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煮詰め切ってあとは食うだけ 24節 アトレティコvsセビージャ(A) 2024.2.11


またセビージャ戦。直近の対戦は1月25日の国王杯。

その前に年末最終戦でも対戦している。顔馴染み。どちらもアトレティコが1-0で勝っている。
引き続きしんどい状況のセビージャは先週のラージョ戦が年明け後初勝利。まだ降格圏に片足突っ込みそうな状態。
アトレティコは一つでも落とせばタイトルレースから脱落。


●スタメン

・アトレティコ
オブラク
ヴィツェル / ガブリエウ・パウリスタ / エルモソ
ジョレンテ / デ・パウル / コケ / バリオス / リーノ
グリーズマン / モラタ

サウルが累積警告で出場停止。
最終ラインはガブリエウ・パウリスタが初出場。

・セビージャ
ニーラン
ヘスス・ナバス / バデ / セルヒオ・ラモス / アクーニャ
スマレ / ジブリル・ソウ / オリベル・トーレス
オカンポス / エン=ネシリ / イサク・ロメロ

いつの間にか復帰していたアクーニャがスタメンに。
トップはアフリカネイションズカップから帰ってきていたエン=ネシリと売り出し中のイサク・ロメロ。




●前半

15分に先制される事となるアトレティコ。初期配置などの話から。

セビージャの設定とアトレティコの違和感を中心に。

・セビージャの配置

セビージャのシステムはオカンポスの縦挙動、ジョレンテとのランデヴーが肝。キケさんはこの選手を信用しているというか彼に過負荷を与えるしかないと思っている節がある。それに耐え得る選手ではある。アクーニャは内側の守備をする分には多少背が低い以外は特に問題はないのと、彼も縦挙動に特徴があるので2人で頑張ってねという設定になる。実際攻撃時には完全にWGとそれに関与するSBの関係になっていた。
この形の結構良かったところは守備&ビルドアップで依存度の高いスマレをジブリル・ソウが近い距離でサポートできる点だが、ソウの使い方はそれでいいのだろうか。
そしてオリベルは外側を2人(オカンポス&アクーニャ)に任せられるので内側で得意な仕事ができる様子。プレス回避で良い仕事をしていて良かった。彼も得意な仕事があったりなかったりするからね、ここ数年。
トップは売り出し中の頑張り屋、イサク・ロメロが思った以上に推進力があり縦に引っ張れる。毎週良くなっていくねこの選手は。

・アトレティコの違和感

アトレティコの違和感は左右差。デ・パウルが右、バリオスが左ならグリーズマンは右にいるのが通常だがグリーズマンも左にいた。
この配置のメリットは相手が4バックであればジョレンテのアイソレーションを簡単に選べる事だが、開始早々からセビージャは明らかに5バックだったのですぐにグリーズマンの位置を変更するかと思ったが、しなかった。

相手が4バックならば

というかアトレティコはこういう時そもそも両方のパターンを試合前から準備するので心構え的には変更も何もない。が、この日は30分付近までこの配置のままプレーした。左の大外からグリーズマンへの斜めのボールをスルーしてモラタが決定機を迎えるなどいくつか形は作ったが、自らアンバランスを生んでまで作るチャンスにしてはリターンが少ない。左ハーフスペースでグリーズマン、バリオス、エルモソがノッキングするのも宜しくない。

それでも修正しなかった事を考えると、これはバリオスにコケの横からトップポジションまで移動しながらプレーするサウルのタスクをやらせてみる実験だったのではないかと推測する。個人的には何度も言うがバリオスは味方の位置を見てポジション修正が出来ないので割と無理のあるタスクだと思う。だからこそ練習させたのかもしれないけど。
セビージャ相手にアウェーでそれをやる事の是非と、国王杯準決勝2ndレグとCLの前、サウルが出場停止のここしかやる機会がない事の天秤には各々が掛ければいい。結果この試合に負けるわけだし反対意見はあってもいいんじゃないでしょうか。当然ですが僕は反対していません。この選択のせいで負けたともこの選択のせいで無得点とも思わないしな。


