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【意外と知らない】ゲームプランナー職の種類まとめ

まえがき

ゲーム制作における企画職「ゲームプランナー」。現代では職務範囲が細分化され、高度化専門化が進んでいます。例えばシナリオライターとかレベルデザイナーとか。
そのため、ひとくちに「プランナー」と呼ぶのはかなり大雑把なくくりとなっており、不便な局面も増えました。

プランナー志望者や、現役プランナーのキャリアパスを考えても、どの職務方面を目指すのかをある程度絞らないと、身につけるべきスキルが多すぎます。また、その人がどんなスキルを持っていてどんな職務を担当できるのか、説明や把握がしやすくあるべきです。

この記事では、プランナー職の細分化された専門領域職務の呼称と中身を列挙し順に解説します。

その前に! ちょっと頭に入れておくと便利な前知識。制作ライン中でのプランナー職の立ち位置について。

<制作ラインの流れ>

仕事とは、「誰かからタスクを受け取り、作業し、その結果を次の人へ受け渡す」ことで成り立ちます。

その流れの中で、プランナーの立ち位置は「上流工程」「下流工程」の2箇所にそれぞれ存在します。

上流工程は作業タスクの起点です。プランナーは詳細なゲーム仕様等、タスク指示をまとめ、下流工程へ発注します。キュー出しです。

下流工程では、上流からタスクや作業データを受取り、付加価値を付け加えて次の工程へ送り出します。
各担当者が協力し、タスクをバケツリレーで次々受け渡すイメージですね。そうして河口に達すればゴール。タスクが終着し成果物の完成となります。
プランナー職はその職域によって上流下流のどちらの受け持ちも存在します。

必ずしもタスクの起点がプランナーとは限りません。チームの誰もが作業起点の上流になったり下流になったり流動的です。パスの起点もパス回しも、誰がゴールするかも時々の状況によります。サッカーみたいなものですね。

ゲームの制作工程は川の流れです。支流や分流もダムもあります。ただ洪水だけは避けよう。堤防決壊もってのほか!

では、以下よりプランナーにおける各職務を紹介解説します。


1.ゲームデザイン(メカニクス設計)

ゲーム全体の仕様設計を行ないます。
ゲームタイトルを成立させるためのすべての構成要素とゲームルールの立案整備を担当します。「グランドデザイン」「ゲームプレイ(体験)」「コアゲームメカニクス」などゲーム仕様を設計し、作業起点として下流工程にタスクを渡す役割です。

メカニクス設計の具体例:
「キャラ操作方法」「主人公アクション」「ゲームルール」「バトルシステム」「成長システム」「ゲーム内ギミックとアイテム」「画面遷移フロー」「UIの要件定義」「イベント設定」「ゲーム進行チャート」「マネタイズ設計」「チュートリアル仕様」などなど。
いっぱいあるな……大規模ゲーム時代ではひとりで全部やるの無理レベル。

2.ワールドデザイン(世界観設定)

ゲーム世界観の設定等を行ないます。素っ気ない剥き出しのゲームメカニクスに文芸的な意味づけを行ない、ゲームの魅力的な印象やゲーム体験を付け加える職域です。
ほとんどはディレクター、ゲームデザイナー、シナリオライター、アートディレクターなどが担うケースが多いです。独立した職務とみなされていませんでした。

ゲームを素敵な世界観でお化粧し、魅力を上乗せする。どのような世界観を合わせるか、その「スキン」の違いによって、例えば単なる陣取りゲームが「将棋」になったり「チェス」になったり。印象やターゲット市場が変わることになります。
ゲームデザインが先かワールドデザインが先かは、どちらでも。結局のところ、世界観の設定がゲームメカニクスとピタリ噛み合い、相乗効果を高めることが。そのためにゲームデザイナーやシナリオライター、アートディレクターとの密接な協業が必須です。

世界観設定の具体例:
「ワールド設定」「キャラクター設定」「シナリオのプロット」「ゲームルールの文芸的な意味づけ」「アイテム名やステージ名など各種ネーミング」などなど。一貫性を保つ必要もあります。

プランナー職の一般的なイメージは、この職域のこと(だけ)と捉えられているような気がします。

3.レベルデザイン

設計・実装済みのゲームシステムに則って、目的や難易度の異なるゲームデータを作成する業務です。
世界観やシナリオ、プレイ体験設計などのオーダーに従い、ゲームプレイ用のステージマップやミッションイベント等のデータを設定します。

マップエディター等の各種ツールを使用してフィールドマップ形状の設定とデータ配置を行ないます。準備済みの描画モデルや画像データ、ギミックやアイテム、敵やNPCなどのキャラクター、ゲーム制御スクリプト、音響用データ、その他のアセットを配置し、ひとつのゲームステージを構成します。設定する/できるデータはプロジェクトによって千差万別です。制作ライン内では下流工程に位置します。

例えば音ゲーの譜面データを作る作業もレベルデザインにあたります。(譜面データをあえて「マップ」と捉えることも出来ます。)
驚くべきことに、ゲーセンのクレーンゲームの景品配置や調整を整えるイケてる店員さんもレベルデザイナーです。開発側であろうと運営側であろうと、レベルデザインによって集客や収益がぜんぜん違ってきますね。

