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ショートショートまとめ

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短いお話たち
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記事一覧

コキの神はかく語りき

人間たちは愚かなのでこの世の樹をほとんどすべて切ってしまったという。それで仕方がないので…

瀬戸際  歩
2年前
5

カップ・アンド・ソーサー

「イネスコがないの」 芝居がかった口調でアガサがつぶやくので、フロアの一同は皆、作業を止…

瀬戸際  歩
2年前
6

ハナギレ先生とタチキリ君

本を届けにいくと、ハナギレは眠っていた。 店主のくせに居眠りとは不用心な……とは思うが、…

瀬戸際  歩
2年前
4

今日はなんの日?

家を出て5分もしないうちに違和感を覚えた。 目の前の人も、遠くを歩く人も、すれ違う人も。 …

瀬戸際  歩
2年前
6

おかしな1日

『花を持って歩くだけのカンタンなお仕事です』 登録していた派遣サイトからこんな題名の募集…

瀬戸際  歩
2年前
5

世界フラワーデー

街中が花で溢れている。 都会の街角の、忘れ去られた茶屋の木格子越しに外を眺めながら、彼ら…

瀬戸際  歩
2年前
4

シツモンの国

この国の人々は、質問してばかりいる。 『これがしたいのですができますか?』 『あれもしたいのですができますか?』 どれもこれも法律で定めてあることばかりなのに、どこまでも連なるあの織物を読む人はどこにもいないらしい。 「こちらはこのような方法で可能です。」 「申し訳ございませんがこちらは受け付けておりません。」 失礼のないように、ひとつひとつ丁寧に返事をする。顔も見たことのない相手に対して、何が失礼で何が失礼でないか、そんなことはわかりもしないのに。 すべての質問に

肉の家

ママはぼくに、むぎの色のジュースばかり飲ませてくれる。 しゅわしゅわしているけどそれは苦…

瀬戸際  歩
2年前
9

豪雪カフェとバケカレー

あたり一面雪景色だ。 昨日は晴れていたのに今日は朝から吹雪だった。 山の天気は変わりやす…

瀬戸際  歩
3年前
19

『三角耳は威風堂々』

辿り着いた町には、ニンゲンがいなかった。 どの店もガランとしているが入り口には"営業中"…

瀬戸際  歩
3年前
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チロルの不在

チロルが帰ってこないんだ、と瀧川が言う。 昼休憩のことだった。 二人で煙草を吸いながらコ…

瀬戸際  歩
3年前
6

彼女と私とブルーベリージャム

LINEを開くと、彼女からメッセージがきていた。 “明日、会える?” 絵文字もスタンプもない…

瀬戸際  歩
3年前
10

真夜中秘密倶楽部

街外れの森をどんどん歩いて行ってみてください。 木々の合間をスポットライトのように落ちる…

瀬戸際  歩
3年前
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彼女と猛暑とアイスティー

今日は猛暑になるらしいよ、と言うと、じゃあ散歩に行きましょうか、と彼女は言った。 食パンにバターを塗った簡単なトーストを朝食にして、歯を磨き、顔を洗い、清潔なシャツを着る。ちょっと迷ったが足元はチノパンにした。 彼女はノースリーブのワンピースに、たしか去年どこかの雑貨屋で一目惚れして買った大ぶりの麦わら帽子をどこからともなく出してきた。髪は簡単に結ってあって、なんだか夏という感じだった。 もう出られるものだと思って玄関でサンダルを履いてみたけれど、なかなか出てくる様子がない。