note10 アイデアの正体とは(2)~良いアイデア、悪いアイデアの見分け方
※この記事は2012年公開のブログ記事を一部加筆訂正したものです。
前回のおさらい
こんちゃーす!かいぽんだよ。
今回は、前回投稿した記事「アイデアの正体とは」の続編となっております。なお、このシリーズは今回も含めてあと3回ぐらい続くっぽいよ(たぶん)。長編だなー、たいへんそう・・・。
アイデア構造ツリー
前回は、
アイデア = 目的 + 手段
という話をしたのでした。この構造をこのような図で表します。
アイデア構造ツリーの基本形
この図はとってもシンプルですが、今後も何度か出てくる基本形なので、ぜひ覚えておいてくださいね!
アイデアの良し悪し
あるアイデアがあって、そのアイデアが良いか悪いかなんて、ぶっちゃけ見りゃあすぐわかるだろ……
まあそのとおりなんですが、良いものにせよ悪いものにせよ、次にその評価を人に伝えなければならないことがほとんどです。
そのときに、なぜそのアイデアが優れているか(あるいは見所がないか)を、理路整然と説明できねばなりません。判断はフィーリングで行なったとしても、説明はロジックでないと、説得力が出ないのです。
そこで、手順立ったアイデア評価手法が有用になってきます。発想力はゲームデザイナーにとって重要ですが、アイデアを的確に評価するちからはもっと重要です。
アイデアの形式になっているか判定する
まずその”アイデア”が、目的と手段に分割されているかどうか判定します。どちらかあるいは両方に欠けてるようなら、可能な範囲で補足するなりして、とにかく目的+手段の形に整える必要があります。
もしそれができないなら、そいつはアイデアの体をなしてませんから、評価以前の問題です。その”思いつき”は、一旦心の引き出しにしまっておくか、ゴミ箱にぴゅーです。
エジソン電球の例
前回はコロンブスの卵を題材にしましたが、今回はエジソンの電球が題材です。白熱電球を作るぞ!というエジソンのアイデアは、次のような目的と手段で構成されています。
エジソンの白熱電球
ちなみに白熱電球を発明したのはじつはエジソンじゃなくて、エジソンは白熱電球を長寿命に改良して実用化した人なんだって。へー。
アイデアの評価手法
ちゃんと目的+手段というアイデア形式になっていたら、そこでやっとこさまともな評価が可能となります。その評価は次の2段階で行えます。
第1関門:”アイデア”が論理的に成立しているかどうか?
第2関門:”アイデア”がどのぐらい目新しいか?
アイデアであるかぎりは、やっぱり新規性ってのが大事なことが多いので、今回はそこを重視した評価手法として説明しています。
本当はアイデアの現実的な実現性とかコスト対効果だとか市場性だとかも評価基準になってくるとは思いますが、そこまで踏み込んだ判断は個別案件となっていくので、ここではその前段階として、そのアイデアがどの程度斬新か?(見込みがあるか?)ってところまでの評価手法の説明にとどめまーす。
1.アイデアとして論理的に成立してるかどうか判定する
目的と手段の組み合わせが、ちゃんと整合性をもって成り立っているかどうか。これをチェックするフェーズです。
この判定は簡単で、目的+手段の流れを逆さまにすればすぐチェックできます。わお!
逆さまにしてチェックする
さかさまにすればイカサマがわかる!うまいこと言う!
その手段(過程)で目的(結果)が達成できる、という因果関係が成立していれば第1関門はパスです。
もしここで論理矛盾を起こすなら、たとえば「桶屋を儲けさせるために、風を吹かす」をいうアイデアがあったとして、風が吹いたら桶屋が儲かるのか?って因果関係を論理的に評価し、苦しいわwそりゃねーわなwwwてなったら、アイデアとしては成立してませんので残念ながらゴミ箱にぴゅーです。
もうそれ直接ねずみを放って桶をかじらせたらよくね?
2.そのアイデアがどのぐらい目新しいか評価する
畳とアイデアは新しいほうが良い!「目新しい=良いアイデアに違いない」という基本原理に従った判定を行いますよ!まあほんとは一概にはそういえないかもですが、こまかいことは言いっこなし!
