演劇的には『行間を読む事』と『忖度』は違うと言いたい。~制作の目線で~
より正確にいうならば、演劇的というよりも演技はという話かもしれない。
役者を目指して養成所に通っていた時のころ、毎日のように言われた
「台本の行間を読め!」
当時、意味の良く分からなかった私は何故か軽ギレしながら「いや何言ってるかわかんないけど、じゃあその行間の読み方を教えろよ!」と心の中でブツブツ呟いたものです。
今更ですけど、これって基本的に専門技術なんですよね。
簡単に言うと
「文に直接書いていない主張や心情を読み取る事」なんですが、
書けよって思いません?
ではどのように読めば正解かと言われると一概には言えないのですが、
大事なのは文面で描かれているシチュエーションを一度想像して、その上で状況や感情を分析する事です。正解がいくつもあるというのが一番近い答えです。
日常でも例に漏れず、人の感情は1つの答えだけではありません。様々な想いや感情が入り乱れて、結果的に本人が出した答えが「発言」です。
だから、台詞は必ずしも本当の事とは限らないわけです。
台本に委員長の台詞「あんたの事なんか…スキじゃないんだからね!」
ト書きで 『委員長、怒りながら走り去る』 と記載があった場合は
誰が何と言っても107%スキでしょう!?
歌詞は案外直接的なものが多く、モー娘。のサマーナイトタウンなんかは
『心かくせない 大キライ 大キライ 大キライ 大スキ』と最後に言っているので読む必要がありません。
世代!!
これは、歌詞は内面や心情を歌として届ける事が多いからです。
台本は「会話」が書かれているので、感情やシチュエーションを推し測って想像する事が必要になるわけです。
これが舞台の面白いところで、各役者によって台詞の解釈が分かれます。
例えば、「絶対に振り向くんじゃない。走れ!」という台詞に対して、
一番強く思っていることは何かを想像してみましょう。
『決して振り向かず全速力で逃げて!お願い!』なのか
『アイツと1対1で戦いたい…!』なのか
『君の事、本当は好きだったんだぜ…!あばよ!』なのか
『そっちに走れば…お前は死ぬ!!むしろ死ね!!』なのか
いくらでも想像できるわけです。
これとシチュエーションを合わせて、自分が一番しっくりくるものを選択します。
対して、忖度(そんたく)はどのようなものでしょうか。
私の大好きなgoo辞書で検索すると
そん‐たく【×忖度】 の解説
[名](スル)他人の心をおしはかること。また、おしはかって相手に配慮すること。「作家の意図を忖度する」「得意先の意向を忖度して取り計らう」
と書いてあります。文面では一見「台本の行間を読む」ことと同じように見えますが、大きく違う部分があります。
それは、『配慮』です。
場を読み、相手の空気を読み、これが一番いいんじゃないかと総合的に判断した結果です。自分の感情で出した答えではありません。
つまり、真実の力が薄いです。
あなたは舞台の上で、本物と偽物、どちらが観たいですか?
キャスティングする立場の人間は、この解釈が『作品性』と『演出意図』が合う人をパートナーとして選びます。
『忖度が上手い人』も最初は選択されますが、最後まで生き残るのは『行間を読む能力が高い人』です。なぜなら、面白いのはその行間の読み方だからです。
だから、俳優は舞台の上で忖度をしません。
行間を読んだ稽古の結果を披露しているのです。
その上で、舞台上でトラブル等起こった場合に初めて忖度が必要なのです。
もちろん事務所の力や素敵な容姿は、俳優が仕事をもらうための大きなファクターです。しかし、自分の努力で引き上げられる部分は『行間を読む』能力だけです。これが『才能を磨く』作業です。この『才能を磨く』作業に絶えずチャレンジしている俳優を制作は求めているのです。
こう書くとあたかも私が全て把握しているような内容になってしまいましたが、私もあの時森の奥深くで聖祖を黄泉孵らせる儀式を拝見していなかったら決して真実に辿り着くことは無
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