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‘as+過去分詞’の解釈について:

質問

『高校リード問題集 英文解釈』(教育開発出版株式会社):「第5章 動詞を含む構文 練習問題⑯-(5)」からの抜粋です。
以下に、教材の原文と、教材会社の翻訳を記載します。【】内の部分の文構造上の解釈が、今回お尋ねしたいところです。
※「口述の歴史」の手法が、いかに現代史に貢献しているかについての文章です。

《In the second half of the twentieth century, oral history has had a significant impact upon contemporary history【as practised in many countries.】While interviews with members of social and political elites have expanded the range of existing documentary sources, the most distinctive contribution of oral history is that it includes within the historical record the experiences and perspectives of groups of people who might otherwise have been 'hidden from history'.

[訳: 20世紀後半には、オーラル・ヒストリー(口述の歴史)が、【多くの国々で扱われているような】現代史に重要な影響を与えてきた。社会的政治的な重要人物とのインタビューによって既存の記録史料の領域は広がったが、オーラル・ヒストリーが最もきわだって貢献したことは、もしそうでなければ「歴史から隠されてしまった」かもしれない人々の体験や考え方を、歴史的記録の中に含めていることである。]》
今回疑問に思ったのは、上記の、教材会社の【】部分の翻訳が、連体修飾、つまり、関係代名詞として解釈している点です。“as”には、確かに擬似関係代名詞の用法はありますが、それには先行詞の前に、“such”や“the same”のように、“as”と相性の良い語(句)があるはずだと理解しています。

また、仮に関係代名詞として解釈するにしても、受動文を作るためには、“is practised”となるはずだと思います。

さらに、先行詞を“contemporary history”と仮定したとして、「実践されている現代史」の意味が分からないと感じています。
私自身は問題の部分をどのように解釈したかと申しますと、「口述の歴史は、【多くの国で実践されている今にあって】、現代史に重要な影響を及ぼしている。」です。

つまり、as以下を、文構造としては、分詞構文の前に従位接続詞asがついたものだと解釈、つまり、“practised”の意味上の主語は “oral history”と解釈し、asの意味においては、以前ガリレオ先生のnoteの、“as”についての質疑応答記事を拝読した時に学ばせていただいた、「同時展開」をヒントに訳を出してみました。

上記について、ガリレオ先生の見解を教えていただければ嬉しいです。
今回は長文となってしまい、大変申し訳ありませんが、なにとぞ、ご回答の程、よろしくお願いいたします。

ガリレオ流・回答

‘as + 過去分詞’の形に注目して、最初に思い浮かんだのは as discussed above「上で議論した(された)ように」と同様の副詞的な使い方です:

(1) The pain is undifferentiated or indescribable as discussed above.
—Oxford Sentence Dictionary

すなわち、ご質問の文の場合、「多くの国々で扱われているように」と訳出される解釈です。しかし、このような副詞句としての用法であれば、文頭で ‘As practised in many countries,’のように持ってくるか、文尾ならば asの前でカンマが用いられることが多く、(1)のようにカンマなしで用いられている実例の方が稀なケースであるという疑問が生じました。

名詞(連体)修飾の可能性を探る

そこで、問題集の訳に沿った ‘as practised ~’が直前の名詞 historyを修飾する解釈の妥当性を検証してみました。ご質問の中で言及されている通り、擬似関係代名詞の用法であれば「“such”や“the same”のように、“as”と相性の良い語(句)があるはず」という認識で問題ないのですが:

(2) Choose such friends as will listen to you quietly.
(3) He goes to the same school as [that] I do.
—『ロイヤル英文法』§309(太字強調はガリレオによる)

asが直前の名詞を修飾する用法は、次のようなケースもあります:

(4) human being as distinguished from animals
「動物とは区別されたものとしての人間」
(5) the earth as (it is) viewed from a space ship
「宇宙船から見た地球の眺め」
—『ユースプログレッシブ英和辞典』(太字強調はガリレオによる)

しかも注目すべきこととして、(5)の it isのような 代名詞S+be動詞は慣用的に省略されるので、今回のご質問の文と同様に ‘as + 過去分詞’の形をとることが多くなるので、この線で解釈を考えるのが順当そうであると判断がつくことになりました。

そこで NOWコーパスで ‘名詞句 + as practised’の形で検索をかけてみると、以下のような実例を見つけることができました:

(6) democracy as practised in {the civilised world / Malaysia / the countryなど}

(6)のような例文は、「〜で実践されているような民主主義」と、as以下が直前の名詞 democracyを修飾していると判断できるものと言えるでしょう。名詞の位置には、他にも(検索上位順に)politics, system, lawなど、個別の例を検証する必要はあるにしても、修飾の対象として妥当なものが並んでいます。

そうすると、ご質問の中にあるように、contemporary historyを修飾するとして「『実践されている現代史』の意味が分からない」というところを解決する必要がありますが、これに関しては文脈から historyが「歴史」というよりも「歴史学」のことを表しており、問題集の訳例のように「多くの国々で扱われているような現代史」とか、あるいは「多くの国で実践されている現代歴史学」と考えれば違和感なく捉えられ、全体としても「20世紀後半、【多くの国で実践されている現代歴史学】に対して、オーラル・ヒストリーが影響を与えてきた」というトピックに対する説明が展開されている流れで整合性が確認できます。

他方、最初に考えた副詞的解釈の方では、「“practised”の意味上の主語は “oral history”と解釈」することになりますが、「口述の歴史」も「多くの国で実践されている」のように ‘実践’の対象として妥当なのか?という疑問符が付くことになります。

「同時展開」解釈については?

以下の記事をご参考に考えてくださったという「多くの国で実践されている今にあって」という解釈の可能性についてですが、それは今回の例とは整合しないと考えます。

1つには、この「同時展開」解釈の asは接続詞であり、後ろには通例 S+Vの要素が揃うこと、もう1つ(より決定的な)ポイントとしては、上の記事にも書いたように:

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