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note14 ゲームプランナーの「伝える技術」4つの基本

※この記事は2013年公開のブログ記事を一部加筆訂正したものです。

ここまでのおさらい

こにゃにゃちは!かいぽんです。

以前の記事で、ゲームプランナーに必要なスキルは、
「考える」
「伝える(共有)」
「やる(実行)」
「試す(トラブルシュート)」

だ、という話をしました。

<参考エントリ>
note02 ゲーム企画屋さんに必要なスキルとは(1)
note03 ゲーム企画屋さんに必要なスキルとは(2)

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今回はそのひとつ「伝える技術」について、そのコア要素となる「文書作成スキル」における4つの基本技法についてのお話しです。

文書作成はゲームプランナーにとってもっとも重要な作業のひとつです。

文書作成4つの基本技法

ものごとをチームメンバーに伝え、その内容をチーム全体で共有するには、文書作成(ドキュメンテーション)が非常に重要な役割をはたします。プランナーの仕事とは、この文書作成そのものである! と言っても過言ではないぐらいです。文書なくしてゲームなし、そのぐらいの覚悟で臨みましょう。

「伝えるための文書作成」は、下の4つの基本技法に集約されてると考えています。

<4つの基本>
・リストを作る
・表を書く(マトリクス)
・図を描く(チャート)
・名前をつける(命名)

プランナーの仕事とは、いってみればこの4つだ! これだけは絶対にできるようになっておけ! なにかに困ったら、この4つのうちのどれかで解決できるはずだ! というのがわたしの教えです。

文書作成といっても、公文書みたいにだらだら長い文章をならべて書いてあるイメージじゃないです。文字や図がびっちり詰まったいわゆる「公務員パワポ」みたいなやつでもない。ああいうのは最悪ですね。永久に禁止して欲しい。

ここでいう文書とは、アーカイブするような記録文書ではなく、あくまでもライブで情報共有するために現状を簡潔に書き留めたもの、ちょっとリッチなメモ、って感じでかんがえてほしい。それには、、、

-文字テキストは最小限
-時間かけずにさくっと書く
-パッと見るだけで内容が把握できる(読む側も時間かからない)
-要点のみを的確明確に
-シンプル文書だから読み違いも取り違えもない

という要件を満たすものを目指します。

あともちろん紙文書である必要はなく(というかいまもう紙ってないですよね)デジタル上の文書のほうが取り回しがよいです。あとこれ大事ですが、個人的にはワードはダメぜったい。必ず滅ぼしてやるエクセルは「実データの管理」「表作成」にとどめ、それ以上の他の伝達や連絡用には使わない! 特にエクセル方眼、おまえは滅べ!!

以下に、「リスト」「表」「図」「命名」について、順に解説していきます。

1.リスト

リストとは、つまり箇条書きです。上の4つの項目もリストです。そんで、リストに書かれた内容、つまりリストの種類はおもに2つに大別されます。

<仕様リスト>
わかりやすいほうの種類から。たとえばアイテムリストや武器リストなど、ゲーム仕様に関わる内容のリスト。これらは「仕様リスト」といいます。ゲームの仕様概要を箇条書きにした文書なども、リストですね。

<やることリスト>
もう1種類は、タスクリストやバグリスト、発注リストなど、ゲーム制作プロセスに関連する内容のリストです。個人的にはこれを「やることリスト」と呼んでいます。備忘録や更新履歴などもゲーム制作には欠かせないリストといえます。

リストはまずテキストエディタを使って記述します。エクセル使う人もいますが、わたしはいつもテキストエディタです。リストをテキストで作っておけば後からの加工も容易です。必要になればエクセルにでもなんにでも流し込めます。

ゲームプランナーは、とにかくなにをするにしても、まずこれらリストを記述してから取りかかる。これが基本中の基本の絶対手順です。あらゆるすべての作業の初手はこのリスト作りだと心得ていただきたい。

なんでもかんでもまず箇条書きにしましょう。箇条書きにして悪いことはなにひとつありません!

