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誰の選択に未来を賭けて 12節 アトレティコvsカディス(A) 2022.10.29

前回対戦はこちら

カディスは今季開幕から無得点で5連敗と絶望のスタート。6節アウェーでバジャドリードからネグレドの今季チーム初得点&初勝利。そこからは粘り強さとツメの甘さが同居するサッカーで4連続で引き分けてどうにか見られる勝ち点になってきた。

前節はアウェーでラージョ戦。開始からどうしようもない程に攻め立てられ、なんとか我慢していたが前半終了直前にイサがアルバロを踏ん付けてしまい一発退場&PK献上。一点失う。直後にイサの退場した右SB裏をアルバロ・ガルシアに一発で抜けられ2点目。アルバロらしいスピード&パワー任せの一撃を喰らった。
人数が減ると物量サッカーのラージョ相手にはキツいよなぁと思っていたらアルカラスも退場。しかもそのFKをルジュンに直接決められるおまけ付き。結局5点取られた。なぜか1点返したが。

点が取れないのは先季までと同じだし、ハードに戦うのも同じ。先季はなんとなく存在した得点パターンのようなものを、選手が大きく入れ替わった中盤で構築出来るかが問題だが、残された時間はそんなに長くない

左サイドでプレーするブライアン・オカンポはベティス相手にごりごりに切り裂いていたのでクオリティはありそうだがラージョ戦ではノーインパクト。おそらくボールをもらう動きが下手だと思われる


●スタメン
・アトレティコ

オブラク
モリーナ / サヴィッチ / ヘイニウド
ヴィツェル / コンドグビア / デ・パウル / サウル / カラスコ
コレア / モラタ

グリーズマンが10/1セビージャ戦以来ベンチスタート。
ヒメネスは休養。いつの間にかスタメンに定着しているコンドグビア。

・カディス
レデスマ
ルイス・エルナンデス / ファリ / エンバイェ / エスピノ
アレックス・フェルナンデス / フェデ・サン・エメテリオ / ボンゴンダ / オカンポ
ソブリーノ / チョコ・ロサーノ

右SBのイサが前節退場したのでルイス・エルナンデスがSBに。
同じく退場したアルカラスはなぜかベンチにいるがゴネたんでしょうか。



●前半
28秒で失点。

4-5-1でハーフコートに2ラインを置こうとしたところ、エンバイェから背後に良いボールが出た。キックオフ以外でエスピノがSBの背後を狙うような配置はあまりなかったので、不運と言えば不運。モリーナは球際吹っ飛ばすくらい寄せるべきだった。

・右サイドのトライアングルから
早速失点したが、圧倒的にボールを持ったのはアトレティコ。

後方3枚は大きく幅を取り、カディスの2トップの影響範囲から離れる。シメオネは後方を2+1にするような保持はどうしてもやりたがらない。最低でも3+1。ただ、相手が4-4-2なら、両HVが相手SHの注意を引く位置にポジションする工夫を見せる事で特に大外での数的優位生成に寄与している。サヴィッチとヘイニウドがその仕事が得意かというとそんな事はないんだが。

その効果を最大化していたのは、この試合でも右サイド。

モリーナが大外で浮いてSBエスピノの対応をバグらせながらデ・パウル&コレアとのトライアングルで背後を取りに行った。
ベティス戦のレビューで、アトレティコのFWの特徴でモラタはファー待ち、クーニャはニア関与という内容を書いたが、この日はモラタも積極的にニア、ゴール正面の位置にポジションしていた。ファーにサウルが入ってきてさらにカラスコもいるので真ん中にいるようにデザインされていた様子。モラタは残念ながら怪我をして10分にクーニャに交代してしまったがこの日はそれなりに良かったと思う。

左サイドは相変わらずカラスコのクオリティを生かし、ヘイニウドが頑張って外側から追い越す。15分にはポケットで待っていたデ・パウルがレヴァークーゼン戦の再現のようなシュートを放つが惜しくも外れた。カラスコが対面するルイス・エルナンデスは、この日は人がいなくてSBに入ったんだと思うが、結果的にはカラスコを自由にさせない良い対応だった。結果オーライ。