レベルデザインは「レベル」と名が付くことからただの難易度調整のことだと誤解されがちですが、それはレベルデザインの一側面でしかありません。ゲームの面白さを組み立てることが職務です。「マップデザイン」「ステージデザイン」と言い換えると理解しやすいかもですね。

4.シナリオライター

ゲーム進行中のキャラクターセリフなどシナリオ脚本を担当します。いわゆる脚本家。上流工程です。
ほか、ゲーム全体のストーリー構成、登場キャラクター設定、ゲーム中システムキャラのちょっとしたセリフ、ボイス台本なども担当範囲。

脚本だけでなく、例えばUI画面でのボタンラベル名やシステムテキストなど、ゲーム中のあらゆる文言の整備や調整にも責任を負います。ゲームメカニクスや世界観デザインにマッチしたテキスト文言を設定し、ゲーム世界の魅力とプレイアビリティ向上の両立を図ります。これらは下流工程ですね。

ボタン名ひとつとっても「次へ」「決定」「戦闘開始」「戻る」「やめる」「外へ出る」いずれなのか。画面表記が「リザルト」なのか「軍監報告」なのか。これら文言ひとつで、文芸的な意味づけも、ゲーム体験や操作性も変化します。

5.スクリプト

スクリプト言語を記述しゲーム進行シーケンスをプログラムします。
ゲーム制御用の条件判定やトリガー発行、各種イベントシーケンス、シナリオ上のキャラクター芝居、ゲーム中のフラグ管理などを担当します。

すべてのデータソースが揃ってからそれらを統合する作業となるので、下流工程にあたります。プログラマーとプランナーの中間的なポジションですが、基本的にはプランナーの一職種として扱われることが多いです。

6.データマネジメント

キャラクターやアイテムがもつ各種パラメーターなど、大量の固定数値データを管理・調整する職務です。成長曲線設定や属性コントロールなど、数値テーブルデータの形をとるものはすべて担当の対象となりえます。
設定と管理は、エクセルなどのツールでハンドリングすることが多いです。
ゲームを通じて一貫的で緻密な数値バランスを保つために、個々のデータ数値変更の全体への影響度合いや影響範囲を感覚的に把握していることが求められます。

7.制作進行

ゲーム制作プロジェクトでは様々な作業進捗や人的金銭的なリソース管理が必要です。「作業タスク管理」「スケジュール管理」「予算管理」「スタッフ管理」「機材管理」などです。

制作進行とは、開発ラインでのタスク配分と進捗およびスケジュール状態を把握し取りまとめる専門の職域です。また渉外として外注先への発注や検収連絡などを代行する場合もあります。

通常、タスク管理やスケジュール管理は、プランナー/グラフィック/プログラマー/サウンド、各チームセクションごとでそれぞれ取りまとめています。
(プロジェクトによってはバトルパートチーム、ワールドパートチームなどの場合もあります。)
本来これらの進捗管理は、各セクションリーダーの責任業務です。
しかし、セクションリーダーは専門性に秀でた優秀なクリエーターでもあります。彼らが実作業やクオリティのジャッジにより多くの時間を割けるよう、管理業務の負担が軽くなるよう補助することが制作進行係のミッションです。

ゲーム制作中の作業タスクやスケジュールの進捗状態を常時モニタリングし、作業予定が問題なく進行するようサポートを行ないます。必要であればスタッフ間の円滑なコミュニケーションの手助けもします。
もしプロジェクトになにかしらの障害や問題が発生していれば、その状況と規模と危険度合いを調査把握し、迅速かつ正確にチームの責任者へ報告を行ないます。

制作進行係の人数や担当セクション範囲は、開発チームの規模によって異なります。小さな開発チームでは、制作進行1人で複数のセクションを同時に担当したり、制作進行担当を置かない場合もあります。
また、作業タスクを独自に新しく作ることはしません。チームが決めた予定を計画通りに進行させるためのサポートがお役目です。そこは出しゃばらずに提言程度に納めます。あくまでも上流から下流まで水の流れに問題がないか監視することが役割です。

8.プロダクションマネージャー

各セクションを担当する複数の制作進行スタッフを統率し、開発チーム全体スケジュールや進捗を統括管理する責任者がプロダクションマネージャーです。制作進行の上位職になります。

プロダクションマネージャーはより高所からプロジェクトチーム全体の進捗状況を俯瞰して把握します。また、各セクションのチームリーダーと情報共有し、セクション間での作業進行の齟齬や不具合があれば、すり合わせや調整を行ない、プロジェクト全体のスムーズな作業進行を支えます。

中小規模なチームでは制作進行とプロダクションマネージャーは兼務する場合も多いです。また進行管理の専門ポジションを置かず、プロダクションマネージャー以下の制作進行の業務をディレクターが兼務することもしばしばです。