それともう一つ。テキストで長々と書いてしまった文があれば、それを箇条書きにひらけないか検討してください。そして可能なかぎりリストの形に変換しましょう。

以下では長々と書いてしまった長文を、箇条書きに変換した例を紹介します。
<元文章>
「テキストは最小限にし、時間をかけずにさくっと書けて、パッとみるだけで内容が把握できる、つまり要点が明確にわかるよう心がける。
シンプルな文書なら読み違えも取り違えもありません。」

<箇条書きリストに変換>🔽
-文字テキストは最小限に
-時間かけずにさくっと書く
-パッと見るだけで内容が把握できる(読む側も時間かからない)
-要点のみを的確明確に
-シンプル文書だから読み違いも取り違えもない

どうですか! ぜんぜんわかりやすくなりますよ。

2.表(マトリクス)

表とは、いわゆる表です。マトリクス表ともいいます。あるリストと別のリストの組み合わせのある事柄が往々にしてあります。これらは表に展開することで非常に簡潔に分かりやすく記述することができます。

以下に「仕様リスト」を表に変換する例を示します。
この例では、「自武器」「対象物」の2つのリストがあり、衝突判定の組み合わせがそれぞれあるとします。

<自機の武器リスト>
・メインショット1
・メインショット2
・サブウェポン1(対地ミサイル)
・サブウェポン2(対地レーザー砲)

<自機以外のオブジェクトリスト>
・空中敵
・空中障害物
・地上敵
・地上障害物
・敵弾1
・敵弾2
・アイテム

武器とオブジェクトとの組み合わせ衝突ケースをすべて洗い出し、リスト化します。

やってみましょう。

<メインショット1の衝突判定>
 空中敵:ヒットあり→敵は爆発(自弾は消滅)
 空中障害物:ヒットあり→自弾が消滅(障害物は残る)
 地上敵:ヒットなし
 地上障害物…
 (以下ずっと続く)
<メインショット2の衝突判定>
 ほげほげ
 (以下ずっと続く) 

めんどくせえ! やってられるかあっ!! そして読みにくい!!!

リストでは記述が長すぎですし、そもそも組み合わせケースに漏れが出てしまっても、なかなか発見できません。困るなこれ。そこで登場するのが「表」です。表展開すると、たとえばこのようになります。(サンプル例なのでゲーム内容については気にしないように)

表サンプルスプレッドシート

表のサンプル

どうですか、このわかりやすさ感! さすがやでえ!

この対応関係を、文章や箇条書きで説明すると非常に冗長になってしまいますが、表にすることで簡潔確実に伝わります。

サブウェポン2の対空対地レーザーは特別で、障害物を貫通して空中敵も地上敵をもなぎ倒してぶっ殺す、つよ武器という想定です。

表は、エクセルやパワーポイントなどを利用して書きます。(上図はエクセルで書きました)
小規模な表ならばツール類を使わずに、テキストのままインデントとスペースで表作成することも出来ます。

より実践的なテクニックとして、一旦テキストエディタでタブ区切りやカンマ区切りで表組みを作り、コピペでエクセルに流し込んで成形する、といった方法もあります。手早くて楽ちんなので重宝していますです。

これら説明用の表のほかに、データ実装にエクセルを利用し各種のデータ表を作成・調整することはわりと多いです。これは「伝える技術」というよりはデータ実装の技術領域ですが参考までに。

エクセルはとても重要かつ重宝できるツールなので、基本の使い方は必修です。必ず覚えましょう。だがエクセル方眼、てめーはダメだ!