カディスはゴール前をばっちり固めてくるので、アトレティコは崩しの工夫が欲しい。思わぬ形で先制されてしまったので試行錯誤するメンタル的余裕がなかったように思う。

・押し込めない展開
破壊の選択肢が細かいコンビネーションになるのはレヴァークーゼン戦と共通している。そうなると、レヴァークーゼン戦と同様、流動性を持って局面優位を作る事、部位破壊のタイミングまでやり直して押し込む事が求められる。
しかしこの前半は、早めに失点を取り返したい焦りグリーズマン不在の機能性の問題でなかなか細かいタイミングが合ってこない。
それに加えて、チョコ・ロサーノとブライアン・オカンポがDFを背負って前を向くのが極端に上手く、アトレティコはネガトラで圧倒してハーフコートゲームに持ち込む事が出来ない。ソブリーノも幅広く動いてなんとなくボールを進めてくるのがややこしい。攻撃のチャレンジは毎回ブツ切りになり、そもそも疲れていて出足で負けている上に上下動の頻度が増えた。展開的にはいちいち細かく笛を吹く審判も、早めに先制したカディスに向いた。


●前半終了
ということで同点ゴールを奪えずに前半終了。
まずフィジカルコンディションの問題。とにかく出足で負け、ロサーノやオカンポの方向転換に常に後手に回った。サヴィッチ、ヘイニウドはかなり辛そう。中央でもコンドグビア、サウルは簡単にターンを許してペースを掴めず。こういう試合こそコケ、ヒメネス、グリーズマンが必要なのだが、まあ仕方ない。カディスの縦に速い攻撃に晒されるとヴィツェルの不安もかなり大きかった。


●後半
56分のコレアの決定機をレデスマの好セーブで止められ、ようやくベンチが動く。
60分にグリーズマンとフェリックスを投入。コレアとカラスコを下げた。一応ポルト戦はまだ頭にある事が確認出来る選択肢。

相手を押し込める試合ならフェリックスの大外起用はアリだ。彼の足下にボールを入れるところから攻撃開始、あとはクオリティに期待する。アリだ。
もう一度言うが、押し込める試合なら、だ。
この試合は違った。カディス相手に押し込めない事がシンプルに問題だが、残念ながらそういう試合にはならなかった。

攻撃シフトした弊害で中盤がスカスカ。
何度も言うがそもそもフィジカルコンディションの差で後手に回っている試合だ。中盤のスライドも遅く(そもそも枚数も足りず)、これでは隙だらけ。

なんですかこれ
デ・パウルが決死の2度追い。容易くサヴィッチがSHに釣り出される。なるほど、5バックの時にやる対応だ。3CBのHVなら大外の対応に回っても良い。だが今は最終ラインは4枚。サヴィッチは2CBの片割れだ。いつからそんな簡単に釣り出される事を許容するチームになった?これを同点のために負ったリスクだというならおれは認めない。

グリーズマンは、どういう指示だったのか。予想だがグリーズマンにもフェリックスにも非保持について何らかの指示はあったが、それぞれ個別に指示されていたのではないか。2人一緒に"こういう立ち位置を作れ"と共有されていない。正しい非保持配置をセットするのにえらく時間がかかった。追いかけるチームがぐだぐだしているようでは駄目だ。

リードするカディスは余裕がある、ここでCHの2枚を入れ替えて機動力を確保する。特に喧嘩っ早いアルカラスをここで入れてきたのはややこしい。オカンポは下げたくない気がしたが、ガス欠なんだろうか
アトレティコはコンドグビアに替えて、トップチームデビューとなるバリオスを投入。これもCLを見据えた交代。しかしこれでさらに守備タスクを持てる選手を減らして意味不明になる。デ・パウルが真ん中なんだが、右IHぽい位置のグリーズマンのポジションが高くサヴィッチがデ・パウルの並列にならないといけない。モリーナの上下動も全く効かなくなり、カウンター対策はフル無視でとにかく得点を

