色」みたいな和の自然色がどんな色で、御曹司の今日の装いは、上下のコーディネートがどんな感じか、お姫様の十二単の襟元や袖は、どんな重ね方でチョイ見せしているか、そんな「ファッションセンス」を体感できるのが楽しい! 平安貴族も現代の私たちも、同じようにウキウキしたりウワサ話をしたり、しょげたり悲しんだり淡い希望にすがったりするんだな、と体感できる本です。

(上)(中)(下)と3冊ありますが、ほんとにライトに書かれているので、古文が嫌いな人にもおすすめ。だけど、その当時の政治背景や歴史的な流れなんかもわかりやすく説明されているから、歴史や古文が好きな人にもおすすめ。とりあえず、(上)を読んでみて!

「忘れ得ぬ本」シバリの7daysは本日でおしまい。次回からは、「目からウロコの本」をお送りします。




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