文章やリストの内容を、表のかたちに展開するスキルはとても重要です。

「やることリスト」を表に変換する

上記の仕様説明以外に、作業プロセスやスケジュールを表の形にして管理するケースも多々あります。

たとえば、ステージ制作の作業工程など。以下にサンプルでやってみます。

スケジュール表サンプル

スケジュール表サンプル


仮モデリング→コリジョン作成→初期テストと修正(イテレーション)→本モデリング→テクスチャ作成→ライティングなどの進捗を各ステージごとに管理する想定です。エクセルで表作って、進捗と締切り予定をささっと書き入れました。(テキストリストでも可能ですが、表形式にしたほうがパッと見わかりやすく便利です。)

このようなスケジュール表は専用の工程管理ソフトやガントチャートツールで管理記述する人も多いかもですが、数人×2週間とかのスケジュール程度に管理ツール使うとそっちのメンテナンスコストや手間のほうが面倒くさいです。

どうせスケジュールは遅れるんだから、その都度管理ツールと格闘するとかアホらしくてやってられるか! というのがぼくの気持ちです。工程管理表を作ってるんじゃなくて、ゲームを作ってるんです!!

3.図(チャート)

図を使って説明したほうがよい事柄、UIの指示書、ゲーム進行のフローチャートなどは、簡単なチャート図を使って伝達するのが簡明確実です。

チャートサンプル

じゃんけん関係のチャート図サンプル

手書きのポンチ絵でもいいのですが、パワーポイントやエクセルなどのツールの図形描画機能を使って作成するのが楽ちんです。

じゃんけん関係は文章で説明してもシンプルなので、このぐらいのことをわざわざ図に描くかどうかは作業コストとの相談になります。より複雑な関係でもシンプルな図に展開できれば、作業コストが多少かかったとしても、伝達コストが大幅に圧縮できればお釣りがきます。そのバランスですね。

また、ゲーム進行を記述するフローチャートは超重要です。ゲームプランナーたるものフローチャートは絶対に書けるようになっておきましょう。そんな難しいものではありませんが。フローチャートについての教本は数多ありますのでここでは省略します。

4.名前(命名)

名前といっても、キャラクター名やアイテム名を考えることではありません。たとえばさきほどの「じゃんけん関係」という言い方。それがここでいう「名前をつける」ということに該当します。

・格闘ゲームで、敵を飛び越えてガードの裏から攻撃することを「めくり」と呼ぶ。
・レベルエディタで、マップに樹木やギミックを置いていく作業のことを「田植え」と呼ぶ。(昔のタイトーではマジでそういってたw)

これらの例は、名前をつけることによって、現象や内容を効率的に表わします。ようするに「あ~アレをアレしといて」というアレを、一意の短い名前に置き換えることで、相互の誤解無く正確厳密に指示や適用ができる。利用時のハンドリングがたいへん楽になるわけです。

一連の煩雑な仕様や作業や手順に、適宜なわかりやすい名前をつける、命名し名称を規定することで、以降その事象はがぜん扱いやすくなります。これが「伝達する技術としての命名」です。

ほかにも、よくあるわかりやすい例では、「新機軸!ほにゃららシステム搭載!!」とかの顧客に対する宣伝名称の名前考案もその一部ですね。セールストークになるかならないかは別の問題ですが、すくなくとも開発チーム内では「ほにゃららシステム」などの呼び名があることによって、コミュニケーションのロスが大幅に防げます。

名前をつける、意外と重要です。積極的に命名していきましょう。そしてシャレやユーモアが効いたものなら、殺伐とした開発作業も楽しくなるでしょう! レッツ命名!!

まとめ

よく出来たプランナーほど、企画書や仕様書に文章をほとんど書きません(シナリオライターは別ですが)。ほんと最小限しか書かない。

「リスト」「表」「図」「命名」の4つのツールで、すべてを説明しきるのが訓練されたプランナーというものであります。

ゲーム仕様や工程手順を文章に書いて説明するのは下策であり、リストや表図に展開して簡潔に伝えるのが上策というものです。そもそも3行以上の文章書いてもだれも読まないし! この記事とかな!! (noteは文章書く前提の環境だからしょうがない)

今回は、伝える技術のお話しでした。いかがでしたでしょうか。文章だとやっぱり説明が大変ですね。

それではみなさままたお会いしましょう。ばいなら~!


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