・2失点目
81分にカディスが決定的な2点目。またモリーナの背後を狙われ、ここにきて何故かめちゃくちゃ元気なソブリーノがランニング。最後はエスピノから隙間に入れられてアレックス・フェルナンデスがゲット。人が足りない最終ラインで隙間に入り込まれたらそりゃ止められない。これをシメオネが"負ったリスク"だと思っているならいただけない。勘違いが生んだ失点。見たくなかった。ヘイニウドとヴィツェルの人の捕まえ方もよくなかったね。どっちが基準だったのか。その辺はコミュニケーション取れてるのか?

・反撃は
アトレティコは85分に1点返す。右からのCKにフェリックスがオーバーヘッド。ギリギリ枠を外れていたように見えたが相手に当たって気合で入った。ポストに当たって入ってたかも、くらいの微妙なコース。いずれにしても、シュートは打たないと入らないのでね

以降もバランスの悪さは変わらない。早速プレス回避でサウルのパスが引っかかりピンチ。どフリーでシュートを打たれるに至った。これも"許容"なのか。そんなわけない

・そして同点に
89分に同点に。

奇跡的に配置のおかげでサヴィッチが前向きに奪取。

デ・パウルがライン間のグリーズマンを使ってフェリックスをフリーに。迷わず右足をフルスイングしてこの日2点目。ここがハッピーエンドならよかったのだが

・ロスタイムの過ごし方
必死に同点を目指し、いざ同点になった時にアトレティコはどのような試合の畳み方を想定していたのか。ロスタイムは8分あり、チームはさあもう一点、という雰囲気になっていった。ベンチはどういうつもりだったのか?2点差を追いついた時に、選手にどんな言葉をかけていたのか?
実際アトレティコは91分にサウル、95分にバリオス、そして96分にフェリックスのフリーでのヘディングと決定機を用意した。シメオネの負ったリスクは、チームを勝利に導けるもの、だったのかもしれない。決められれば。どれもこれも結果論だ。

さらに結果論を承知で言えば、フェリックスのヘディングが外れた時点で同点でokだった。97分にカディスのCKとなった時点で試合は死んでいたようなものだ。

ここでマイボールになったアトレティコはミスが連発。バリオスの放り込みは軌道が低すぎて強く跳ね返された。このセカンドボールの判断をデ・パウルが誤り、不用意に飛び出してカウンターを招いた。自分の責任と捉えていたならなぜファール出来なかったのか。手も掛けられないほどに限界だったのか。カディスの狙いは大外からのクロス一択なのは目に見えていた。一度ボールにチャレンジしたヘイニウドはバリオスにコーチングしていたか?結局ボールホルダーにもクロスをあげるアレホにも一切の圧力が掛かっていない。必死に戻ったサヴィッチは前向きに身体が流れて踏ん張りが効かなかった。頭を超えたら終わりとわかっていながら触る事ができなかった。相手選手はニアに一枚も入って来なかったが、オブラクのポジショニングは正しかったか?
あのラストプレーの過ごし方は、適切だったのか。適切でないとするなら、どんなクローズをベンチは指示していたのか。


●試合結果
負けた。終盤、同点に追いついた事が状況をより一層複雑にした印象だ。とはいえ19位のカディス相手に同点で良しとしてファイティングポーズを下ろすのはそれはそれで無理があった。8分あったロスタイムは、アトレティコにとってネガティブな方向に働いてしまった。最後はミスも重なり、誰一人正しい判断を出来なかった。なぜか。どういう責任感であの時間を過ごしていたのか疑問が残る。
それはさておき、レギュラー奪取を狙う選手に注目する。