などとグダグダしている間に15分にセットプレーからイサク・ロメロに決められる。これはシンプルに想定外でしょう。勇敢に飛び込める良いゴールだった。これで国王杯を含めるとトップリーグ7試合で5点目。救世主になりかけている。別に彼がいなくても残留は出来そうなので救世主と呼ぶにはやや弱いかもしれないが。

結局27,28分頃からデ・パウルとバリオスの左右を入れ替えて正気を取り戻す。取り戻し方がグリーズマンとモラタの移動ではなく中盤の入替だったのは興味深い。右はバリオスが大外でボールを引き出したり

左はエルモソが大外サポートからアーリークロスを狙ったり

やや形を変えながら前進を目指した。ようはアタッキングサード侵入の手順の方に問題があると見たのでしょう。個人的にはグリーズマンに"ジョレンテに近づけ"と指示して終わりかと思っていた。その方がデ・パウルとの距離感も近づくと思ったので。

ところがこの形にしてからの方がネガトラのバランスが悪く、特にイサク・ロメロが中央でターンしてカウンター開始する形でピンチを招く。イサク・ロメロ、シンプルなスピードもそうなんだがボールを収めて前方向にアクセルを踏んだ時の出力が良い。足を止めた状況から一瞬で相手を置き去りに出来る瞬発力がある。これにアトレティコ最終ラインは大いに苦しめられた。

アトレティコはモラタが2つ決定機を外しつつ前半終了直前に膝を怪我して途中交代する不運。一点ビハインドのまま前半終了。



●前半終了

実験中であった事とセットプレーの失点に直接の因果はないし、実験中であっても一点くらい取れよという話でもあり。後半の修正で追いつき追い越す心構えは準備していたと思うが、スコア的には想定できる中で最悪のものだった前半。結局45分やり切らずに配置をいじったのもなんだかなという感想。

シメオネの感想を知らないが、セビージャがかなり良かったというのは言い訳にしておきたいところ。これで残留争いは冗談でしょう。



●後半

2枚交代。
バリオスと怪我をしたモラタに替えてモリーナとメンフィス。

バリオスの交代タイミングは毎回可哀想なところがあるが、これで実験だったという事が証明されたという事でいいのではないでしょうか。

49分に右大外を打開してグリーズマン&メンフィスのシュートで決まりかけるがナバスのクリア。
この時間帯、アトレティコは再奪回が決まれば決定機になるし外されればピンチになるという展開。それをセビージャ側のプレーに依存する展開はあまり望ましくない。生殺与奪の権を他人にどうちゃらこうちゃら。58分にはオカンポスに一発裏抜けされるがオフサイドに救われ、59分にはカウンターでイサク・ロメロの際どいシュートを浴びるなど危ない橋を渡る。

アトレティコの選択は60分にはコケ→コレアを交代。カウンターもらい放題の環境からさらにコケを下げてどうするねんと思ったがボールを握って押し込む展開を確定させる方が早いという判断。これ、国王杯でもCLでも2ndレグで飛び出す可能性のある発想なので押さえておきましょう。

この配置はジョレンテとデ・パウルに無理してもらう必要がかなりあるが、実運用できる内容である事は確認できた。良いでしょう。

さらに次の選択肢でカードをもらっていたヴィツェルに替えてヘイニウド。彼を最終ライン真ん中に置いて2-3-5へ移行。

エルモソに高い位置を取らせるためか、エルモソが帰ってこないからか、どっちが先でも良いがこれも終盤の押し込み方としては今後もリバイバルし得る選択肢なのでチェック。少し気になったのは5レーンを埋めて相手を押し込む環境でリーノからあまりコンビネーションのアイディアが出てこなかった点。スペースがない時はリケルメの方が良いのではないか、など(84分に交代)。