ということで、そのアイデアの新規性を評価するにはどうするか。
それにはアイデアを構成する目的と手段の両者について、それぞれ陳腐(ありがち)なのか、斬新(目新しい)なのかを見ていけばよろしいです。
その組み合わせは以下の4ケースとなります。(陳腐さや斬新さにはアナログなグラデーションがあると思いますが、話を簡単にするためにここではデジタルで考えます)
A ありがちな目的 + ありがちな手段
B ありがちな目的 + 斬新な手段
C 斬新な目的 + ありがちな手段
D 斬新な目的 + 斬新な手段
表にするとこうなります
以下にそれぞれのケースの具体例や見込み度を解説します。
各パターンの説明
A ありがちな目的 + ありがちな手段
普通です。”シューター向けに弾幕シューを作る”みたいなごく一般的なタイプのアイデアです。悪くはないですが良くもない。そのへんにごろごろころがってる。いうほど新規性とかはないね、というかんじです。現状の市場規模以上のヒットはない、そんなタイプです。どっちかというと捨てた方がいいですね。ゴミ箱へぴゅーです。
B ありがちな目的 + 斬新な手段
見込みがあります。ちょっと新しい。エジソンの白熱電球はこのタイプのアイデアです。(当時すでにオイルランプやガス灯は存在していたが、電気で明るくするところに新規性があった)
市場シェアを奪ったり、市場自体を押し広げるようなヒット商品はこのタイプのアイデアが多いです。新しさと手堅さのバランスがとれてるタイプといえるでしょう。
C 斬新な目的 + ありがちな手段
やや見込みがあります。任天堂がいうところのいわゆる”枯れた技術の水平思考”がこのタイプです。このタイプのアイデアは、ハマれば新しい市場を生み出し、爆発的大ヒットする可能性があります。既存手法を活用するため実施も簡単です。ただしコケるときは盛大にコケます。目的の斬新さに依存するでしょう。その目的の斬新さが世の中や市場に必要とされるものかどうか。
「新しいアイデアとは、新しい場所に置かれた古いアイデア」などの格言がこれに相当します。
D 斬新な目的 + 斬新な手段
注意が必要です。というかやめとけ。一見新しいことづくめで良いような気がしますが、ちょww斬新すぐるwwwという結果になりがちです。たとえば3Dテレビとかですね……(合掌
よくわからん目的を、なんともわからん手段で実現してみせる。目的も斬新なら手段も斬新すぎる。なにもかもが新しすぎてもう一般人には理解不能です。パルスのファルシをルシするためにパージしてコクーンする。よほどの天才以外には意味わからん。
ただ、ウォークマンなどのように、人類の歴史を変えるようなヒットになる可能性も秘めてはいます。なので、このタイプのアイデアには慎重に取り組む必要があります。基本まあダメアイデアですけどね。過ぎたるは及ばざるが如し。なにごともやりすぎないことです。
ウォークマンは「音楽を持ち歩いて聴く(かつてない目的)」「超小型テープレコーダーを新たに作る(これまでにない技術手段)」という、なにもかもが斬新な商品でした。当時の音楽の聴き方に革命をもたらし、世界を変えました。ただし元々そこには音楽市場という大きな受け皿がすでに存在していました。音楽市場を新しく創造したわけではありません。
まとめ
アイデアは、それが論理的に成立しているか、またどのA〜Dのどのタイプの目新しさをもつか、こう考えるととたんに理解しやすくなるかと思います。アイデアの新規性を判定するにあたって、目的と手段の新しさや優位性を個別に判定する、というのがぼくのおすすめするメソッドです。
大量のアイデアをすべてこのように評価するのは大変なので、もちろんフィーリングでふるいにかけて結構です。そして目星をつけたアイデアについては、このように分解して分析評価することで、なぜそのアイデアが優れているのか?という説明が可能な、強固な論理基盤を構築しやすくなるでしょう。
いままでは、「なんとなく」で評価していたアイデアも、このような目線で見てみるとわかりやすくなるんじゃないかなーと思ってます。どうでしたでしょうか。
次回予告!
アイデアってさ、目的とか手段とかひとつずつってわけじゃないよな?という疑問が湧いてくる方もいらっしゃったかと思います。次回はそのへんのお話しをするお!アディオス!
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