・フェリックス
カラスコの突破がほぼ使えなかった試合で、左大外でクオリティを出したフェリックス。守備をほぼやらずにアタックに拘ったのはビハインドの環境下での彼の責任感故であろうが、他の試合で通用する運用だったとはとても思えない。この試合ですらサウルは過労死寸前で、あまり結果オーライの考え方はしたくない。トランジション局面での強みが活きたのは間延びした展開になったからであり、意識してこの環境を作るというのは今のチームの取り組みとは思いっきり逆走する。安易に"2点取ったからここからはフェリックスがスタメン"と言えない状況が苦しい。

・クーニャ
せっかく得た80分+ロスタイムの出場機会であったが、積極性を欠いた。こういう出番を求めていたと思っていたが、そんな事なかったのか?残念だった


さて、これでCL敗退に続いて19位、今季まだ1勝のカディスに負けた。より一層シメオネへの風当たりは強くなる。そういえば先季も7節でそこまで全敗のアラベスに負けたな

現状の問題点として挙げたいのは、アドリブが効かない事。絶対に勝たなければと硬くなる試合で、1分立たずに失点した事で目に見えて浮き足立った。そこから見えるのは、"90分で2点取る自信がない"という気持ちの表れだ。2点取る余裕があるならあの失点を事故で済ます事が出来た。
ベンチ層、CLへ向けての出場時間制限などの言い訳に最大限の配慮をしたいところだが、それにしても後半の危なかっしい非保持は大きな疑問。そもそも、本当に休ませたい選手を休ませられたのか?デ・パウルとサウルにはポルト戦でも同じ運動量を強いるのか?
0-1の時点、0-2になった時点、2-2になった時点。チームは同じ方向を向いてクローズに向かっていたか?おれの目にはそうは見えない。

誰の責任にしても無意味だし、"そうか○○のせいなのか"と結論付けても納得感のない試合だ。開始1分の先制点なんてただの事故で、ある種防ぎようもなかったしまだ89分残っていたのだ。何に慌てて自信なさげにプレーしていたのか。悲しいくらいに弱いチームだった。カディス相手の1点がそんなに怖かったのか。

どの場面でどんな指示が出ていたのか。シメオネはどの時点で何ポイントを求めていたのか。カディスから点が取れない時間よりもカディスに何度もカウンターで自陣を抉られる時間の方がよっぽどあなたのチームらしくなかった。格好悪い。何に怖れている。解任か?何を今さら。ダサい。なぜ前を向けない?あなたは下位クラブ相手に綺麗なサッカーで圧勝する事が評価されているわけではないだろう。情けない顔をするな。
泥水を啜って拾った1ポイントの価値を知っているはずじゃなかったのか。言い訳の時間はもう終わりにしよう。勝利しかないはずだろう。立ち止まりたいのならば去ればいい。アトレティコ・マドリーは、あなたの選択に未来を賭けたクラブのはずだ。


10/29
ヌエボ・ミランディージャ
カディス 3-2 アトレティコ
【カディス】’1 ボンゴンダ ’81 アレックス・フェルナンデス ’90+9 ソブリーノ
【アトレティコ】’85 ’89 フェリックス


●ピックアップ選手
フェリックス
鬱憤を晴らすような2ゴールで一時同点に。あのヘディングが決まってさえいれば。結局使い道は守備をしないカラスコなのか?となってしまった結果は果たしてポジティブと言えるのだろうか。

コレア
他に解決策のなかった前半は奮闘。グリーズマンの助けを借りずとも自らゴールに迫る姿勢を見せた。厳しい時期だが、なんとかコンディションを保ってほしい

サウル
配置もボールへの関わり方も良かったが、何度かあった得点機に全く可能性を感じなかったのが厳しい。スプリントの質も微妙だった。チームを救う存在になるべき試合だった。次節は累積でお休み。

バリオス
難しい試合でトップチームデビューした19歳。左IHのような位置で、周囲のポジションチェンジが多く難しい舵取りになった。彼個人はもっと大きな展開を使いたそうな様子だったがあくまで近い位置にボールを繋ぐ事だけ求められた試合。本当の特徴が出るのはまたの機会だろう。ボディコンタクトはまだまだ未完成

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