結局アトレティコに同点ゴールは生まれずに試合終了。アトレティコはタイトルレースから置いていかれる結果となった。



●試合結果

0-1敗戦。ラリーガタイトルを争う上では喪失感のかなり大きい試合。一方でこの試合の内容から確認できた事をまとめていく。

前半はバリオスのタスクをあらためて実験した。シメオネの期待値なのか、過度の要求なのか、左IHの高い位置に置かれたバリオスは全く得意ではない仕事をさせられる事になっている。それはこの試合に限った事ではない。もしかするとサウルの出場停止が決まっていた時点でこの試合に向けた準備でバリオスに準備されていたのがこの試合の役割(サウルと同じタスク)だったのかもしれない。結局良いイメージは生まれなかったが、右にはジョレンテもいるしこの日の3人の組み合わせ(バリオス、コケ、デ・パウル)でこの方法が機能しないのは割と困るのかもしれないし、サウルとは違う別のタスクが与えられたがセビージャの配置が想定と違ったなどの理由で全く顕現しなかったのかもしれない。
個人的には結局30分持たずにやめる程度の実験だったのでスルーしたいが、バリオスはこういう使い方を頻繁にされるのでそろそろ無視できない感はある。ルマルが復帰すれば関係ない、と思いたい。

後半は勝ち点を取りに行く形にシフト。モリーナを入れてジョレンテをIHに動かす方法は常套手段で、ガラッと試合内容を一変させた。いくつかの決定機を確実に仕留める事ができれば問題ない試合だったが得点に繋がらず。
ここに対しても個人的な感想は、これが11月だったら攻撃形の再考を促すような話をしたいところだが、今は2月である。来週はCL。もうこれが今季の形だし、この形で勝った実績もある。この日はシュートが決まらなかっただけ。今騒ぐ内容ではないでしょう。負けたけど。

コケを外してジョレンテとデ・パウルが中盤の過負荷を請け負う形は、今後リスク上等で一点取りに行く形としてリバイバルし得る。デ・パウルの配球タスクを軽くするためにエルモソがMFとして参加する、そのために後方にヘイニウドを置くという形も一定の説得力がある。ヘイニウドの正しい使い方という感じもした。この辺りもこの先のトーナメントに向けた準備が完了した感覚があった。

もう一つは初出場となったガブリエウ・パウリスタ。やはり一番得意な仕事が似ているのはヒメネスで、ハイボールに強く後方サポートに飛んでいける選手。パウリスタが真ん中でヴィツェルが右だった事からもシメオネも同じ評価をしている。この準備期間で問題なくフィットし90分プレーできた事はかなり大きい収穫だった。これでCLでも使える。アトレティコ、煮詰まりました。負けたけど。

だったらトーナメントを勝ち上がれるんですかと言われればそれは知らん。だがアトレティコは今季こういうサッカーをしてこういう武器を持って、こういう選択肢があるというのは出揃った。それが頂点に届くものなのかを見に行こう。おれは心の底から届くと思っている。


セビージャは逃げ切りへの方策が整っており、一人一人の選手の起用法を見て"そういえばこの選手、こういう特徴だよね"となる辺りさすがキケ・サンチェス・フローレスのチームである。オカンポスで終始大外バトルを繰り返し、クローズ態勢に入る最終盤にペドロサを入れてオカンポスを一つ前に動かしたのは説得力抜群。可動域の広さで各所サポートに奔走したジブリル・ソウから中央の守備強度を補完するジョルダンに替えたのも同様。これで残留は大丈夫でしょう(フラグ)

これで首位マドリーとは勝ち点差13。実質ラリーガタイトルレースから脱落した。さて、進みましょう。


2/11
ラモン・サンチェス・ピスファン
セビージャ 1-0 アトレティコ
得点者
【セビージャ】’15 イサク・ロメロ



●ピックアップ選手

パウリスタ
初出場。空中戦と中央ルートの球出し。
サポートも問題なし。起用の目処が立った。

デ・パウル
相変わらずの絶好調。味方との距離感とボールを持った時の選択肢の豊富さが段違い。中心キャラに。

モリーナ
ここに来てコンディションを取り戻した。モチベーションを高めて決戦へ

モラタ
怪我で離脱となるが彼が必要なのは2ndレグ。必ず帰ってこいよ。

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