9.ラインプロデューサー

開発ラインの構築と維持管理を行なう業務ポジションになります。開発費等のお金の管理、スタッフの人事、外注先との契約交渉など、より広い権限で開発ラインの管理を行なう責任者です。開発スタッフやプロダクションマネージャーの働きやすい環境を作る役割といえます。

予算範囲内で制作スタッフの調達、配置転換や増員、開発機材の導入や更新などを手配します。また、開発予算やスケジュール全体の変更など(つまり「予算追加が必要です!」「スケジュール延長が必要です!」という、あまりよろしくない状況)の計画変更の取りまとめや提案も行ないます。ただし予算や全体スケジュールの変更はプロジェクトの最終責任者であるプロデューサーの判断となります。

通常、ラインプロデューサー職はプロデューサーが兼務する、プロデューサーとディレクターで分担して担当する、といったケースが多く、専任者がいる場合はまれです。また、アシスタントプロデューサー名目でありながら実質的にラインプロデューサー業務を担当している場合もあります。隠れラインプロデューサーですね。

10.QAスタッフ(品質保証) 

テストプレイ、デバッグを担当します。QAにおける品質保証とは、ゲームが正常に動作するか(バグがないか)、それは本来のゲーム仕様と一致した動作か、製品レベルのクオリティに達しているか、重大なコンプライアンス違反など自主規制違反疑いの箇所がないか、といった商品的な品質を指します。ゲームが面白いかどうかの品質とはやや異なります。(ユーザー視点に立ってのフィードバックや改善提案をすることもありますが、本業に余裕がある場合に限ります)

QAスタッフはそもそも開発スタッフではない、開発チームには含まれない外部セクションだ、とするむきもありますが、職務としてはプランナー職の一部と考えます。実際にQAスタッフを経てゲームデザイナー職にキャリアアップするケースも多々あります。


プランナー職とは異なりますが、キャリアパスに含まれるため、以下の職種も紹介しておきます。

11.ゲームディレクター

ゲームプランナーの最上位職。ゲームの完成と品質に対する最終責任者です。各セクションの成果物の最終確認とクオリティのジャッジ、それらの修正指示を通してゲーム品質を最大限高める、ありていに言うとゲームを面白くする責任を負います。

開発中にはセクション間で相反対立する課題や問題も発生するため、その調停も行ないます。またスケジュールでのマイルストーンを設定管理し、スケジュール内予算内にゲームを絶対に完成させる責務を全うする柱となります。予算とスケジュールを死守するため、仕様変更の判断、作業スケジュール調整、プロデューサーへの予算変更/スケジュール変更の嘆願など、あらゆる手を打ちます。

12.ゲームプロデューサー

ゲームプロデューサーとは、ゲームビジネスの責任者です。しかしもっと分かりやすく明確に表現すれば、ゲームの収益に対する最高責任者といえます。

ゲームで収益を上げるためには、次の3つが必要です。
「ゲームを完成させる」
「ゲームの売上げを作る」
「開発費と売上げのバランスをとり利益を確保する」

これらをコントロールし、収益の最大化をめざします。
このうちゲームを完成させる責任と権限は、通常はディレクターに委譲します。プロデューサーは、妥当と考える予算で開発したゲームをいつだれにどうやって売るか、販売戦略や広報宣伝、ブランド戦略を駆使し、あらゆる施策を担当することになります。

プロデューサーの伝家の宝刀(ちゃぶ台返し)
ビジネスの責任者として、プロデューサーはゲーム開発とゲーム品質についての最高決定権も持ちます。伝家の宝刀を抜けば、ディレクターはじめチームの各責任者の権限すべてを行使することができ、あらゆる指示をオーバーライドして強制することができます。ただし伝家の宝刀を抜くたび、制作チームのモチベーションが大幅低下する危険を招きます。抜かないに越したことはありません。

12.その他の雑務

これは専門職ではないですが、開発途中には諸々の単発サポート業務が存在し、ひとくくりにざっくり「雑務」として扱われます。たいていはしたっぱプランナーの誰かに結局押しつけられることが多いです。

会議室の手配、議事録作成、仕様書ファイル等のフォルダ整理、PCなど機材設置や移動(力仕事)、他スタッフのために新規ツール類の初期設定をして回る、棚卸し、各種の連絡伝達業務、モーションやポーズの人体モデル役、電話応対、郵便物や荷物の受取り、発送品の梱包、書籍資料の整理、開発室の整理整頓、差し入れ品の配布、買い出し、飲み会の幹事、などなどです。

じつはこういうところで気が利くやつかそうでないやつかを評価されたりするので、手を抜かずに率先して笑顔で務めましょう。

おわりに

実際のプランナー職は、これらの専門領域を複数兼務してるケースがほとんどです。ですがそれとは逆に、複数の専門領域をこなせる能力があっても、作業量が多いから他と兼務は無理、飛び抜けた才能があるからそれだけ担当してほしい、などの理由で、一つの専門職だけに絞って受け持つ場合もあります。

職種紹介は以上です。
次回では、今回の続きとしてプランナー各職務に必要とされる能力、キャリアアップのルートなどを解説しようと思います。

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